===== 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)情報 =====
2021年11月3日改訂


厚生労働省:
新型コロナワクチンQ&A 2021年10月現在
https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/0027.html

Q:私は妊娠中・授乳中・妊娠を計画中ですが、ワクチンを接種することができますか。
A:妊娠中、授乳中、妊娠を計画中の方も、ワクチンを接種することができます。日本で承認されている新型コロナワクチンが妊娠、胎児、母乳、生殖器に悪影響を及ぼすという報告はありません。妊娠中の時期を問わず接種をおすすめします。
注:前回2021年6月3日版の紹介以降改訂が行われています。改訂日時は記載されていません。
詳細はhttps://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/0027.html へ。

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厚生労働省:
新型コロナワクチンに関するQ&A(一般の方向け) 2021年10月1日版
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00001.html
(一部を紹介しています。)

6、妊婦や小児に関すること
問9 母親が新型コロナウイルスに感染した場合、母乳や授乳を介して乳児が新型コロナウイルスに感染することはありますか。

母乳を介して新型コロナウイルスが乳児に感染するリスクは低いと考えられています。しかし、母乳中に検出されたとする報告もあります。また、授乳時には、接触・飛まつ感染のリスクがあります。従って母乳栄養を希望される際は、母乳を介した感染や接触・飛沫感染のリスクについて、ご家族や医療機関の医師等と十分に相談の上、授乳方法や時期をご判断ください。
授乳に関しては、以下の方法があります。
  1. 直接母乳:授乳前の確実な手洗いと消毒、マスクを着用して直接授乳をする。
  2. 搾乳    :確実な手洗い、消毒後に搾乳をし、感染していない介護者による授乳を行う。(1.より接触・飛まつ感染のリスクが低く、あとで直接母乳に戻りやすい利点がある)
  3. 人工栄養:(母乳の利点と授乳のリスクを説明した上で)人工乳を授乳する。

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CDC:
お母さんが新型コロナウイルスに感染した場合の母乳育児と新生児の育児について 2021年8月18日改訂
CDC: Breastfeeding and Caring for Newborns if You Have COVID-19
https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/if-you-are-sick/pregnancy-breastfeeding.html

新型コロナウイルスに感染したお母さんから生まれた新生児の新型コロナウイルス感染のリスクについてはまだわかっていないことも多いのですが、以下のことははっきりわかっています。
  • 妊娠中の人や妊娠初期の人は、妊娠していない人に比べて新型コロナウイルスによる重篤な病気になりやすい。また、新型コロナウイルスに感染した妊娠中の人は、早産になりやすい。
  • 妊娠中に新型コロナウイルス感染症に罹患した母親から生まれた新生児のほとんどは、生まれた時には新型コロナウイルスに感染していない。
  • 出生直後に新型コロナウイルスの検査陽性となった新生児もいるが、感染したのが、生まれる前か、分娩中か、出生後に感染者と接触したことによるのかはわかっていない。
  • 新型コロナウイルスの検査陽性となった新生児のほとんどは、症状が軽いか、あるいは無症状で、回復している。しかし、新生児で重症の新型コロナウイルス感染症になった例もいくつか報告されている。
お母さんが新型コロナウイルスに感染した場合の入院中の新生児の育児

今のところ、新生児がお母さんから新型コロナウイルスに感染するリスクは低いという証拠が示されています。お母さんが赤ちゃんの世話の前後に感染予防のための手順(マスクをかけ、手を洗う)を踏んでいれば、特にリスクが低くなります。

入院中お母さんと赤ちゃんが一緒にいるかどうかを決めましょう
新生児と同じ部屋にいることのリスクと利点について医療者と話しましょう。新生児とあなたが同じ部屋にいることは、母乳育児を始めやすくなりますし、赤ちゃんとのきずなも作りやすくなるという利点があります。

病院で新生児と同室する時の予防措置
お母さんが新型コロナウイルス感染症によって隔離されていて、新生児と同室する時は、新生児への感染の機会を減らすために以下のような手順を踏みましょう。
  • 新生児を抱いたり世話をしたりする前に、石けんと水で少なくとも20秒手を洗う。石けんと水が使えないときは、60%以上のアルコールを含む手指消毒剤で手を消毒する。
  • 新生児と6フィート(訳注:約1.8m)以内にいるときはいつでもマスクをする。
  • 出来る限り、赤ちゃんと6フィート(訳注:約1.8m)以上離れる。
  • 入院中は、新生児を感染から守るための方策、物理的な障壁(例えば、新生児を保育器に入れるなど)といったものの利用方法を医療者と話す。
隔離期間が終わっても、新生児の世話をする前には手を洗いましょう。しかし、他の予防措置を続ける必要はありません。隔離期間が終われば、新生児や他の濃厚接触者にウイルスを感染させる可能性はほとんどありません。
  • お母さんに症状があった場合、次のような状況であれば、隔離期間は終わります。
    • 症状が始まってから10日たち、かつ
    • 解熱剤を使わなくても、24時間発熱がなく、かつ
    • 新型コロナウイルス感染症の他の症状が改善しているとき。
  • 今までも今も症状がないときの、隔離期間終了の目安は
    • 新型コロナウイルス検査が陽性だった日から10日後。
この期間は、免疫力が著しく低下している場合や、新型コロナウイルス感染症が重症だった場合には適用されません。「新型コロナウイルス感染症に罹患した、または罹患した可能性がある場合、いつ他の人と一緒にいてもよいか」を参照し、隔離期間を終了しても大丈夫な時期について、医療専門家に相談して下さい。


お母さんが新型コロナウイルスに感染している場合の自宅での新生児の育児

お母さんがまだ新型コロナウイルスによる隔離期間中ならば、隔離期間が終わるまで次の予防措置を取りましょう。
  • 家にいて、自宅外の人から自分を隔離する。
  • 家の中の感染していない人から自分を隔離(距離を置く)し、空間を共有する時にはマスクをする。
  • 重症化するリスクが高くなくワクチン接種を完了している人に、新生児の世話をしてもらう。(下記の推奨事項を参照)。
    • 隔離期間が終了する前に、お母さんが新生児の育児をしなければならない場合は、推奨される注意事項に従いましょう。
新生児の育児を手伝う健康な養育者のために推奨される予防措置
  • 養育者は新生児に触れる前に、少なくとも20秒間手を洗う必要があります。石鹸と水が使用できない場合は、60%以上のアルコールを含む手指消毒剤を使用しましょう。
  • 養育者が同じ家に住んでいるか、お母さんと濃厚接触していて、新型コロナウイルスの予防接種が完了していない場合、その人たちも感染しているかもしれません。
    • 新型コロナウイルスに感染した人と濃厚接触した人は、感染のチェックのため検査しなくてはなりません。
      • ワクチン接種が全部終わっている人は、最後に接触して5−7日後に検査する。
      • ワクチン接種が全部は終わってない人は、濃厚接触したとわかった時点で検査する。その結果が陰性であっても、最後に濃厚接触してから5−7日後、もしくは何か症状が出たらすぐに再検査する。
  • お母さんの隔離期間中および隔離期間終了後その人自身の隔離期間が終わるまで、新生児から6フィート(訳注:約1.8m)以内にいるときには、マスクをしましょう。
健康な養育者が見つからず、お母さんが十分元気なら、お母さんが新生児の世話をする
  • 新生児を抱いたり世話をしたりする前に、石けんと水で少なくとも20秒手を洗いましょう。石けんと水が使用できないときは、60%以上のアルコールを含む手指消毒剤を用います。
  • 隔離期間中は、新生児や他の人から6フィート(訳注:約1.8m)以内にいるときには、マスクをしましょう。マスクは他の人にウイルスを広めるのを防ぎます。
  • 新型コロナウイルス陽性の同居人や養育者は隔離して、新生児の世話はできるだけ避けましょう。新生児の世話をする必要がある場合は、前述の勧告にしたがって手を洗い、マスクをしましょう。
隔離期間が終わっても、新生児の世話をする前には手を洗いましょう。しかし、他の予防措置を続ける必要はありません。隔離期間が終われば、新生児や他の接触者にウイルスを感染させる可能性はほとんどありません。
  • お母さんに症状があった場合、次のような状況であれば、隔離期間は終わります。
    • 症状が始まってから10日たち、かつ
    • 解熱剤を使わなくても、24時間発熱がなく、かつ
    • 新型コロナウイルス感染症の他の症状が改善しているとき。
  • 今までも今も症状がないときの、隔離期間終了の目安は
    • 新型コロナウイルス検査が陽性だった日から10日後。
この期間は、免疫力が著しく低下している場合や、新型コロナウイルス感染症が重症だった場合には適用されません。「新型コロナウイルス感染症に罹患した、または罹患した可能性がある場合、いつ他の人と一緒にいてもよいか」を参照し、隔離期間を終了しても大丈夫な時期について、医療専門家に相談して下さい。

新生児に新型コロナウイルス感染症の症状がないか観察しましょう
新生児にこれらの兆候や症状が1つ以上見られる場合は、新型コロナウイルス感染症または他の病気の初期症状である可能性がありますので、医療専門家に連絡しましょう。
  • 発熱(体温が38℃以上の場合は緊急事態と考えられます)
  • 無気力(傾眠傾向、不活発)
  • 鼻汁
  • 嘔吐
  • 下痢
  • 哺乳力低下
  • 呼吸数の増加、浅い呼吸
詳しくは、CDCの「COVID−19のリスクがある新生児の評価と管理における検討事項」のページを参照して下さい。


新型コロナウイルス感染症と母乳育児

今のところ、母乳を通じて赤ちゃんにウイルスが感染する可能性は低いという証拠が示されています
新型コロナウイルスの予防接種は、妊娠中、授乳中、妊娠希望の人、将来妊娠する可能性のある人を含む、12歳以上のすべての人に推奨されています。新型コロナウイルスに感染していなくても、授乳や搾乳の前にはいつも石けんと水で少なくとも20秒手を洗いましょう。 石けんと水が使用できないときは、60%以上のアルコールを含む手指消毒剤を用いましょう。

新型コロナウイルスに感染していて母乳育児を選んだお母さんへ
  • 直接授乳の前には手を洗いましょう。
  • 直接授乳中や赤ちゃんから6フィート(訳注:約1.8m)以内にいるときにはマスクをします。
新型コロナウイルスに感染していて搾乳を選んだお母さんへ
  • 可能であれば専用の搾乳器を使いましょう(他の人と共用しない)。
  • 搾乳中はマスクをつけましょう。
  • 搾乳器やボトルの部品に触れる前や搾乳前には少なくとも20秒石けんと水で手を洗いましょう。
  • 毎回使用後には「搾乳器の適切な洗浄についての勧告」に従います。母乳に接触した搾乳器の部品すべてを洗浄します。
  • 搾乳した母乳を健康な養育者が赤ちゃんに与えることを考慮しましょう。養育者は、ワクチン接種を完了し(2回接種用のワクチンの場合は2回目の接種から2週間以上、1回接種用のワクチンの場合は2週間以上)、新型コロナウイルス感染症の重症化のリスクが高くないことを必要とします。その養育者が同じ家に住んでいる場合や、お母さんの濃厚接触者で、新型コロナウイルスのワクチンをまだ完了していない場合は、すでに感染しているかもしれません。
    • 新型コロナウイルスに感染した人と濃厚接触した人は、感染のチェックのため検査しなくてはなりません。
      • ワクチン接種が全部終わっている人は、最後に接触して5−7日後に検査します。
      • ワクチン接種が全部は終わってない人は、濃厚接触したとわかった時点で検査します。その結果が陰性であっても、最後に濃厚接触してから5−7日後、もしくは何か症状が出たらすぐに再検査します。
  • お母さんの隔離期間中、およびお母さんの隔離終了後でも養育者自身の隔離期間中は、赤ちゃんに授乳する養育者は赤ちゃんの世話をしている間中ずっとマスクをつけましょう。

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米国小児科学会:
COVID-19疑いもしくは確定の母親から出生した乳児の取り扱いに関するFAQ 2021年5月4日改定
AAP: FAQs: Management of Infants Born to Mothers with Suspected or Confirmed COVID-19
https://services.aap.org/en/pages/2019-novel-coronavirus-covid-19-infections/faqs-management-of-infants-born-to-covid-19-mothers/

COVID-19の現在知られている証拠に基づいて、以下の「よくある質問」は、COVID-19が疑われるあるいは確定した母親から生まれた児の管理のための初期の手引きを提供する。
(訳註:前回改定版2021年2月11日から変更された部分を灰色で示しています)

このアップデートで何が新しくなったか?
最初のAAP新生児ガイダンスは、2020年4月2日に出された。世界的なパンデミックの始まった頃で、SARS-CoV-2は非常に伝染力が強く、感染した人が重篤になる率や死亡率が高くなる可能性が明らかになった時期であった。それ以来、公開されたエビデンスおよび「周産期COVID-19感染のサーベイランスと疫学のための国内登録」に提供されたデータにより、周産期疾患のリスクについて、さらなる情報がわかってきた。その結果、ガイダンスの改訂が行われ、最新版は2021年2月11日だった。 2021年6月4日に掲載された今回の改訂では、病院職員向けの感染防止に関するガイダンスの大部分には変更はない。健康な新生児の検査とNICUにおける親の滞在に関するガイダンスは更新された。 「周産期COVID-19登録」の統計を更新し、新生児のSARS-CoV-2に関する最近の公表されたエビデンスも加えた。新生児の管理については、さらなるエビデンスが得られるにつれて、このガイダンスに改訂が加えられることを期待している。
(以下一部を翻訳)

COVID-19の新生児に対するリスクについて現在何がわかっているか?
COVID-19の母親から生まれた新生児が、生後数時間または数日でSARS-CoV-2に陽性反応を示すリスクは、発表された症例報告と、現在までに「周産期COVID-19登録」に報告された9500例以上の両方から報告されている。現在のデータは、分娩前後にSARS-CoV-2の検査陽性だった女性から生まれた児の約2%が、出生後から24〜96時間に陽性反応を示したことを示している。米国および海外の複数のセンターからの症例報告によると、出産時にCOVID-19の検査陽性だった女性に生まれた児の感染率は0-12%であった。
現在のエビデンスは、分娩前後に母親がCOVID-19を発症した場合に新生児への感染リスクが最も高いことを支持している。CDCのサーベイランスの報告書には、COVID-19を発症している女性から生まれた923人の新生児が含まれていた。これらの新生児のうち、2.6%が出生後にSARS-CoV-2に陽性反応を示した。しかし、出産前の14日以内に感染の発症が報告された女性から生まれた328人の乳児では、4.3%がSARS-CoV-2に陽性反応を示した。
注目すべきは、母親の症状の有無による感染リスクの明確な違いはないということで、むしろ、症状が出た場合に母親の感染時期(およびウイルス伝播のしやすさ)が確実にわかるということである。

出産時にCOVID-19の陽性反応を示す妊婦の転帰を紹介した国内および国際的な複数の報告書が発表された。SARS-CoV-2による周産期感染に直接起因する新生児の死亡は、米国では極めてまれである。しかし、エビデンスの蓄積により、母親の感染(主に、しかしすべてではないが、出産時に感染症状があった場合)が早産および周産期感染の増加リスクに関連していることが示唆されている。さらに、臨床医や家族は、重症のCOVID-19感染のために入院を必要とした生後1か月未満の乳児の報告が公表されていることを認識する必要がある。

臍帯結紮を遅らせることと肌と肌との触れ合いのケアの実践を続けるべきか?
臍帯結紮を遅らせることの実践と分娩室での肌と肌との触れ合いのケアは、施設の通常の実践に従って継続する。COVID-19の母親は、児を抱く時にはマスクを着用する。
(訳注:日本では臍帯結紮を遅らせるかどうかについては保留となっている)

母親と状態のよい新生児は同室できるか?
できる。これまでのエビデンスは、新生児を母親の感染性呼吸器分泌物から保護するための予防措置が一貫して講じられている場合、出産での入院中に新生児が感染するリスクが低いということを示唆している。母親と状態のよい新生児は、母子同室(母子をセットでケアすること)を含む通常の臨床実践を用いてケアをする必要がある。COVID-19で重症の母親は、安全な方法で新生児のケアができない場合がある。そのような場合には、母親と新生児を一時的に分離するか、または母親の部屋で感染していない養育者が新生児のケアをすることが適切かもしれない。
現在、COVID-19が確認されているか疑われる母親とその新生児のケアについて、次のことを推奨する。
• 母親と新生児は、施設の通常の実践に従って同室することができる。
• 分娩施設入院中には、母親は可能な限り新生児から適切な距離を保つ必要がある。母親が新生児に触れるケアを行う場合には、マスクを着用して手指衛生を行う必要がある。
• 医療従事者は、COVID-19の母親がいる部屋で健康な新生児をケアする場合は、ガウン、手袋、N95マスク、眼の保護具(もしくは電動ファン付呼吸用保護具)を使用する必要がある。SARS-CoV-2の感染リスクのある、状態のよい新生児をケアする医療従事者は、供給が十分であれば、常にN95マスクを使用できる。必要であればサージカルマスクも使用できる。
• 分娩施設入院中、感染していないパートナーや他の家族がいる場合は、新生児に触れるケアを行う場合には、マスクと手指衛生を行う必要がある。

新生児に直接授乳することはできるか?
できる。AAPは、乳児栄養の最も優れた選択肢として母乳育児を強く支援している。いくつか発表された研究では、母乳からSARS-CoV-2の核酸が検出されている。 しかし現在のところ生存能力のある感染性ウイルスは母乳中から検出されていない。ある研究では、低温殺菌(母乳バンクで運用されているような)がSARS-CoV-2を不活化できることを示している。いくつかの最近の研究では、SARS-CoV-2抗原に対する特異抗体が母乳中に認められた。母親のSARS-CoV-2の感染やワクチンの後に、IgAとIgG抗体の両方が、母乳中に認められている。これらの知見を考慮すると、直接授乳は現状で奨励される。
・母親は授乳前に手指衛生を行い、授乳中はマスクを着用する必要がある。
・感染した母親が新生児に直接授乳しないことを選択した場合、適切な手指衛生後に搾乳し、これを他の感染していない他の養育者が新生児に与えることができる。
・NICUに入院中の児の母親は、自分自身の感染状態によってNICUへの出入りが禁止されている場合でも、いつでも子どものために搾乳できる。施設は、母親がNICUに入ることができるようになるまでは、母親からこの母乳を受け取るように手配する必要がある。
(以下略)

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米国小児科学会:
SARS-Co V-2感染疑いまたは確認された母親や乳児の退院後の母乳育児の手引き 2021年3月29日改訂
AAP: FAQs: Breastfeeding Guidance Post Hospital Discharge for Mothers or Infants with Suspected or Confirmed SARS-Co V-2 Infection
https://services.aap.org/en/pages/2019-novel-coronavirus-covid-19-infections/clinical-guidance/breastfeeding-guidance-post-hospital-discharge/

(訳註:前回改定版2020年12月2日から変更された部分を灰色で示しています)
この手引きは、産科施設を退院した新生児と家族の母乳育児を直接ケアする小児科医を支援するために作成された。生後数週間における母乳育児の困難は、母乳育児期間の減少に関連している(特に乳頭痛/吸着困難、分泌不全、薬に関する懸念)。COVID-19を発症した母親は、出産後に母子分離されたり、母乳育児に影響を与える他の事象を経験したりした可能性がある。 母親と乳児のどちらか、もしくは両方がSARS-COV-2に感染していても、米国小児科学会(AAP)は、乳児栄養の最良の選択肢として母乳育児を強く支援している。
公表された研究によると、急性感染中の母親の母乳中には生存可能か感染性のあるSARS-CoV-2は存在しないことが確認されている。さらに、 ある研究では、低温殺菌法(ドナーミルクの処理などで使用される方法)がSARS-CoV-2を不活化することが示された。 加えて、公表された研究によると、COVID-19罹患後に複数のSARS-CoV-2抗原に対するIgAおよびIgG中和抗体のどちらもが、また、COVID-19感染症に対するワクチン後はより強固な抗体が、母乳中に出現することが報告されている。よって、 医師は母乳育児を提唱し奨励する必要がある。 退院後の手引きと教育は、家族を支援し、母親と児の健康を保証し、母親が母乳育児の目標を達成できるようにするために不可欠である。

よくある質問
COVID-19疑い、または確認された家族の母乳育児を推進し、支援し続けることはなぜ重要なのか?
母乳育児は乳児を感染から守る。母乳は、天然の生理活性因子、抗体、および標的免疫伝達物質を有する。 母乳育児が乳児をSARS-CoV-2の感染や発症から守るのか、どの程度守るのかが知られていないとしても、母乳育児が安全であることや、母乳で育てられた児は他のウイルス感染症を発症する可能性が低いことはわかっている。 母子の他の健康上の利点に加えて、母乳育児中のオキシトシンの放出は、母親の健康を促進し、ストレスや不安を和らげる。母乳育児はまた、持続可能であり、乳児用人工乳、哺乳びん、その他の授乳用品の不足の可能性のある時期に特に重要である。パンデミック中に母乳を通じて与えられる保護を最大化するために、卒乳の延期と母乳育児の期間の延長を検討するように家族にカウンセリングする。

母親や乳児がCOVID-19に感染している場合、どのように母乳育児を支援するか?
あらゆる努力を払って、乳児のすべての養育者に感染予防教育を提供する。これには、書面による教育だけでなく、電話やバーチャルデバイスを用いた直接対話による教育も含まれる。適応があれば通訳サービスを使用する。家庭内で行うのは難しいかもしれないが、COVID-19の陽性反応を示す母親は、可能な限り乳児から適度な距離を維持し、以下の基準を満たすまで乳児の世話を直接する際にマスクと手指衛生をする必要がある。
(a)解熱薬を使用せずに24時間平熱が続く、かつ
(b)症状が最初に現れてから少なくとも10日経過(または、産科スクリーニング検査によってのみ同定された無症候性女性の場合、陽性検査結果から少なくとも10日が経過した)、かつ(c)症状が改善

・母親が直接授乳を希望する場合
児を触る前の石けんと水での適切な手洗いを奨励し、授乳中にマスクを着用するように母親に助言する。児を肌と肌で触れ合って抱くことは、乳児の吸啜とホルモン応答を促し射乳を引き起こす。 授乳しない時は、乳児は健康な養育者が世話をすることもできる。ウイルス曝露の可能性を最小限にするために、児に濃厚接触(例えば6フィート《訳注:約1.8m》以内)する時はいつでもマスクをし、頻繁に(例えば児に触れる前後)手指衛生をするといった追加の予防措置が推奨される。 可能であれば、別の部屋で過ごすか、母親から少なくとも6フィート(訳注:約1.8m)離れた所で過ごす。母親が非感染性であることの時間と症状に基づく基準を満たしたら、これらの予防措置は中止することができる。

・母親が搾乳を希望する場合
搾乳に先立ち母親はマスクを着用し、手だけでなく、搾乳器の部品、ボトル、人工乳首を徹底的に洗浄する必要がある。効率的な電動ダブルポンプを使用することで、最適な乳汁分泌が促進される。母親は乳児の授乳回数と同様に頻繁に搾乳するか、24時間あたり少なくとも6〜8回搾乳する必要がある。母親は、乳汁の流れ、乳房を空にする、乳汁中のカロリー含有量の改善のため、器械での搾乳と同時に自分の手を使って乳房マッサージ/乳房圧迫を行うこともできる。搾母乳は、健康な養育者により児に与えることができる。母親が元気になった時に直接授乳を再導入するために、母親に支援を提供する必要がある。

産後の最初の数週間で母乳の供給が確立されるので、この時期は母乳産生を支援するための重要な時期である。家族は、母親の母乳が自分の子にとって安全で重要であることを保証されるべきである。

・母親が生後数週間母乳を与えないことを選んだ場合
産後の最初の週に、この選択を再考する可能性があるかどうかを家族に尋ねることを検討し、この最も脆弱な時期に感染症やその他の病気から保護する上での母乳育児と搾母乳の重要性について話し合う。

遠隔医療などを含む、パンデミック中の母乳育児の臨床管理のための重要な考慮事項は何か?
・すべての新生児は、メディカルホーム(訳注:米国医療におけるかかりつけ医)での診察を受けるべきで、出産退院後1〜2日以内に対面診察を受ける必要がある。ウイルス曝露を減らすためには、待合室の使用は避ける。新生児を朝一番に診たり、健診や予防接種用と病気の子ども用の別々の入り口を使用したり、到着時にすぐに入室してもらって診察したり、or if available and appropriate,予約時間まで車の中で待ってもらうなどの対策を実施する。Bright Futureの推奨事項(訳注:米国で使われている乳幼児・年長児・青年の健康管理のためのガイドライン)に合わせて、外来診察時には診察、体重チェック、吸い方と飲み方の直接観察を行う。小児科診療所は、必要に応じて母乳育児の専門家(訳注:国際認定ラクテーション・コンサルタントなど)によるオンラインによる授乳のアセスメントの手配を検討する必要がある。

・追加の母乳育児支援が必要な場合は、診療所または家庭におけるビデオを使った遠隔医療または電話での授乳相談の提供を検討する。授乳支援のための遠隔診療では、直接授乳の吸着の評価、乳汁移行の観察、児の体重チェック(親が食品用秤、郵便用秤、または乳児用体重計が利用できる場合)、児の排尿、排便、便色の変化の評価が含まれる。
授乳の評価には、母の乳房緊満や乳頭に傷がないかのアセスメント、および母体の投薬と食事に関するアドバイスも含まれる。遠隔医療診察中、赤ちゃん人形、乳房模型、乳房の図の使用は有益である。保健医療専門家のトリアージや助言に心配があれば、いつでもその乳児は緊急に対面での評価をするために紹介されるべきである。哺乳不良や哺乳行動の変化は重篤な疾患の症状の可能性がある。コーディングと遠隔医療の問題に関する手引きについては、これらの文書を参照: Breastfeeding and Lactation Coding Factsheet and Coding for COVID-19 and Non-Direct Care.

・家族のために地域の他の授乳支援を調査する。家庭訪問の選択肢を検討する。多くの地域に母乳育児ホットラインがあり、現在利用可能な支援の更新されたリソースガイドがあるので、バーチャルと対面の両方で地域と州のlocal breastfeeding coalitions とAAP Chapter Breastfeeding Coordinator を確認すること。

母乳育児中の人はCOVID-19のワクチンをうけるべきか?
mRNAワクチンとアデノウイルスベクターワクチンの両方とも、母乳育児中でも安全である。母親はワクチンを受けることを選んだ場合でも、母乳育児を中止すべきではない。ワクチンによる抗体反応は授乳中であっても変わらない。COVID-19に対する抗体がワクチンを受けた母親の母乳中に確認されており、mRNAワクチンを2回受けた後に最高レベルとなっている。

専門家のリソース
AAP Breastfeeding Resources
Centers for Disease Control and Prevention Breastfeeding Guidance
AAP Infant Feeding in Disasters and Emergencies: Breastfeeding and Other Options (also available in Spanish)
Academy of Breastfeeding Medicine – Resources to address COVID-19 and more.
地域のリソース
小児科医は、自分の地域のリソースを知って、パンデミック中にどのようなサービスを提供しているかを学ぶために接触しておく必要がある。
Information for Families from HealthyChildren.org: Breastfeeding During the COVID-19 Pandemic (here in Spanish)
La Leche League International (LLLI) – 1-877-4-LALECHE (1-877-452-5324) (messages will be returned by an LLL Leader in 24-48 hours).
Perinatal mood disorders – Postpartum Support International COVID-19 resources.
4th Trimester Project – COVID-19 resources for new moms.
暫定手引きの免責:ここで提供されるCOVID-19暫定臨床手引きは、公開時に入手可能な現在のエビデンスと情報に基づいて更新されている。手引きは、パンデミックと新たなエビデンスが更新されるため定期的に見直される。すべての暫定の手引きは、特に明記されていない限り、2021年9月30日に期限切れになると推定されている。
米国小児科学会

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CDC:
妊娠中もしくは授乳中の方に対する新型コロナワクチンに関する情報 2021年5月14日版
Information about COVID-19 Vaccines for People who Are Pregnant or Breastfeeding
https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/vaccines/recommendations/pregnancy.html

母乳育児中の方
新型コロナウワクチンは、米国の緊急使用承認の下で現在使用が承認されていますが、臨床試験には母乳育児中の人は含まれませんでした。ワクチンは授乳中の人に関しては研究されていないので、以下のデータは入手できていません。
  • 授乳中の新型コロナワクチンの安全性
  • 母乳育児中の赤ちゃんに対する予防接種の影響
  • 乳汁の産生や分泌に及ぼす影響
このワクチンの体内での働き方に基づくと、新型コロナワクチンは授乳中の人や母乳育児中の赤ちゃんのリスクにはならないと考えられます。したがって、授乳中の人は新型コロナワクチンを受けることができます。最近の報告によると、新型コロナウイルスの mRNAワクチンを受けた授乳中の人の母乳中に抗体が分泌されていて、これは赤ちゃんを保護するのに役立つ可能性があります。これらの抗体が赤ちゃんにどのような保護を提供するのかについて知るためには、より多くのデータが必要です。

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米国産婦人科学会:
コロナウイルス、妊娠、母乳育児:両親へのメッセージ 2021年4月30日版
ACOG: Coronavirus (COVID-19), Pregnancy, and Breastfeeding: A Message for Patients
https://www.acog.org/patient-resources/faqs/pregnancy/coronavirus-pregnancy-and-breastfeeding

自分が新型コロナウイルス感染症だったら、赤ちゃんは産後どこにいることになるのでしょう?

あなたが新型コロナウイルス感染症だったとしても、出産後にあなたと赤ちゃんが一緒の部屋にいることには、たくさんの利点があります。例えば、一緒の部屋にいると、あなたと赤ちゃんのきずなが作りやすくなりますし、母乳育児を希望するときには、始めやすくなります。
新生児室といった、病院の他の場所で赤ちゃんを預かってもらうという選択もできます。しかし、現時点での報告は、赤ちゃんがお母さんと一緒の部屋にいても、別の部屋にいても新型コロナウイルス感染症の感染リスクは変わらないことを示しています。(「どうしたら赤ちゃんに新型コロナウイルス感染症がうつるのを避けられますか?」を参照ください。)同室の時は、赤ちゃんのコットは、少なくとも6フィート(訳注:1.8m)あなたから離しましょう。施設によっては、透明なプラスチックでできた閉鎖式保育器を用いて、温度を一定に保つようにすることがあります。
母子別室は、あなたの病気がとても重いか、赤ちゃんが重症になりやすいリスクが高い時に勧められるかもしれません。母子別室を選択して母乳をあげたい時は、搾乳するための搾乳器を頼むこともできます。病気でない方に、赤ちゃんに搾母乳をあげてもらってもいいですね。搾乳は、直接授乳を始めるまで、母乳分泌を維持するにも役立ちます。
予定日までに、病院や出産センターの医療チームと選択肢について相談してみましょう。自分と赤ちゃんに良いと思っていることを、一緒に話し合うことができます。以下の点について最善の方法が取れるように、話し合っておきましょう。
  • 赤ちゃんの感染リスクを下げる
  • あなたと赤ちゃんの長期的な健康を支援する
  • 母乳育児を希望する場合は、その開始の助けになる
新型コロナウイルスは母乳を通して感染しますか?

研究者は新型コロナウイルスはが母乳に移行するのか、そして赤ちゃんに感染するのかについて、現在研究中です。ほとんどの情報は、あなたが新型コロナウイルス感染症であっても、赤ちゃんに母乳をあげるのは安全だと示しています。ほとんどの赤ちゃんにとって、母乳は最良の栄養であることを忘れないでください。母乳はまた、耳、肺、消化器などの感染から赤ちゃんを守ります。これらの理由により、新型コロナウイルス感染症であっても、母乳を赤ちゃんにあげるのをやめなくてもいいのです。
母乳育児を計画しているなら、かかりつけの産婦人科医か他の医療専門家と話してみましょう。赤ちゃんと家に帰る前に搾乳や直接授乳を始めることができるように、あなたの希望を知らせましょう。

どうしたら赤ちゃんに新型コロナウイルス感染症がうつるのを避けられますか?
病院や出産センターにいる間や家に帰った後、次のような手順に従うと、赤ちゃんに感染することが避けられます。
  • お母さんはマスクや顔を覆うものを、授乳中など赤ちゃんを抱く時に使いましょう。赤ちゃんにはマスクや顔を覆うものは使ってはいけません。
  • 赤ちゃんに触れる前には手を洗いましょう。(the CDC’s handwashing tips.参照)
  • 搾乳器やボトルに触れる前には手を洗い、使用後は搾乳器やボトルなど全ての部品を洗浄しましょう。( the CDC’s advice for cleaning a breast pump.参照)
  • 可能ならば、健康な人に赤ちゃんの世話を手伝ってもらいましょう。搾乳のあとに、その人に搾母乳を飲ませてもらうこともできるでしょう。マスクを着用してもらい、手の清潔を保ってもらいましょう。新型コロナウイルス感染症が重症化するリスクのない人がいいでしょう。

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CDC:母乳育児中の女性の新型コロナウイルスワクチンに関する検討事項 2021年2月12日改定
COVID-19 vaccination considerations for people who are breastfeeding
https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/vaccines/recommendations/pregnancy.html

授乳中の女性におけるCOVID-19ワクチンの安全性や、母乳育児中の児や乳汁生産/分泌に対するmRNAワクチンの影響に関するデータはありません。mRNAワクチンは母乳育児中の児に対してリスクがあるとは考えられていません。母乳育児をしていて、医療従事者など、COVID-19ワクチンを受けることを推奨されているグループに属する人は、ワクチンを受けることを選択できます。

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米国産婦人科学会:実践的勧告 新型コロナウイルス感染症(COVID-19) 2020年12月14日改訂
ACOG: Practice Advisory Novel Coronavirus 2019 (COVID-19)
https://www.acog.org/clinical/clinical-guidance/practice-advisory/articles/2020/03/novel-coronavirus-2019

(部分訳)
母子の滞在場所
母親と新生児の早期の密接な母子接触には、十分に確立された多くの利点がある。それは、母乳育児の成功、母子のきずなの形成を容易にすること、家族中心のケア(family-centered care)を推進することなどである。このトピックにおいて得られるエビデンスを考慮し、母親がSARS-CoV-2感染が疑わしいか確認された場合も、施設の通常の方針に沿って、母子は理想的には同室すべきである。新しいデータが今も次々と出てきており、長期効果もまだ完全にはわかっていないが、これまでのデータによると、新生児へのSARS-CoV-2感染リスクは、母子分離と母子同室で変わらないと示唆されている。(CDC)
SARS-CoV-2 感染が確認されたか疑わしい母親と新生児が、出産後同室するか別室にするかの決定は、どちらにせよ、出産した母親、その家族、および医療チームの協働意思決定(シェアード・ディシジョン・メイキング)の過程を含めることが重要である。この問題は出産前ケアの時期から始まり分娩が終わるまで続けて提起されるべきである。医療者は医学的な意思決定の過程で母親の自主性を尊重するべきである。母子同室や母子分離をめぐる意思決定にはいかなる強制もされるべきでなく、産科施設は情報を得た上での個人の決定を守るという方針を行うべきである。
COVID-19が疑われる、もしくは確認された母親は、同室の場合、以下のような感染リスクを最小限にする安全方策( safety measures to minimize the risk of transmission)を用いる。
  • 母親は、新生児との全ての接触においてマスクや顔を覆う布を用い、手指衛生hand hygieneを行う。マスクや顔を覆う布は新生児や2歳未満の幼児には用いない。
  • 物理的な障壁(児を温度管理された閉鎖式保育器に収容するなど)といった工学的な管理を利用し、新生児をできるだけ頻繁に6フィート(訳注:約1.8m)以上離す。
  • 可能ならば、医療従事者でない養育者に入院中の新生児のケアを依頼する。重症化リスクのない者で、適切な予防措置(マスク着用、手指衛生の実践など)を講じる。
母子同室ができるようにすることは母乳育児を奨励し支援するための鍵であるが、一時的な母子分離が母親と新生児の健康にとって適切であるような、COVID-19やその他に関連する状況があるかもしれない。一時的な母子分離の決定は、母親の希望に沿って行われるべきである。
一時的な母子分離を考慮している母親とカウンセリングする際の検討事項
  • 「隔離と予防措置の中止 discontinuing isolation and precautions」の基準を満たしていれば、SARS-CoV-2感染が疑わしいか確認された母親も、新生児にウイルスを感染させる潜在的なリスクはない。
    • 最初の症状が出現してから少なくとも10日間(臨床的に重症であるか、重度の免疫不全の場合は20日間)経過していて、かつ
    • 解熱剤を服用せずに、最後の発熱から少なくとも24時間経過しており、かつ
    • 他の症状が軽快している
  • 「成人の隔離と予防措置の期間these criteria 」の基準を満たさない母親が、新生児へのウイルス感染のリスクを減らそうと、一時的な母子分離を選ぶかもしれない。しかしながら、基準を満たすまでの新生児との母子分離を退院後も続けることができないのなら、退院後の母親からのウイルス暴露の可能性を考えると、入院中の一時的な母子分離が、新生児へのSARS-CoV-2感染を最終的に防ぐことができるのかは確かではない。
  • 母親が児のケアをするには重症すぎたり、より高度なケアが必要であったりする場合には、母子分離が必要になるかもしれない。
  • 新生児に重症疾患(早産児、医学的な基礎疾患のある児、より高度なケアを必要とする児など)のリスクがある場合は、母子分離が必要になるかもしれない。
  • 新生児の検査結果がSARS-CoV-2陽性であった場合は、SARS-CoV-2感染が疑わしいか確認された母親から新生児へのウイルス感染のリスクを減らす方策としての母子分離の考慮は不要である。
一時的な母子分離がなされ、母親に母乳育児の希望があれば、母乳分泌の確立と維持のために搾乳の支援と奨励を行う。可能であれば、専用の搾乳器を提供する。

母乳による乳児栄養
母乳は多くの疾病に対する防御因子を提供し、母乳育児の禁忌はほとんどない。(Committee Opinion 756, CDC's Pregnancy and Breastfeeding). COVID-19が母乳を通して感染するかどうか、あるいは、ウイルスの破片が移行した場合感染性があるのかはわかっていない。最近の症例報告でSARS-CoV-2 RNAが母乳中に検出されたが(Lancet Groß 2020)、その報告の主要なデータでは、母乳中のSARS-CoV-2のウイルスの存在は示されていない。つまり、COVID-19感染が疑わしいか確認された母親は、現時点では、母乳を児に与えることが禁忌であるとはみなされない。

しかしながら、COVID-19が疑わしいか確認された母親は、直接授乳中など児と密接に接触する間に飛沫を通じてウイルスを感染させる可能性がある。このため、産婦人科医や母親に関わる他の医師は、母乳で子どもを育てる希望があるCOVID-19が疑わしいか確認された母親に以下のように感染リスクを最低限にする方法をカウンセリングする。
  • 搾乳には手動や電動の搾乳器を用いる。搾乳器や部品に触れる前の適切な手指衛生の重要性と、使用毎に搾乳器の適切な洗浄に関する勧告に従うこと。可能であれば、COVID-19の感染が疑わしくも確認されてもいない健康な人に搾母乳を児に与えてもらうことを考慮する。加えて、施設が専用の搾乳器を貸与できるかどうかを話し合う。
  • 安全に直接授乳する方法。児への直接授乳を希望するCOVID-19が疑わしいか確認された母親は、ウイルスの児への感染を避けるため、直接授乳中、手指衛生、マスクか顔を覆う布などの可能な限りの予防措置を全て行う。
COVID-19パンデミック下においても、産婦人科医や母親に関わる他の医師はそれぞれの女性の、母乳育児を始めるかどうか続けるかどうかに対する、情報を与えられた上での決定を支援し、その女性が、栄養法が母乳だけか、混合か、人工乳かのどれが自分と自分の子どもに最適かを決定する資格のある唯一の人間であることを認識する必要がある。(Committee Opinion 756).
米国産婦人科学会はこのトピックにおける新たな文献の検討を続けている。

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ABM声明:
授乳中のCOVID-19のワクチン接種に関して配慮すべき点について 2020年12月14日
ABM STATEMENT: Considerations for COVID-19 Vaccination in Lactation
https://www.bfmed.org/abm-statement-considerations-for-covid-19-vaccination-in-lactation

2020年12月14日- いくつかの国々では、ファイザー/BioNtech社の mRNA COVID-19ワクチンに緊急使用許可(emergency use authorization: EUA)が最近出されました。Moderna社によって製造される第2のmRNA COVIDワクチンは、今後数週間のうちに審査されます。これら2つのワクチンは類似しているため、この文書の情報は両方のワクチンに適用することができます。

現在、授乳期におけるCOVID-19 mRNAワクチンの使用に関する臨床データはありませんが、米国FDAのEUAは妊娠および授乳中の人にワクチン投与する可能性を残したままにしています。

多くの授乳中の人は、最前線の医療従事者のようにワクチン接種を優先的に受けるカテゴリーに当てはまります。ABMはCOVID-19に対するワクチン接種を受ける人が母乳育児を止めることを推奨しません。COVID-19に罹患、重症化するリスクの個々の状況をふまえて、授乳中の人はワクチン接種のリスクと有益性について医療提供者と話し合うべきです。医療提供者は COVID-19とその合併症を防ぐワクチンの有益性、母乳育児を止めることでの母と子へのリスク、母乳で育てられている児へのワクチンによるリスクと有益性の生物学的妥当性を話し合う際に、共有意思決定(shared decision making)を行うべきです。

これらの対話は難しいものとなります。なぜならばファイザー/BioNtech社ワクチンの臨床試験が授乳中の人を除外したからです。その結果、授乳中の母親でのこのワクチンの安全性に関する臨床データはありません。しかしながら、このワクチンが危害を引き起こすという生物学的妥当性はほとんどなく、母乳中のSARS-CoV-2に対する抗体は母乳を飲んでいる乳児を守るかもしれません。

このワクチンは、SARS-CoV-2のスパイクタンパクのmRNAを含む脂質ナノ粒子でできています。このmRNAの配列は、このタンパクだけをコードしています。これらの粒子は筋肉内に注射され、そこで、ナノ粒子は筋細胞によって取り込まれます。 その後、これらの筋細胞はこのmRNAを転写し、スパイクタンパクを作ります。この細胞によって作られるスパイクタンパクは免疫応答を刺激し、接種を受けた人をCOVID-19による疾患から守ります。

母乳分泌の際、このワクチンの脂質が血流に入って、乳腺組織に達することは起こりそうにありません。もしそうだとしても、無傷のナノ粒子あるいはmRNAが母乳中に移行することはさらに起こりそうにありません。たとえこのmRNAが母乳中に存在するというありえないような場合でも、児がこのmRNAを消化してしまうと思われ、このmRNAは生物学的な影響を与えることはなさそうです。

子どもにとってもリスクの可能性はわずかしかなく、生物学的に妥当と思われる有益性があります。抗体とワクチンによって刺激されたT細胞は、母乳中に受動的に移行するかもしれません。他のウイルスのワクチンでは接種後5~7日以内にIgA抗体が母乳中に見出されます。そのため母乳中に移行した抗体は、児をSARS-CoV-2の感染から守るかもしれません。

生物学的には保証されていますが、確実な情報に関しては、ワクチンが授乳中の人とその子どもに用いられてから、その結果についてのデータを待たなくてはならないでしょう。

CDCのACIP(予防接種の実施に関する諮問委員会)によると、天然痘と黄熱病を除いて、授乳中のワクチン接種は母親とその児とっての母乳育児の安全性に影響を及ぼしません。

ABMは、ワクチンの製造者に定期的な安全に関する報告の中に授乳中の人とその子どものデータを含めることを要請します。さらに、将来の研究にルーチンとして妊娠、授乳中の人を対象として含めることを強く勧告します。我々は妊娠および母乳育児をしている人々を研究から守るのではなく、研究を通して守らなければなりません。
(翻訳・掲載についてABMの了解を得ています。)

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CDC:
COVID-19のリスクのある新生児の評価と管理における検討事項 2020年12月8日改訂
Evaluation and Management Considerations for Neonates At Risk for COVID-1
https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/hcp/caring-for-newborns.html

このガイダンスは米国の保健医療提供者に、COVID-19が疑わしいか確認された母親からの出生など、生後28日以内の新生児が、SARS-CoV-2の感染が確認されたか曝露が明らかな場合に、その診断、評価、感染予防と管理実践、配置に関する情報を提供するものである。

最近の変更の概要
2020年8月3日時点
  • 医療的な意思決定の過程における母親の自主性の重要性を強調し、母と新生児の接触に関するガイダンスを更新した
  • 新生児へのSARS-CoV-2感染の経路に関するエビデンスを更新した
  • 感染予防と制御に関するガイダンスを更新した
2020年5月にこのガイダンスを発表してから、SARS-CoV-2の感染もしくは疑いのある母親から生まれた新生児の転帰について、いくつかの論文が報告された。これらの論文を用いて、このガイダンスの更新を行った。CDCは引き続きSARS-CoV-2に感染した母親から出生した新生児の感染リスクや転帰についてのデータを検証し、新しい情報が入手できればこのガイダンスを更新する。

感染経路
COVID-19の原因ウイルスであるSARS-CoV-2の新生児への感染は、主に新生児がSARS-CoV-2に感染している母親または他の養育者に出生後に接触し、呼吸器飛沫によって起こると考えられている。限定的な文献報告によると、子宮内、分娩時、または周産期の感染の可能性について懸念が提起されているが、稀であると思われる垂直感染の程度および臨床的意義は不明である。現時点では、新生児へのSARS-CoV-2感染を防止する目的で、一律に臍帯結紮を遅らせることや出生直後の母子接触に関する推奨を行うためのデータは十分でない。

臨床症状と重症度(省略)

検査時期と方法などに関する推奨(省略)

感染予防と制御(省略)

母子接触
母親と新生児の間の早期かつ密接な接触は、多くの確立された利点を有する。入院中、健康な正期産新生児の世話のための理想的な場所は母親の部屋で、一般的に「母子同室」と呼ばれる。現在のエビデンスは、新生児が母親からSARS-CoV-2に感染するリスクが低いことを示している。さらに、データは、母子別室でも同室でも、新生児へのSARS-CoV-2感染のリスクに違いがないことを示している。
しかし、母親、養育者、またはSARS-CoV-2に感染した他の人からの感染性呼吸器分泌物との接触を介する新生児へのSARS-CoV-2感染には、潜在的なリスクがある。しかも、その人は症状が出現する直前のウイルス排出が多い時期かもしれない。したがって、すべての養育者は、新生児の世話をする前と世話をする間、感染予防と予防措置(すなわち、マスクを着用し、手指衛生を実践する)を行う必要がある。
SARS-CoV-2感染の疑いがある、または確認された母親は、この潜在的なリスクに不快感を感じる可能性がある。理想的には、それぞれの母親と担当の医療提供者は、母親が新型コロナウイルス感染症と疑われるか、または確認された場合、母子同室か別室にするかを、下記の検討事項を秤にかけた上で、話し合う必要がある。出生前ケア中にこの会話を開始し、分娩中もそれを続けるのが最も容易である。医療提供者は、医療的な意思決定の過程において母親の自主性を尊重すべきである。

母子同室の可否について話し合うための検討事項
  • 母子同室の母親は、児が母乳を欲しがっているサインを容易に学習して応えることができるようになり、母乳育児を確立するのに役立つ。母乳育児は母親と児の両方の罹患率と死亡率を低下させる。直接授乳を選択した母親は、授乳中のウイルス感染のリスクを最小限に抑えるために、マスクを着用し、手指衛生を実践するなど、対策を講じる必要がある。 新型コロナウイルス感染症流行下における母乳育児に関する医療提供者のための追加情報が利用できる。
  • 母と児のきずなは、新生児を母親と一緒にしておくことにより促進される。
  • 母子同室は家族中心のケアを促進し、新生児の世話と感染予防と制御の実践に関して親が学習する機会を与えることにもなる。
  • SARS-CoV-2感染の疑いがある、または確認された母親は、以下の隔離と予防措置を中止する基準を満たしている場合、新生児へのウイルス感染の潜在的なリスクの可能性があると考えるべきではない。
    • 症状が現れてから少なくとも10日が経過し(より重症で重篤な場合、または重度の免疫不全である場合は最大20日)、かつ
    • 解熱薬を使わずに最後の発熱から少なくとも24時間が経過、かつ
    • 他の症状は改善している
  • これらの基準を満たしていない母親は、ウイルス感染のリスクを減らすために新生児と一時的に母子分離することを選択するかもしれない。しかし、退院後に基準を満たすまで新生児との隔離を維持できない場合、退院後に母親から曝露される可能性を考えると、入院中の一時的な母子分離が最終的に新生児へのSARS-CoV-2感染を妨げるかどうかは不明である。
  • 重症で乳児の世話をできない母親や、より高いレベルのケアを必要とする母親には母子分離が必要な場合がある。
  • 重篤な病気のリスクが高い新生児(例えば、早産児、基礎疾患を持つ児、より高いレベルのケアを必要とする児)では、母子分離が必要な場合がある。
  • SARS-CoV-2感染が疑われるか確認された母親から新生児への感染リスクを減らすための母子分離は、新生児がSARS-CoV-2検査陽性の場合には必要ないかもしれない。
感染リスクを最小限に抑えるための対策
新生児が母親の部屋にいる場合、新型コロナウイルス感染症が疑わしいか、確認された母親から新生児への感染のリスクを最小限に抑えるために取ることができる対策
  • 母親はマスクを着用し、新生児とのすべての接触において手指衛生を実践する必要がある。注意点として、乳幼児にプラスチック製のフェイスシールドは推奨されず、マスクも新生児や2歳未満の児は着用すべきではない。
  • 可能な場合は、母親と新生児の間の物理的距離を6フィート(訳註:約1.8m)維持するか、新生児を閉鎖式保育器に入れるなどの技術的な管理を行う。児が保育器に収容されている場合、新生児の転落を防ぐために、母親や病院職員を含む他の養育者に適切な使用(すなわち、窓をロックする)を教育することが重要である。
可能であれば、重症化するリスクが高くない健康な養育者が、適切な感染予防措置(例えば、マスクを着用し、手指衛生を行う)を実践して、新生児のケアを提供する。•

退院基準と家庭内隔離について
「退院のための臨床基準」を満たした新生児は、退院に際してSARS-CoV-2の検査を必要としないが、可能なら、新生児の検査結果は、家族や退院後に担当する医療者に伝える。
SARS-CoV-2感染の疑いのある新生児の自宅隔離をいつ終了するのかを決定するには、両親および他の養育者が公表された勧告に従うべきである。COVID-19が疑われたか確認された新生児、または濃厚接触が継続中の新生児は、退院後フォローアップ外来の綿密な受診が必要となる。

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CDC:
母乳育児中の女性に対するケアーCOVID-19流行中の母乳育児と母乳栄養(搾母乳による栄養)の暫定的なガイダンス 2020年12月3日改訂
CDC:Care for Breastfeeding Women Interim Guidance on Breastfeeding and Breast Milk Feeds in the Context of COVID-19
https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/hcp/care-for-breastfeeding-women.html

最近の改訂の概要
隔離期間の長さに関する推奨事項を更新
2020年12月3日時点
  • COVID-19の疑いがあるか確認された人、またはCOVID-19の人と濃厚接触している人のための母乳育児に関する検討事項を更新
  • 母乳がSARS-CoV-2の感染源となる可能性が低いこと示唆する新しいエビデンスを反映
  • SARS-CoV-2が実験的に母乳に添加され、低温殺菌によって不活性化されるというエビデンスを反映
  • 母乳育児支援をする際の感染予防および感染対策に関する検討事項を追加
目次
  • 母乳育児に関する検討事項
  • シナリオ: COVID-19の疑いがあるか確認された場合
  • シナリオ: COVID-19の人と濃厚接触している場合
  • 母乳育児支援
  • 職場での母乳育児と搾乳
  • 低温殺菌ドナーミルク
この情報は、COVID-19パンデミック中に、母乳育児中の母子だけでなく、搾母乳を飲んでいる乳児や子ども(以下、児)をケアする医療従事者および母乳育児支援専門家を対象としている。これらの検討事項は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)、COVID-19を引き起こすウイルス、および母乳を通じたSARS-CoV-2の感染に関する現在入手可能なエビデンスに基づいている。CDC は、追加情報が利用可能になると、これらの検討事項を更新する。関連情報については、 Considerations for Inpatient Obstetric Healthcare Settings, Evaluation and Management Considerations for Neonates at Risk for COVID-19、Information for Pediatric Healthcare Providers を参照。

現在のエビデンスは、母乳が感染源となる可能性は低いと示している(文献1)。

母乳育児に関する検討事項
母乳は、ほとんどの乳児にとって栄養源として最適であり、多くの病気に対する抵抗力を提供する。母乳育児や搾母乳を与えることが推奨されないような例外的な状況は稀である。https://www.cdc.gov/breastfeeding/breastfeeding-special-circumstances/contraindications-to-breastfeeding.html

COVID-19が疑われても確認されてもいない場合
COVID-19が疑われても確認されてもいない場合やCOVID-19の感染者と濃厚接触していない場合は、直接授乳や搾乳の際に特別な予防措置を講じる必要はない。COVID-19の状況に関わらず、母乳育児中に搾乳器を使用しているすべての人はCDCのhow to properly clean and sanitize their breast pumpの情報を伝えられるべきである。

COVID-19が疑われたか確認された場合
これに続く情報は、隔離と隔離期間の実践に関する母乳育児中の母子への相談に使用できるだけでなく、母子の一方または両方にCOVID-19が疑われたか確認された場合の直接授乳中の予防措置、搾乳、哺乳びんでの授乳に適用できる。特定の生活状況にある人々と相談する場合、COVID-19のパンデミック中の隔離と隔離期間に関する以下の追加情報を考慮することができる。
共同住宅やシェアハウスの場合について:
living in close quarters
living in shared housing

シナリオ:母乳育児中の母親がCOVID-19を疑われたか確認され、その児はCOVID-19でない場合
隔離と隔離期間
  • COVID-19を疑われたか確認された母乳育児中の人は自宅隔離に関する情報に従う必要がある。
  • COVID-19を疑われたか確認された人の母乳育児中の児は、COVID-19の人の濃厚接触者とみなされるべきであり、授乳中の親の推奨される自宅隔離の期間中とその後の自分自身の隔離期間を隔離する必要がある。
直接授乳、搾乳、哺乳びんによる授乳を行う際の注意
  • 母乳育児中の人は、自宅隔離の推奨期間中はこれらの予防措置に従う必要がある
    • 児に触れる前もしくは手でも搾乳器でも搾乳の前に石鹸と水を使って手を洗う。石鹸と水が利用できない場合は、60%以上のアルコールによる手指消毒剤を使用。
    • 児から6フィート(訳注:約1.8m)未満の場合(直接授乳もしくは哺乳びんでの授乳を含む)、手でも搾乳器でも搾乳する場合は、マスクを着用
    • 搾乳器を使用して搾乳する場合は、搾乳器を清潔にし、消毒
  • 母乳育児中の人は、自宅隔離の推奨期間中に直接授乳や哺乳びんでの授乳を好まないかもしれない。(例えば、あまり体調がよくない場合、など)。その場合、COVID-19が重症化するリスクの高くない健康な養育者が、搾母乳を児に与えることができる。その養育者が同じ家に住んでいたり、授乳中の人と接触していたりする場合は、授乳中の親に推奨されている自宅隔離期間とその後の養育者自身の隔離期間中、児に授乳中はマスクを着用する必要がある。
  • 追加情報: breastfeeding neonates in the hospital setting when the lactating parent has suspected or confirmed COVID-19
  • breastfeeding neonates in the hospital setting when the lactating parent has suspected or confirmed COVID-19.
その他の検討事項
  • COVID-19が疑われたか確認された人の中には、児を母乳で育てることを望む人もいるが、COVID-19の病気の間に授乳することができないかもしれないし、または病気の間は授乳しないことを選択するかもしれない。その理由の 1 つは、適切な支援が届かないことである。医療提供者は、必要に応じて患者に専門的な母乳育児支援を紹介する。母乳復帰(リラクテーション)が可能な場合もある。
シナリオ:母乳育児中の児にCOVID-19が疑われたか確認されたが、授乳している人はCOVID-19ではない場合(略)

シナリオ:母乳育児中の人と児の両方にCOVID-19が疑われたか確認された場合
隔離と隔離期間
  • COVID-19が疑われたか確認された母乳育児中の母親と児の両方が自宅隔離の情報に従う。
直接授乳、搾乳、哺乳びんによる授乳を行う際の注意
  • 母子両方にCOVID-19が疑われたか確認された場合、自宅隔離期間中に直接授乳、搾乳、哺乳びんによる授乳を行う際の特別な予防措置(マスクを着用するなど)は推奨されない。
COVID-19感染者の濃厚接触者
次の情報は、隔離と隔離期間の実践に関する母乳育児中の母子への相談に利用できる。また、母子の一方または両方が濃厚接触しているときの直接授乳、搾乳、哺乳びんでの授乳における予防措置にも利用できる。特定の生活状況にある人々と相談する場合、隔離と隔離期間に関する以下の追加情報を考慮する。
COVID-19パンデミック期間の集合住宅やシェアハウスについて
living in close quarters or living in shared housing

シナリオ:母乳育児中の人が濃厚接触者で、児は濃厚接触者でない場合(略)

シナリオ:母乳育児中の児が母乳を飲ませている人以外の養育者や保育者の濃厚接触者で、母親は濃厚接触者でない場合(略)

シナリオ:母乳育児中の人と児の両方が濃厚接触者の場合(略)

母乳育児支援に関する検討事項
専門の母乳育児支援(例えば、ラクテーション・コンサルタント、小児科や産科の医療提供者)へのアクセスの欠如は、母乳育児の障壁である。COVID-19パンデミックの間、母乳育児をしている人や母乳育児を望む人がこの支援に引き続きアクセスできるようにすることが重要だ。母乳育児の問題はしばしば緊急であり、即時の援助を必要とする。さらに、母乳育児相談は、通常、母乳育児支援専門家と授乳中の母子との間に非常に密接な接触を必要とする。したがって、適切な個人保護具(PPE)の使用が不可欠となる。
COVID-19流行中、母乳育児支援専門家は、可能な場合は遠隔医療などの代替手段を使用して母乳育児支援をするべきである。とりわけCOVID-19が疑わしいか確定している母乳育児中の母子を支援する場合はそうする。
場合によっては母子を効果的に支援するために、対面での支援が必要な場合がある。さらに、すべての家族が遠隔医療にアクセスできるわけではない。母乳育児支援は、病院外来や診療所、または授乳している人の自宅など、さまざまな設定で提供される。以下の検討事項は、外来および家庭訪問における個人保護具(PPE)の使用を含む感染予防および制御措置を扱っている。

保健医療の場(病院外来、診療所など)における対面での母乳育児支援
保健医療の場で働く母乳育児支援専門家は、PPEを外来や家庭訪問で使用することを含め、感染予防および制御措置 infection prevention and control measures の勧告に従うべきである。

医療環境での対人母乳育児支援(病院、診療所など)
医療環境で働く母乳育児支援者は、その状況における推奨に従う必要がある。

授乳中の人の自宅への母乳育児支援訪問
自宅訪問を行う母乳育児支援専門家、自宅で支援を受ける人(以下、クライアント)、および同居者は、以下の指示に従い、家庭に入る前にCOVID-19のスクリーニングを受け、以下に述べる必要な感染予防および制御措置を講じる必要がある。
  • 母乳育児支援専門家はCOVID-19と診断されている場合、COVID-19が疑わしく思われる場合、COVID-19感染者と濃厚接触している場合は、外出してはならない。 SARS-CoV-2感染後に職場に復帰する医療従事者の基準が満たされるまで、すべてのクライアントに別の母乳育児支援専門家を紹介する。
  • 家庭訪問を行う前にCOVID-19の症状とCOVID-19と診断された人々への最近の曝露について電話でクライアントを詳細にスクリーニングする。症状のスクリーニングは、COVID-19で無症候性または症状前の人を識別しないことに注意。世帯内の誰かにCOVID-19が疑われたか確認された場合は、推奨される自宅隔離期間と他の世帯員に対する追加の推奨隔離期間は、遠隔医療を介して母乳育児支援を提供することを推奨。
    • クライアントまたは他の世帯員がCOVID-19で、家庭内サポートが必要かつ重要であると判断された場合は、医療専門家のためのCOVID-19に関する感染管理ガイダンスで推奨される個人保護具(PPE)をすべて使用して、疑わしいか確認されたCOVID-19患者のケアをする。
    • クライアントも世帯員もCOVID-19が疑われたり確認されたりしていない場合は、クライアントの自宅内でサージカルマスクを着用する。クライアントごとにサージカルマスクを使い捨てる。サージカルマスクは、感染源コントロール、すなわち、着用者からの気道分泌物の広がりを妨ぎ、他人からの感染性物質の飛沫の曝露から着用者を保護する。さらに、中等度から高度に感染の広がりがみられるコミュニティで母乳育児支援を提供する場合には、目、鼻、口のすべてが気道分泌物の曝露から保護されるようサージカルマスクに加えてゴーグルなどの目の防護具を着用することを検討する。
  • クライアントまたは家族のCOVID-19の状況に関わらず、すべての家庭訪問について:
    • クライアントと2歳以上の他の世帯員にマスクを着用するよう求める。窒息の危険性があるため、2歳未満の赤ちゃんや子どもにはマスクを着用させない。また、呼吸困難、意識不明、動けない、助けなしにマスクを取り外すことができない人は、マスクを着用しない。マスクの着用方法に関する情報はこちらから。https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/prevent-getting-sick/how-to-wear-cloth-face-coverings.html
    • ハンズオンでの支援や綿密な観察を提供しない場合は、クライアントや家庭内の他の人から少なくとも6フィート(訳注:約1.8m)離れる。マスクは常に着用する必要があり、6フィート未満の場合はさらに重要。
    • クライアントや子どもに触れるときは使い捨て手袋を着用。家に出入りする際、マスクの調整や着け外し、使い捨て手袋の着用の前や脱いだ後に、少なくとも20秒間石鹸と水で手を洗う。石鹸と水が容易に入手できない場合は、少なくとも60%のアルコールを含む手指消毒剤を使用。適切な手洗いについて詳しくは、こちら。使用後は手袋を安全に処分する。
    • 乳児の体重計などの表面や機器を清潔にし、消毒する。
職場での母乳育児と搾乳
職場での母乳育児や搾乳を行う前の予防措置について相談する場合、医療提供者は、個々の状況(例えば、COVID-19が疑わしいか確認された人々への曝露のレベル、個人保護具(PPE)の入手可能性や適切な使用)について話し合う必要がある。職場で母乳を与えたり搾乳したりするすべての人は、搾乳器やボトルの部品に触れる前に、上記の指示に従って手を清潔にするように助言を受ける。また、「適切に搾乳器を洗浄し、消毒する方法についてのCDC情報」(https://www.cdc.gov/healthywater/hygiene/healthychildcare/infantfeeding/breastpump.html) に従う必要がある。可能であれば、個人専用の搾乳器を使用する。複数人で搾乳器を使用する場合、「適切に搾乳器を洗浄し、消毒する方法についてのCDC情報」に従って使用前後に消毒する。
医療提供者やfirst responder(クライアントに最初に対応する人)など、SARS-CoV-2への潜在的な曝露のリスクが高い環境で働く授乳中の母親は、職場で母乳育児や搾乳をする時にはマスクを着用する。妊娠中や基礎疾患のある人を含む保健医療機関の従業員のためのCOVID-19の追加情報が利用可能。

雇用主は、母乳育児中の被雇用者、プライバシーが保て、トイレではない搾乳のための場所を提供する必要がある。「すべての産業で授乳・搾乳休憩時間とスペースを提供する方法に関する情報」はこちら。 職場に複数人が使用する授乳・搾乳室がある場合は、物理的距離を取ることが可能になるようハード面とソフト面での工夫を行う。(例えば、少なくとも6フィート間隔で授乳・搾乳ができる場所、授乳・搾乳をする場所間の物理的なシールドの設置、授乳・搾乳スケジュールをずらす、テレワークの奨励など)。SARS-CoV-2が数時間から数日間表面に残る可能性があるという証拠がある。しかし、直接授乳や搾乳の前に乳房を洗浄する(例えば、石鹸と水を使用する)、搾乳した母乳を入れる容器の外部表面(哺乳びん、母乳パックなど)の消毒のなどの予防措置がSARS-CoV-2の潜在的な感染を減少させるかどうかの証拠はない。母乳育児中の母親は、曝露の潜在的な経路を最小限に抑えるために、このような追加の手順を検討することができる。職場の授乳・搾乳室などの設備の消毒に関する追加情報はこちら

低温殺菌ドナーミルク
養育者の母乳が利用できない場合、低温殺菌ドナーミルクは早産児のケアにおいて重要である。現在、母乳がSARS-CoV-2感染源になる可能性が低いことを示す証拠がある。1 さらに、低温殺菌がドナーミルク中のSARS-CoV-2を不活性化することを示唆するデータもあり、したがって、低温殺菌されたドナーミルクがSARS-CoV-2感染の原因となる可能性は非常に低い。ドナーミルクの寄付は、COVID-19流行中に混乱するかもしれない。病院がドナーミルクを手に入れるのが難しい場合は、ドナーミルクから最も恩恵を受ける早産児に対しての利用を優先する。

参考文献
  1. Walker KF, O’Donoghue K, Grace N, Dorling J, Comeau JL, Li W, Thornton Maternal transmission of SARS-COV-2 to the neonate, and possible routes for such transmission: a systematic review and critical analysis. BJOG 2020; https://doi.org/10.1111/1471-0528.16362

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日本小児科学会:
小児のコロナウイルス感染症2019(COVID-19)に関する医学的知見の現状 第2報 2020年11月11日
http://www.jpeds.or.jp/modules/activity/index.php?content_id=342
(一部のみを紹介)

新生児
現時点で経母乳感染の証拠はない
  • 先述の系統的レビューでは母乳の検査も26例について行われたが、SARS-CoV-2 PCRは全て陰性であった。その他の報告をまとめると、24人中4人の母体の母乳10検体からSARS-CoV-2 RNAが検出されているが、いずれの場合も環境や感染した児からの汚染の可能性は否定されておらず、RNAの存在は必ずしも感染性であることを示してはいない。18人のSARS-CoV-2感染妊婦からの母乳検体に対して、経時的にPCRと細胞培養によるウイルス分離を行った研究では、1検体のみPCR陽性となったが、ウイルスは分離されなかった。
  • 単一分娩施設において、周産期にSARS-CoV-2に感染した妊婦から生まれた101人の新生児を全員母子同室で直接母乳哺育を行ったが、発症した児はいなかった。
  • このように、これまで行われていた母子分離や直接母乳哺育の制限を見直すことも検討できるかもしれない [委員会からのコメント]。
    小児科学会 予防接種・感染症対策委員会)

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日本新生児成育医学会 :
新型コロナウイルス感染症に対する出生後早期の新生児への対応について(第4版) 2020年10月19日
http://jsnhd.or.jp/pdf/20201019COVID-19.pdf
(母乳の部分のみを紹介)

4、母乳の取り扱い・直接授乳について
  • 現時点(2020年10月時点)では、新型コロナウイルス陽性の母親の母乳を介した感染の危険は極めて低いと考えられる。感染母体の母乳には特異的な免疫物質が含まれるなどの母乳栄養による感染への有利な効果も期待されることもあり、母乳栄養のその他様々な利点を考えると、母乳栄養を一律に中止すべきというエビデンスはない。
  • 母乳栄養を行う方法としては、(1) 搾母乳と(2) 直接授乳がある。
    (1)搾母乳による授乳を行う場合、母乳そのものを介した感染ではなく、搾乳に際して母親の触れた搾乳器具、容器等を介した感染に対する注意が必要となるため、消毒を行う必要がある。
    (2)直接授乳では、母親から新生児への接触や飛沫を介した感染の危険性があるため、母の手洗い、消毒、マスク着用などの対策が必要となる。
  • コロナウイルス陽性の母親と新生児の扱い(隔離)については、施設ごとの判断に委ねられる部分が大きい。その中で、母乳栄養(直接授乳/搾母乳による授乳)を希望されても、施設の状況や人的な状況な度で対応が難しい場合は、人工栄養の選択となることもやむを得ない。この場合、感染隔離中の搾乳の継続など、感染隔離解除後の母乳栄養の再開を見据えた指導も重要となる。

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UNICEF:
新型コロナウイルスパンデミック下での母乳育児、2020年9月8日改訂
UNICEF: Breastfeeding safely during the COVID-19 pandemic
https://www.unicef.org/coronavirus/breastfeeding-safely-during-covid-19-pandemic

専門家による現在の指針に基づいて子どもに栄養を与える方法

新型コロナウイルスのパンデミック中、あなたがすでにお母さんだったり妊娠中だったりするなら、赤ちゃんに最も安全なものについて質問があるのは当たり前です。
母乳育児を支持する圧倒的な証拠があります。肌と肌との触れ合いと早期から母乳だけで育てることは、赤ちゃんがすくすく育つのに役立ちます。そして、このウイルスのために母乳育児を中止する理由はありません。今のところ、母乳や母乳育児を通しての活動性のある新型コロナウイルス(感染を引き起こす可能性のあるウイルス)の伝播は発見されていません。
出産間近なら、安全に母乳を与え、赤ちゃんと肌と肌との触れ合いをし、赤ちゃんと部屋を共有するための支援を得ましょう。
ここでは、自分が健康と感じていても、新型コロナウイルス感染症の徴候や症状を経験していても、あなたと赤ちゃんに最も安全な経験を提供するために、出産して間もないお母さんと妊娠中の女性からの一般的な質問に対するいくつかの答えをお示しします。

パンデミック中でも、母乳を与えるべきですか?

もちろんです。母乳は赤ちゃんに、健康を高め多くの感染症から赤ちゃんを保護する抗体をどこでも提供します。母乳中の抗体や生理活性因子(訳注:母乳や血液に含まれるホルモンやインターフェロンなど)は、赤ちゃんが新型コロナウイルスにさらされた場合、そのウイルス感染に対抗してくれる可能性があります。
赤ちゃんが生後6か月未満の場合は、母乳だけで育てましょう。あなたの赤ちゃんが生後6カ月を過ぎたら、安全で健康的な補完食を与えながら、授乳を続けましょう。
>>Read our feeding tips for 6 – 12 months old babies

母乳育児を通じて赤ちゃんに新型コロナウイルスはうつりますか?

今までに、母乳や母乳育児を通じた活動性のある新型コロナウイルス(感染を引き起こすウイルス)の伝播は見つかっていませんが、研究者は母乳の検査を続けています。
生まれたての赤ちゃんと肌と肌との触れ合いをしましょう。新生児があなたの近くにいることは、母乳育児の早期開始を可能にし、そのことは新生児の死亡を減らします。タイミングがすべてであり、出産後最初の1時間以内に母乳育児を開始することが勧められています。
>>母乳育児に関するミニ子育てマスタークラスを見る

自分が新型コロナウイルスに感染している、もしくは疑わしい時、母乳を与えるべきですか?

はい、適切な予防措置を行い、母乳育児を続けてください。これには、可能な場合はマスクを着用すること、赤ちゃんに触れる前後に石けんと水で手を洗うか手をアルコール消毒する、定期的に自分が触れた表面をきれいにして消毒することなどです。乳房を洗うのは、乳房の上に咳をした直後だけです。それ以外の場合は、すべての授乳の前に乳房を洗う必要はありません。
>> How to best wash your hands to protect against COVID-19

体調がよくなくて、直接授乳できないときはどうすればいいですか?

直接授乳するには体調が悪すぎると自分で感じる時は、安全に搾母乳を子どもに与える他の方法を見つけてみましょう。母乳を搾って清潔なカップやスプーンで、子どもに与えることを試してみてください。また、お住いの地域で利用可能な場合は、ドナー母乳を検討することができます。母乳育児支援者や保健医療従事者に、利用可能な選択肢について相談してみてください。
搾乳することは、母乳の産生を維持するためにも重要であり、直接授乳できるくらい元気になったと感じたら再開することができます。新型コロナウイルス感染が確認または疑われた後、どのくらい授乳を待たなければならないかの、決まった期間はありません。(訳注:一つ前のQAを参照)
ドナー母乳や搾母乳が使えない場合は、文化的に受け入れられる場合は乳母(貰い乳)にたのむこと、もしくは、適切に準備され、安全で容易に入手できる場合は、乳児用人工乳の使用を検討しましょう。

子どもが病気の場合、私は母乳を与えるべきですか?

子どもが病気になった場合も、母乳を与え続けましょう。あなたの子どもが新型コロナウイルス感染症でも別の病気でも、母乳で栄養を与え続けることは重要です。母乳育児はあなたの赤ちゃんの免疫系を高め、あなたの抗体は母乳を通じて子どもに移行し、感染症と戦うのを助けます。

授乳の時には、どのような予防措置を取ればいいですか?

必ず手洗いのガイドラインに従ってください。赤ちゃんに触れる前後に石けんと水で手を洗う必要があります。アルコール手指消毒剤も使用できます。あなたが触れた表面をきれいにして消毒することも重要です。
いつものように、搾乳器のポンプや搾った母乳を入れる容器、授乳器具は、使用毎に洗いましょう。

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WHO:
Q&A、妊娠・出産と新型コロナウイルス感染症 2020年9月2日
Q&A: Pregnancy, childbirth and COVID-19
https://www.who.int/news-room/q-a-detail/q-a-on-covid-19-pregnancy-childbirth-and-breastfeeding

(全文)
Q. 新型コロナウイルスはお母さんからお腹の中の赤ちゃんや生まれてきた赤ちゃんに感染しますか?
新型コロナウイルスに感染した妊娠中の女性が妊娠中や出産中に胎児や赤ちゃんにウイルスを感染するかどうかはまだ分かっていません。現在までに、感染力のあるウイルスは、子宮中の羊水や母乳の検体からは発見されていません。

Q. 妊娠中や出産の際に、どのようなケアを受けるべきでしょうか?
新型コロナウイルスの感染が確認されたか疑わしいすべての妊娠中の女性とその新生児は、出産前、出産中および出産後にメンタルヘルスも含めた質の高いケアを受ける権利を有します。安全でポジティブな出産体験とは以下のようなものです。
  • 敬意と尊厳をもって扱われる
  • 出産の間に寄り添う人を選択できる
  • 産科スタッフからの明確なコミュニケーション
  • 適切な疼痛緩和法
  • 可能な限り陣痛中に自由に動けること、および分娩体位を選べること
新型コロナウイルスの感染が確認されたか疑わしい場合、保健医療従事者は、自分自身や他の人への感染のリスクを減らすために、手指衛生や手袋、ガウン、医療用マスクなどの防護服の使用など、すべての適切な予防措置を講じる必要があります。

Q. 新型コロナウイルスの疑いがあるか確認された妊娠中の女性は帝王切開で出産する必要がありますか?
いいえ。WHOは帝王切開は医学的に正当な理由がある場合にのみ行われるべきであると助言しています。
分娩様式は、産科適応並びに女性の希望に基づいて個別化する必要があります。

Q. 新型コロナウイルスに感染している場合、生まれたばかりの赤ちゃんに触れて抱くことができますか?
はい。密接な接触と早期に母乳だけを飲ませることは、赤ちゃんの生存を助けます。
次のような支援が必要です。
  • 飛沫感染に十分に注意して安全に授乳できるように
  • 赤ちゃんと肌と肌を触れ合って抱く
  • 赤ちゃんと同室
赤ちゃんに触る前と後に手を洗い、すべての表面を清潔に保つ必要があります。新型コロナウイルス感染症の症状があるお母さんは、赤ちゃんに触れるときはいつでも医療用マスクを着用することをお勧めします。

訳注:WHO一般向けQ&Aは当初 COVID-19, pregnancy, childbirth and breastfeeding(2020年3月18日)でした。今回の改定内容はPregnancy, childbirth and COVID-19でBreastfeedingは別になっています。Q&A: Breastfeeding and COVID-19は5月7日版を参照ください。

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日本産科婦人科学会、日本産婦人科医会、日本産婦人科感染症学会:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対応 第5版 2020年9月2日
http://www.jsog.or.jp/news/pdf/20200903_COVID-19.pdf

(分娩方法、母子の隔離、授乳の部分のみを紹介)
現時点で COVID-19 感染のみで帝王切開の適応にすべきとする根拠はありま せん。しかし、施設の感染対策に割くことができる医療資源、肺炎など妊婦さんの全身状態に鑑みて、分娩管理時間の短縮を目的とした帝王切開を考慮してください。もちろん経腟分娩の方が早い場合もありますので、妊婦さんと医療スタッ フの安心安全を第一にご判断ください。母乳にウイルスが含まれるという報告もありますので、新生児は完全な人工栄養とし、母児双方ともPCR でウイルスが陰性となるまで母体との接触は避けてください。感染が否定できない場合は個室でクベース収容を行ってください。児の管理は新生児科と十分な連携を取ってください。

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オーストラリア・ニュージーランド王立産婦人科学会:
妊娠中の女性と家族の方へ 2020年8月6日改訂
The Royal Australian and New Zealand College of Obstetricians and Gynaecologists:
A message for pregnant women and their families
https://ranzcog.edu.au/statements-guidelines/covid-19-statement/information-for-pregnant-women

(母乳育児部分のみ翻訳)
9. 新型コロナウイルス感染症と診断されても、母乳育児をすることができますか?
赤ちゃんに母乳育児を希望する方は、母乳で育てられるように支援と励ましを受けましょう。よく知られている母乳育児の利点は、新型コロナウイルス感染症の経母乳感染の潜在的なリスクを上回ります。お母さんが新型コロナウイルス感染症である場合も、画一的に赤ちゃんと離されるべきではありませんが、さらなる衛生対策を行いましょう。

赤ちゃんの栄養方法が何であれ(母乳育児、搾母乳、人工栄養)、以下の予防策が推奨されます。
  • 赤ちゃん、搾乳器、哺乳びんに触れる前の手洗い
  • 赤ちゃんに授乳したり抱いたりするときのマスク着用
  • 搾乳器や哺乳びんのガイドラインに従った洗浄・滅菌

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日本小児科学会:
新型コロナウイルス感染症に関するQ&Aについて、2020年8月1日
http://www.jpeds.or.jp/modules/activity/index.php?content_id=326

(母乳育児の部分のみを紹介)
Q4.母乳はやめておいた方がいいですか?
母親が感染している場合は、接触や咳を介して子どもに感染させるリスクがあります。母乳中からウイルス遺伝子が検出されたという報告はありますが、感染性のあるウイルスが母乳に分泌されるかどうかも不明であり、母乳の利点を考えれば母乳をやめておいた方がよいということはありません。母親の病状や希望により以下の3つの方法が考えられます。①授乳前の確実な手洗いと消毒、マスクを着用して直接授乳、②確実な手洗い、消毒後に搾乳をし、感染していない介護者による授乳、③(母乳の利点を説明した上で)人工栄養を選択する場合は人工乳を授乳。

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英国ユニセフ赤ちゃんにやさしい運動:
COVID-19アウトブレイク中における乳児の授乳についての声明 2020年7月10日改訂
Unicef UK Baby Friendly Initiative:Statement on infant Feeding on Neonatal Units during the Coronavirus(COVID-10) Outbreak.
https://www.unicef.org.uk/babyfriendly/infant-feeding-during-the-covid-19-outbreak/

声明

この声明は、コロナウイルス(Covid-19)危機下における乳児栄養に関して最適な実践を支援することを目的としています。英国ユニセフ赤ちゃんにやさしい運動は、医療従事者が赤ちゃん、母親、家族のケアを継続できるように、一連の声明、ガイダンスシート、再教育の資料、リソース、およびよくある質問を作成しました。実践者は、私たちのウェブサイトをチェックして、最新バージョンの資料があること、そしてそれが世界保健機関(WHO)からの最新のアップデートに従っていることを確認することをお勧めします。

母乳育児

母乳育児は赤ちゃんが感染症を発症するリスクを減らすという豊富な証拠があります。ヒトの母乳には、免疫グロブリン、抗ウイルス因子、サイトカイン、白血球など、有害な病原体を破壊し、赤ちゃんの免疫システムを高める働きをする多数の生きた成分が含まれています。現時点では、Covid-19が母乳に移行するという証拠はありません。したがって、母乳と母乳育児が赤ちゃんに与える保護作用と、他の呼吸器感染症のウイルスが経母乳感染を起こすことはほとんどないことを考慮すると、母乳育児の推進、保護、支援を継続するためにできる限りのことをすることが極めて重要です。
母乳育児を容易にするためには、母親と赤ちゃんは可能な限り一緒に過ごし、肌と肌の触れ合いを持ち、赤ちゃんのサインに応じた授乳を行い、必要なときに継続的な支援を利用できるようにする必要があります。
混合栄養の場合は、できる限り多くの母乳を与えられるように支援され、希望するなら母乳のみの栄養に戻るような支援を受けられるように勧めることができます。母親が母乳育児をやめることを検討している場合は、Covid-19アウトブレイク中に母乳育児を継続することの価値について丁寧な話し合いをする価値があります。

人工栄養

親には、搾乳器や哺乳びんなどの洗浄および滅菌に関する現在のガイダンスを引き続き遵守するように勧めます。親には赤ちゃんのサインに応えて哺乳びんで授乳する方法を支援します。それにはpacing feed *や授乳する人の数を制限することも含まれます。(*訳注:赤ちゃんのペースに合わせて哺乳びんで授乳する方法)

Covid-19陽性で赤ちゃんを世話している親のための実用的な情報
親や養育者が感染している場合は、Covid-19の赤ちゃんへの感染を制限するための予防策を講じて下さい。

  • 赤ちゃんに触れる前後に手をよく洗う。
  • 触れたものの表面を定期的に洗って消毒する。
  • 搾乳器、哺乳びん、乳首などの乳児用授乳器具は、使用前後に清拭・洗浄する。
  • 授乳中に乳児に向けて咳やくしゃみをすることを避ける、マスクあるいは他の適切な代替品がある場合はそれを着用したりするなど、呼吸器衛生に努める。
  • 親は「赤ちゃんと一緒に眠ることとSIDS」「赤ちゃんの安全な睡眠**」を参照し、赤ちゃんと一緒に眠ってしまわないよう注意する。
    https://www.unicef.org.uk/babyfriendly/baby-friendly-resources/sleep-and-night-time-resources/co-sleeping-and-sids/
    ** https://www.unicef.org.uk/babyfriendly/new-resources-safer-sleep-week/
  • 母乳育児中のお母さんの体調が悪い場合には、直接授乳を継続するほうが搾乳するより簡単でストレスなくできるかもしれません。あるいは誰か健康な人が搾母乳を赤ちゃんに与える方がいいと思うかもしれません。
  • 体調が悪くて、直接授乳も搾乳もできない場合には、回復してから「母乳再開(母乳復帰)」できるよう支援することもできます。可能ならドナーミルクの使用も検討しましょう。
  • 乳児用調製乳または搾母乳をびんで哺乳している場合は、毎回の使用前に器具を熱いせっけん水で洗ってから滅菌してください。
乳児用調製乳へのアクセス

Covid-19流行中に、自己隔離している家族が乳児用調整乳を入手するのに苦労する可能性があり、一部の家族は財政状況が急速に悪化して、乳児用調整乳や赤ちゃん用の食事が購入できなくなっているという懸念があります。 また、在庫が少ないため、店の乳児用調整乳に親がいつでも入手できるとは限らないという懸念もあります。
現段階で、親はステージ1の 「最初の乳児用調整乳」は1歳未満の乳児に使用するように助言されるべきです。(訳注:英国では乳児用調整乳には大まかな月齢向きに複数の製品があります。以下は指定された月齢の製品が入手できない時の注意点として解説されています。日本では「フォローアップミルク」は生後9ヶ月以降の乳児に対する牛乳代替品で、乳児用調整乳ではありません)
  • 「最初の乳児用調整乳」のいつも使っている銘柄が手に入らなくても、すべての製品は法律に準拠して同じ栄養組成を含んでいるため、どの「最初の乳児用調整乳」も使用可能です。
  • 6か月未満の乳児は、ステージ2の「フォローアップミルク」は使用せず、「最初の乳児用調整乳」のみを使用するよう助言されるべきです。
  • 生後6か月以上の乳児で「フォローアップミルク」を使用しているが入手できない場合は、「最初の乳児用調整乳」を使用してください。
  • 「逆流防止ミルク」「コンフォートミルク」などの他のミルクを使用しているが入手できない場合は、「最初の乳児用調整乳」が使用できます。
  • 乳児用調整乳は、常に製造業者の使用方法に従って使ってください。赤ちゃんの健康を危険にさらす可能性があるため、乳児用調整乳を薄めて長く持たせるようなことしないでください。
Covid-19のアウトブレイクが始まって最初の数週間で、ユニバーサルクレジットを申請する家族の数が劇的に増加したという報告があります。 ユニバーサルクレジットを受け取った家族は、ヘルシースタートクーポンを利用できます(スコットランド、ウエールズなどの分離地域ではそれと同等のものがあります)。
家族がクーポンを請求できるようにサポートすると、乳児用調整乳を入手できるようになります。
継続的な供給が保証されるなら、公共サービスが、緊急事態や本当に必要な場合に、乳児用調整乳を配布することは許容されます。通常の乳児の授乳支援と安全保護ポリシーが適用されます。乳児用調整乳を製造または販売する企業が、乳児用調整乳や特定の医療用目的の乳児用食品として販売されている乳児用ミルクを、寄付したり安い価格で提供することは、法に反します。 緊急時でも乳児用調整乳や特定の医療用目的の乳児用食品を調達した場合、購入者が支払う必要があります。地方自治体では、その緊急食糧供給システムの一環として、母乳育児の保護と乳児用調整乳の配布のための明確な方針手順がなければなりません。 詳細については、コロナウイルス危機下での乳児栄養:地方自治体向けのガイドを参照してください。

側にいて慈しむ関係性ができるような支援
授乳方法にかかわらず、親や主な養育者との感情的な愛着に対する赤ちゃんのニーズを継続して考慮することは重要です。赤ちゃんの側にいて、食べ物、愛、快適さのニーズに対応することは、赤ちゃんの健康、幸せ、発達に不可欠です。さらに、これは出産後の母親の精神的な安定を向上させます。

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WHO:
母乳育児とCOVID-19 科学的要約 2020年6月23日
Breastfeeding and COVID-19  Scientific Brief
https://www.who.int/news-room/commentaries/detail/breastfeeding-and-covid-19
(全訳)

前書き
母乳育児は、乳幼児の生存、栄養、発達、母体の健康の要である。WHO(世界保健機関)は、生後6か月間は母乳だけで育てることを推奨し、その後適切な補完食と共に、2年かそれ以上、母乳育児を続けることを推奨している。肌と肌の触れあい、母子同室、カンガルーマザーケアは新生児の生存率を大幅に改善し、罹患率を低減し、WHOから推奨されている。
しかし、COVID-19の母親が母乳育児することによってSARS-CoV-2ウイルスを乳児や幼児に感染させうるかどうかについての懸念が提起されている。母子の触れあいと母乳育児に関する推奨は、乳児へのCOVID-19感染の潜在的なリスクだけでなく、母乳育児を行わないことによる罹患率と死亡率、乳児用人工乳の不適切な使用、肌と肌との触れ合いによる保護効果などのリスクを十分に考慮しなければならない。この科学的要約では、COVID-19の母親から子どもに母乳育児によって感染するリスクに関する今までのエビデンスと、母乳育児しないことによる子どもの健康へのリスクに関するエビデンスを検討する。

WHOの推奨
WHOは、COVID-19の疑いがあるか確認されている母親に、母乳育児を開始する、または継続するよう奨励することを推奨している。母親には、母乳育児の利点が感染の潜在的なリスクを大幅に上回ることを助言する必要がある
母親と子どもは、COVID-19の疑いがあるか確認されているかどうかにかかわらず、昼夜を問わず同室して一緒に過ごすことができ、カンガルーマザーケアを含む肌と肌の触れあいを実践することができるようにするべきである。

方法
コクランハンドブックの「介入に関する系統的レビュー」の手順に従って、2020年5月15日までに検索した研究に対して現時点での系統的レビューを行った。対象はCOVID-19の疑いのあるまたは確認された母親とその乳児もしくは幼児を含む研究と特定されたものである5。検索は、Cochrane Library、EMBASE(OVID)、PubMed(MEDLINE)、Web of Science Core Collection(Clarivate Analytics)、およびWHO Global Databaseで行われた。合計12,198件の記録が得られ、重複を削除した後、6945件がスクリーニングされ、その中で、母親がCOVID-19で、母子の記録が本文中に含まれていたものは153件であった

結果
計46組の母子で、母乳中のCOVID-19について検査されていた。すべての母親はCOVID-19で、13名の子どもがCOVID-19陽性であった。43名の母親の母乳はCOVID-19ウイルス陰性で、3名の母親の母乳はRT-PCRによりウイルス粒子が陽性であった。生のウイルスではなくウイルスRNA粒子について母乳が陽性と判定された母親3名の子どものうちの1名は、COVID-19陽性と判定されたが、栄養方法については報告されていない。他の2名の子どもはCOVID-19検査は陰性であった。1名は母乳で育てられ、もう1名の新生児はウイルスRNA粒子が検出されなくなった後で搾母乳を与えられた。COVID-19だった1名の子どもに関して、子どもが感染した経路または感染源、すなわち母乳からなのか感染した母親との密接な接触による飛沫感染なのかは不明である。
1つの出版前論文が、COVID-19の母親からの15検体の母乳のうち12でCOVID-19ウイルスに対する分泌型免疫グロブリンA(sIgA)免疫反応が見つかったと報告した。この結果の、子どもへの影響、期間、COVID-19の予防効果に関する意義については言及されていない。

限界
これまでのところ、授乳方法とCOVID-19感染に関するデータを用いた母子の研究は、症例報告、症例シリーズ、または家族のクラスターの報告に基づいている。コホート研究やケースコントロール研究などの他の研究デザインを含めることが望ましいが、見つからなかった。したがって、授乳方法に基づいて感染のリスクを評価し比較することはできない。
母乳にウイルス粒子が存在した母親3名の子どものうちの1名はCOVID-19だったが、感染経路や感染源については、すなわち母乳を通してなのか、母親もしくは他の感染者との密接な接触によるものなのかについては不明であった。RT-PCRは、母乳などの検体中にあるウイルスの遺伝物質を検出して増幅するが、ウイルスの生存能力や感染力に関する情報を提供するものではない。母乳中の細胞培養で複製可能なCOVID-19ウイルスが存在することの報告や、動物実験での感染性の実証が、母乳から感染する可能性があると見なすために必要である。
母乳中のIgAの存在は、母乳育児が子どもを感染や死から守る方法の1つである。COVID-19ウイルスに対するIgA抗体は、以前COVID-19に感染した母親の母乳に検出されたことがあるが、その程度と分泌期間は、授乳中の子どもをCOVID-19から守ると言うにはまだ十分に研究されていない。

考案
母乳中のCOVID-19ウイルスRNAの検出は、生存能力のある感染性ウイルスを見つけることと同じではない。COVID-19の伝播には、複製可能な感染性のあるウイルスが子どもの標的部位に到達でき、子どもの防御システムに打ち勝つ必要がある。将来、母乳からのCOVID-19ウイルスが細胞培養で複製可能であることが示されたとしても、COVID-19の感染が発生するためには、子どもの標的部位に到達し、子どもの防御システムに打ち勝つ必要があるだろう。
感染リスクという意味合いは、授乳中の母親におけるCOVID-19の有病率や、感染した場合の子どもにおけるCOVID-19の範囲と重症度という観点と、分離して母乳代用品を使用することの不利な影響、新生児や幼児を母親から分離することの不利な影響と比較して組み立てられる必要がある
小児ではCOVID-19のリスクが低いようである。小児のCOVID-19が確認された症例は、経験上ほとんどが軽症または無症候性であった7.8。これは、他の人畜共通感染コロナウイルス(SARS-CoVおよびMERS-CoV)の場合にも当てはまり、小児では成人に比べて罹患が少なく、症状が少なく、重症になることも少ないようである
分泌型IgAは、以前にCOVID-19に感染した母親の母乳中に検出されている。COVID-19に対するsIgAの程度と分泌期間はまだ解明されていないが、Lars A Hansonが1961年に母乳中のsIgAを最初に記載10-12して以来、感染からの防御だけでなく、子どもの神経認知と免疫学的発達を向上させる複数の生理活性成分が母乳で確認されている。
肌と肌の触れあいやカンガルーマザーケアは、母乳育児、体温調節、血糖コントロール、母子の愛着を促進し、低出生体重児の死亡率と重症感染のリスクを減らす13、14。新生児期を過ぎても、母親と子どもが抱き合うことの肯定的な効果として、睡眠パターンの改善、子どもの問題行動の発生率の低下、親との質の高い相互作用があげられている15、16
母乳だけで育てられている乳児に比べて、母乳育児されていない乳児の死亡リスクは14倍高くなる17。0〜23か月のすべての子どもが母乳で最適に育てられていれば、毎年82万人以上の5歳未満の子どもたちの命が救われる可能性がある。母親については、母乳育児は乳がんを予防するし、卵巣がんと2型糖尿病を予防できるかもしれない18。一方で、子どもはCOVID-19のリスクが低いのである。

知識のギャップ
ウイルスが母乳を介して伝播するかどうかはまだ明らかではない。授乳方法による感染のリスクは、母乳育児や母子相互作用の育成という利点に対して定量化、比較化、またはモデル化されていない。

結論
現在のところ、母乳育児によるCOVID-19の垂直感染を裏付けるデータは不十分である。乳児ではCOVID-19感染のリスクは低く、通常は軽症または無症候性であるが、母乳育児を行わないことや母子分離がもたらす影響は重大なものになる可能性がある。この点において、乳児や小児のCOVID-19は、母乳育児が防御している他の感染症に比べて、生存と健康に対する脅威は大幅に低いようである。感染症を予防し、健康と発達を促進するための母乳育児と母子相互作用の育成の利点は、保健サービスなど地域におけるサービス自体が混乱したり制限されている場合には特に重要である。COVID-19が疑われる、または確認された母親とその新生児および幼児の間の接触感染を防ぐためには、感染予防および制御手段の遵守が不可欠である。
利用可能なエビデンスに基づいて、乳児および幼児の母乳育児の開始と継続に関するWHOの推奨は、COVID-19が疑われるか確認された母親にも適用される。

文献
  1. World Health Organization, UNICEF. Global Strategy for Infant and Young Child Feeding. Geneva, Switzerland: World Health Organization; 2003.
  2. World Health Organization. Guideline: protecting, promoting and supporting breastfeeding in facilities providing maternity and newborn services. Geneva, Switzerland: World Health Organization; 2017.
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  6. Fox A, Marino J, Amanat F, Krammer F, Hahn-Holbrook J, Zolla-Pazner S, Powell RL. Evidence of a significant secretory-IgA-dominant SARS-CoV-2 immune response in human milk following recovery from COVID-19. medRxiv preprint doi: https://doi.org/10.1101/2020.05.04.20089995.
  7. Wu Z, McGoogan JM. Characteristics of and Important Lessons from the Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) Outbreak in China: Summary of a Report of 72 314 Cases From the Chinese Center for .Disease Control and Prevention. JAMA. Published online February 24, 2020. doi:10.1001/jama.2020.2648
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  9. Zimmermann P, Curtis N. Coronavirus Infections in Children Including COVID-19: An Overview of the Epidemiology, Clinical Features, Diagnosis, Treatment and Prevention Options in Children. Pediatr Infect Dis J. 2020;39(5):355‐368. doi:10.1097/INF.0000000000002660.
  10. Hanson LA. Comparative immunological studies of the immune globulins of human milk and of blood serum. Int Arch Allergy Appl Immunol. 1961;18:241‐267. doi:10.1159/000229177.
  11. Hanson LA, Silfverdal SA, Hahn-Zoric M, et al. Immune function. Adv Exp Med Biol. 2009;639:97‐111. doi:10.1007/978-1-4020-8749-3_8
  12. Bardanzellu F, Peroni DG, Fanos V. Human Breast Milk: Bioactive Components, from Stem Cells to Health Outcomes. Curr Nutr Rep. 2020;9(1):1‐13. doi:10.1007/s13668-020-00303-7.
  13. Moore ER, Bergman N, Anderson GC, Medley N. Early skin‐to‐skin contact for mothers and their healthy newborn infants. Cochrane Database of Systematic Reviews 2016, Issue 11. Art. No.: CD003519. DOI: 10.1002/14651858.CD003519.pub4.
  14. Conde‐Agudelo A, Díaz‐Rossello JL. Kangaroo mother care to reduce morbidity and mortality in low birthweight infants. Cochrane Database of Systematic Reviews 2016, Issue 8. Art. No.: CD002771. DOI: 10.1002/14651858.CD002771.pub4.
  15. Korja R, Latva R, Lehtonen L. The effects of preterm birth on mother-infant interaction and attachment during the infant's first two years. Acta Obstet Gynecol Scand. 2012;91(2):164-73.
  16. Howard K, Martin A, Berlin LJ, Brooks-Gunn J. Early mother-child separation, parenting, and child well-being in Early Head Start families. Attach Hum Dev. 2011;13(1):5-26.
  17. Sankar, M.J., Sinha, B., Chowdhury, R., Bhandari, N., Taneja, S., Martines, J., Bahl, R., Optimal breastfeeding practices and infant and child mortality: a systematic review and meta-analysis, Acta Paediatric 2015;104:3–13.
  18. Victora CG, Bahl R, Barros AJD, França GVA, Horton S, Krasavec A, et al. Breastfeeding in the 21st century: epidemiology, mechanisms, and lifelong effect. Lancet 2016;387:475-90. doi.org/10.1016/S0140-6736(15)01024-7.
WHOは、この暫定ガイダンスに影響を与える可能性のある変更がないか、状況を注意深くモニタリングし続けます。何らかの要因が変化した場合、WHOはさらなる更新を行います。それ以外の場合、この科学的要約は発行日から2年で期限切れになります。

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WHO母乳育児とCOVID-19 医療従事者向けよくある質問2020年5月12日
WHO:FAQ:Breastfeeding and COVID-19 For health care workers
https://www.who.int/docs/default-source/maternal-health/faqs-breastfeeding-and-covid-19.pdf

序文

このFAQは2020年3月13日の「WHO暫定ガイダンス:COVID-19感染症が疑われる重症急性呼吸器感染(SARI)の臨床管理」を補完するものであり、
www.who.int/publications-detail/clinical-management-of-severe-acute-respiratory-infection-when-novel-coronavirus-(ncov)-infection-is-suspected(母乳育児の項の翻訳https://jalc-net.jp/covid19_jalc_contents.html#L8 )この勧告についての疑問に答えるものである。
この暫定ガイドラインとFAQは以下を反映している。
  1. COVID-19の経母乳感染のリスクに関する入手可能なエビデンス
  2. 母乳育児と肌と肌との触れ合いの感染予防効果
  3. 不適切に人工乳を使用する場合の有害な影響
このFAQはWHOの勧告である「Infant and Young Child Feeding and the Interagency Working Group Operational Guidance on Infant and Young Child Feeding in Emergencies」も参考としている。「方針決定のためにツリー」はこれらの勧告が、産科施設の医療従事者や地域で母親や家族への日々の職務の一環としてどのように実施されるかを示すものである。
www.who.int/news-room/q-a-detail/q-a-on-covid-19-and-breastfeeding

1.COVID-19は母乳育児によって感染しますか?

感染力のあるCOVID-19のウイルスは、今のところ、COVID-19の感染が確認された/疑わしい母親の母乳中に1例も見つかっていません。したがって、COVID-19の感染が確認された/疑わしい母親から、COVID-19が直接授乳や搾母乳を与えることにより感染することはありそうにないことを、この事実は示しています。研究者はCOVID-19の感染が確認された/疑わしい母親の母乳の検査を続けています。

2.COVID-19が 流行している地域では、母親は授乳すべきですか?

はい。すべての社会経済的状況において、母乳育児は生存率を改善し、生涯における健康と発達のアドバンテージを新生児と乳児に与えます。母乳育児は母親の健康も改善します。それに対し、母乳や直接授乳を通じてのCOVID-19の感染は確認されていません。母乳育児をやめたり避けたりする理由はないのです。

3.母親がCOVID-19の感染が確認された/疑わしい場合であっても、出産後すぐに、赤ちゃんが母親と肌と肌との触れ合いをしたり、直接授乳をしたりするのを今まで通り行ってもいいですか?

はい。カンガルー・マザー・ケアも含めて肌と肌との触れ合いを出生直後から継続して実施することは、新生児の体温調整や他のいろいろな生理学的指標を改善し、新生児の死亡率を減少させます。新生児を母親の近くに寝かせることも、母乳育児の早期開始を可能にし、新生児の死亡率を減少させます。肌と肌との触れ合いと母乳育児の膨大な利点は、COVID-19に関連する疾患と感染の潜在的なリスクを大きく上回ります。

4.母親にCOVID-19の感染が確認された/疑わしい場合でも、母乳育児を続けるべきですか?

はい。母乳育児が、高所得国も含め新生児、乳児、小児の死亡率を減らし、すべての地理的経済的状況の下で生涯にわたる健康と発達を改善したことを、質の高いエビデンスが示しています。
COVID-19のウイルスが母乳や直接授乳を通じて感染した事例は確認されていません。子どもにCOVID-19の感染が確認された例はわずかで、ほとんどは軽症か無症状でした。
直接授乳中は、母親は、できればマスクをするなどの適切な衛生手段を講じ、COVID-19を含んだ飛沫が乳児に暴露する可能性を減らしましょう。

5.COVID-19の感染が確認された/疑わしい母親が母乳育児をする時の衛生手段の勧告はどのようなものですか?

COVID-19の感染が確認された/疑わしい母親は、
  • 石けんと水で頻繁に手を洗うか手指用アルコール含有消毒剤を使いましょう。特に赤ちゃんに触れる前にはそうしましょう。
  • 授乳中はマスクをしましょう。以下の点が重要です。
    - マスクが湿ったらすぐに取り換えましょう。
    - マスクはすぐに捨てましょう。
    - マスクの再利用はしないようにしましょう。
    - マスクの前面には触らないようにし、後ろから外しましょう。
  • くしゃみや咳はティッシュペーパーの中にして、すぐに捨てましょう。そして手指用アルコール含有消毒剤を使うか石けんと清潔な水でもう一度手を洗いましょう。
  • 定期的に表面をきれいにし、消毒しましょう。

6.COVID-19の感染が確認された/疑わしい母親がマスクを持っていない時でも、直接授乳すべきですか?

はい。母乳育児は疑いなく新生児と乳児の死亡率を減らし、乳児と子どもの生涯にわたる多大な健康と脳の発達にアドバンテージを与えます。COVID-19の症状を呈している母親はマスクをするよう助言されますが、たとえそれができなくても、母乳育児は続けられるべきです。感染症を予防する他の手段、例えば手を洗う、表面をきれいにする、ティッシュペーパーの中に咳やくしゃみをする、なども重要です。
手作りのマスクや布マスクなどは検証されていません。現時点では、これらの使用の可否については勧告することができません。

7.COVID-19の感染が確認された/疑わしい母親は、直接授乳の前や搾乳前に乳房を洗うことが必要ですか?

COVID-19の感染が確認された/疑わしい母親が自分の胸や乳房の上に直接咳をしてしまってすぐに授乳する場合は、授乳前に石けんとぬるま湯で少なくとも20秒やさしく洗いましょう。
直接授乳や搾乳の度毎に乳房を洗う必要はありません。

8.COVID-19の感染が確認された/疑わしい母親が直接授乳できない場合、新生児や乳児のベストな栄養方法は何ですか?

新生児や幼い乳児への直接母乳のベストな代替手段は
  • 搾母乳
    - 搾乳に関しては、まずは手による搾乳を伝え、搾乳器によるものは必要な場合のみとしましょう。手と搾乳器は同じように効果的に搾乳できます。
    - 搾乳に際しどちらを選ぶかは、母親の好み、搾乳器などの手に入れやすさ、衛生環境、コストによります。
    - 搾乳は、母親が回復した後母乳育児ができるよう乳汁産生を維持するのにも重要です。
    - 母親や母親を手伝う人は、搾乳の前やポンプやボトルの部品を触る前に手を洗い、使用毎に適切にポンプを洗浄しましょう。(質問10参照)
    - 搾母乳は、できれば、清潔なカップやスプーン(清潔にしやすいため)を使い、病気の症状や兆候がなく赤ちゃんが安心できる人に与えてもらいましょう。新生児や乳児に搾母乳を与える前には、母親や養育者は手を洗いましょう。
  • 母乳バンクの母乳
    - -母親が搾乳できず、母乳バンクから乳汁が手に入るなら、母親が回復するまで母乳バンクの母乳を赤ちゃんに与えることができます。
  • 搾母乳も母乳バンクの母乳も不可能だったり手に入らなかったりした場合は、以下を考慮しましょう。
    - もらい乳(母親以外の女性にによる直接授乳)(質問11参照)
    - 入手可能で、適切に準備することができ、安全で持続可能な場合、人工乳
9.COVID-19の感染が確認された/疑わしい母親の搾母乳を与えることは安全ですか?

はい。感染力のあるCOVID-19のウイルスは、今のところ、COVID-19の感染が確認された/疑わしい母親の母乳からは1例も検出されていません。COVID-19の感染が確認された/疑わしい母親の母乳を与えることで、ウイルスが感染することはなさそうです。

10.COVID-19の感染が確認された/疑わしい母親が自分の赤ちゃんのために搾乳する場合、搾乳器、母乳の保存容器、授乳の用具の取り扱いに追加することはありますか?

COVID19が考慮されなくても、搾乳器、母乳の保存容器、授乳の用具は、毎回の使用後、適切に清潔にしなければなりません。
  • ポンプや容器は毎回の使用後、液体石けん、例えば食器用洗剤と、ぬるま湯で洗います。湯で10-15秒すすぎます。
  • 食洗器を使う場合は、搾乳器の部品は食洗器の一番上の棚に置きます。使用前には取り扱い説明書を参照のこと。
11.COVID-19の感染が確認された/疑わしい母親が直接授乳も搾乳もできない場合、もらい乳(母親以外の女性にによる直接授乳)が推奨できますか?

もらい乳(母親以外の女性にによる直接授乳)を選択肢にいれるかどうかは、家族や母親の受け入れ、国のガイドライン、文化的許容度、現実に乳母を頼むことができるか、母親と乳母に支援サービスがあるか、によります。
  • HIVが流行している地域では、乳母となる可能性のある人には、できれば、国のガイドラインに従ってHIVのカウンセリングと迅速な検査を行います。検査ができなければ、可能であれば、HIVのリスクアセスメントを行います。HIVのリスクアセスメントやカウンセリングができない場合、乳母を支援します。授乳の際に、HIV感染を避ける方法をカウンセリングします。
  • 乳母による授乳は、月齢の小さい乳児を優先します。
12.COVID-19の感染が確認された/疑わしい母親の病気が重症であるか他の疾患があるために直接授乳が行えない場合、いつ直接授乳を再開できますか?

母親が直接授乳を再開するのは、自身が授乳できるだけ元気になったと感じた時です。COVID-19の感染が確認された/疑わしい状態から、どのくらい待たなければならないかの決まった期間はありません。母乳育児が母親のCOVID-19の臨床経過を変えるというエビデンスはありません。
母親が十分回復するために、全般的な健康と栄養に関する支援を受けられるようにしましょう。また、母乳育児の開始や母乳復帰(リラクテーション)に関しての支援も受けられるようにしましょう。

13.COVID-19の検査結果によって、乳幼児の栄養の勧告は変わりますか?

COVID-19の検査が、乳幼児の栄養における決定にすぐに影響するわけではありません。
しかしながら、COVID-19の確認は、適切で推奨された衛生手段を、感染の可能性のある期間、例えば症状がある間や、症状が始まってから14日間かそれ以上、母親が講じなければいけないことを意味します。

14.COVID-19の感染が確認された/疑わしい授乳中の母親に対し、人工乳の「補足」は勧められますか?

いいえ。COVID-19の感染が確認された/疑わしい授乳中の母親に人工乳の「補足」を伝える必要はありません。「補足」を行うと、母親の乳汁産生量を減らします。授乳中の母親はが、適正な乳汁産生を保証するため、最適な授乳姿勢や吸着に関するカウンセリングや支援を受けられるようにしましょう。赤ちゃんの気持ちに応える授乳や母乳不足感について、また、赤ちゃんの空腹や授乳のサインに応えて授乳回数を増やす方法について、母親が相談できるようにしましょう。

15.授乳したいがCOVID-19を児に感染させるのは怖いという母親に伝えるポイントは何でしょうか?

カウンセリングの一部として、母親や家族のCOVID-19に関する不安について認め、以下のように対応しましょう。
  1. 母乳育児と肌と肌の触れ合いは新生児と乳児の死亡のリスクを有意に減らし、現在のまた生涯にわたる健康と発達に有利であること。母乳育児はまた、母親の乳がんや卵巣がんのリスクを減らすこと。
  2. 新生児や乳児はCOVID-19の感染リスクが低いこと。乳幼児のCOVID-19の感染確認はわずかで、ほとんどは軽症か無症状であること。
  3. 母乳育児の膨大な利点は、COVID-19に関連する疾患と感染の潜在的なリスクを大きく上回ること。
  4. COVID-19の感染が確認された/疑わしい母親からも、感染性のあるCOVID-19は母乳中には1例も検出されておらず、今のところウイルスが母乳を通じて感染する証拠はないこと。
16.COVID-19の感染が確認された/疑わしい母親には、人工乳のほうが児にとって安全ですか?

いいえ。すべての状況で、新生児や乳児に人工乳を与えることはいつもリスクを伴います。
家庭や地域の状況が危ういときには、人工乳を児に与えることに関連するリスクは増大します。
例えば
  赤ちゃんの健康状態が悪くなった時の医療保健サービスへのアクセスの低下

  清潔な水が手に入りにくくなる

  人工乳の供給が困難になる、供給が保証されなくなる、価格が高騰する、供給の持続が困難になる

  母乳育児の膨大な利点は、COVID-19ウイルスに関連する疾患と感染の潜在的なリスクを大きく上回ります。


17.WHOの母乳育児とCOVID-19に関する勧告は、どの期間に適応となりますか?

このCOVID-19の感染が確認された/疑わしい母親の乳児のケアと栄養についての勧告は、母親が感染の可能性のある期間、例えば症状がある間や、症状が始まってから14日間かそれ以上に適応されます。

18.このCOVID-19の感染が確認された/疑わしい母親と乳児への勧告は、なぜ一般に向けのソーシャル・ディスタンスの勧告と異なるのですか?

成人や年長児がソーシャル・ディスタンスを維持するよう勧告されているのは、COVID-19に感染しているが無症状の人との接触を減らし、結果的にウイルス伝播を減らすためです。
この戦略は、COVID-19の総体的な罹患率を減らし、より重症となる成人の数を減らします。
COVID-19の感染が確認された/疑わしい母親の乳幼児へのケアと栄養に関するこの勧告の目的は、新生児や乳児の、現在のまた生涯にわたる健康と発達を改善することです。乳児にCOVID-19が起こる可能性や潜在的リスクと、母乳で育てられない場合や人工乳が不適切に用いられた場合の乳児の重症疾患や死亡のリスク、そしてまた、母乳育児や肌と肌との触れ合いの予防効果を、この勧告は考慮しています。
一般的に、小児はCOVID-19の低リスク群です。小児のCOVID-19の感染確認はわずかで、ほとんどは軽症か無症状でした。母乳育児の膨大な利点は、COVID-19に関連する疾患と感染の潜在的なリスクを大きく上回ります。

19.COVID-19の感染が確認された/疑わしい母親の乳児のために人工乳の無償提供を保健医療施設が受け取っても問題ないでしょうか。

いいえ。人工乳の寄付は求めても受け取ってもいけません。必要であれば、必要量をアセスメントした上で物品を購入します。寄付された人工乳は、品質が様々で、月齢に合っていなかったり、必要量に対して多すぎたり少なすぎたり、外国語のラベルであったり、取り扱いについての必須の事項が守られていなかったり、無差別に配布されたり、必要とするところに届かなかったり、その場限りであったり、リスクを減らすのに余分な時間や資源を要したりすることがよくあります。

20.なぜWHOのCOVID-19の感染が確認された/疑わしい母親への母子接触や母乳育児の勧告は一部の国や専門家組織のものと異なるのですか?

母子接触や母乳育児に関するWHOの勧告は、COVID-19の乳児への感染リスクだけでなく、肌と肌との触れ合いや母乳育児の防御効果とともに、母乳育児をしないことや人工乳を不適切に用いることによる疾病罹患率や死亡率に対する重大なリスクをも十分考慮しています。
他の機関の勧告は肌と肌との触れ合いや母乳育児の重要性を十分考慮せず、COVID-19の感染の予防のみに焦点を当てている可能性があります。
https://www.who.int/news-room/q-a-detail/q-a-on-covid-19-and-breastfeeding

免責
この文書における、質問に対する回答はWHOの出版物やthe Interagency Working Group Operational Guidance on Infant and Young Child Feeding in Emergencies.に基づいています。WHOの暫定ガイダンスは、WHOの世界的な臨床医のネットワークと、SARS、MERS、重症インフルエンザ、COVID-19の患者を治療してきた臨床医により作成されました。
問い合わせは、件名を「COVID-19 clinical question」として、 outbreak@who.int まで。



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WHO :
Q&A、母乳育児と新型コロナウイルス感染症 2020年5月7日
Q&A: Breastfeeding and COVID-19
https://www.who.int/emergencies/diseases/novel-coronavirus-2019/question-and-answers-hub/q-a-detail/q-a-on-covid-19-and-breastfeeding

(全文)
Q:新型コロナウイルスは母乳からうつりますか?
母乳および母乳育児によるアクティブな新型コロナウイルス(感染症を引き起こす可能性のあるウイルス)の感染は、これまで見つかっていません。母乳育児を避けたり止めたりする理由はありません。

Q:新型コロナウイルスが蔓延している地域でも、母乳で育てるべきでしょうか?
はい。どのような社会経済的環境でも、母乳育児は生存率を改善し、新生児と乳児に生涯にわたる健康と発達の利点を提供します。母乳育児は母親の健康も改善します。

Q:母親が新型コロナウイルス感染症と確認されているか疑われていても、なお、出産後すぐに赤ちゃんと肌と肌の触れ合いをして、母乳で育てるべきですか?
はい。カンガルーマザーケアを含む、生まれてすぐからの継続的な肌と肌の触れ合いは、新生児の体温調節を改善し、生存率の向上に関連します。新生児を母親の近くに置くことで、母乳育児の早期開始も可能になり、死亡率が低下します。
肌と肌の触れ合いと母乳育児の多くの利点は、新型コロナウイルス感染と病気の潜在的なリスクを大幅に上回ります。

Q:新型コロナウイルス感染症が確認されているか疑われている女性でも授乳できますか?
はい。新型コロナウイルス感染症が確認または疑われている女性でも、そうしたいと望むのであれば、授乳できます。その際は下記のようにして下さい:
  • 石鹸と水で頻繁に手を洗うか、またはアルコールベースの消毒液で手を擦り合わせてください。特に赤ちゃんに触れる前にはそうしてください。
  • 授乳などで赤ちゃんに触れる時は、医療用マスクを着けてください。
  • くしゃみや咳はティッシュペーパーにします。それはすぐに廃棄して、再度手を洗います。
  • お母さんが触れた場所は、定期的に拭いて消毒します。

医療用マスクは湿気を帯びてきたらすぐに廃棄して新しいものと交換することが重要です。再利用したり、マスクの前面に触れたりしてはいけません。

Q.新型コロナウイルス感染症が確認されているか疑われている母親は、医療用マスクを持っていない場合でも、母乳で育てるべきですか?
はい。母乳育児は新生児と乳児の死亡を確実に減らし、子どもに生涯にわたる多くの健康と脳の発達という利点をもたらします。
新型コロナウイルス感染症の母親には医療用マスクの着用をお勧めしますが、それが不可能な場合でも、母乳育児を継続する必要があります。母親は、手を洗う、触れた場所を拭く、くしゃみや咳はティッシュペーパーにするなど、他の感染防止対策を講じる必要があります。
非医療用マスク(自家製または布製のマスクなど)については、評価がなされていません。現時点では、使うように勧めることも、使わないよう勧めることもできません。

Q:私は新型コロナウイルス感染症と確認されていて、または疑われていて、直接授乳ができないくらい具合が悪いのです。私に何ができるでしょうか。
新型コロナウイルス感染症やほかの合併症のせいで、授乳ができないほど具合が悪い場合は、あなたにとって可能で利用でき受容できる方法で、母乳を赤ちゃんに安全にあげられるように支援されるべきです。これには以下が含まれます:
  • 搾った母乳
  • ドナーの母乳

搾った母乳やドナーの母乳の入手が不可能な場合は、乳母(別の女性が子どもに母乳を与える)を考慮するか、入手可能で、正しく準備され、安全で持続可能であることを確保する手段とともに、乳児用人工乳を使うことを検討します。

Q:私は新型コロナウイルス感染症が確認されて、または疑われていて授乳できませんでした。いつ授乳を再開できますか?
授乳できるくらい元気になればいつでも始めることができます。新型コロナウイルス感染症が確認されたまたは疑われた後、一定時間待つ必要はありません。母乳育児がお母さんの新型コロナウイルス感染症の臨床経過を変えるというエビデンスはありません。医療従事者または母乳育児カウンセラーは、あなたが母乳復帰*できるよう支援するべきです。
(*訳注:しばらく授乳を休んだ後再開すること)

Q:新型コロナウイルス感染症が確認され、または疑われました。乳児用人工乳をあげた方が安全ではないですか?
いいえ。どんな状況でも、新生児や乳児に人工乳を与えることには常にリスクが伴います。家庭および地域の状況が悪化してくると、乳児の調子が悪くなった時に保健サービスへアクセスしにくくなること、清潔な水が手に入りにくくなること、および/または乳児用人工乳が入手しにくかったり、手ごろな価格で継続的に手に入ることが保証されなかったりなど、乳児用人工乳を与えることに関連するリスクが高まります。
母乳育児の多くの利点は、新型コロナウイルスの感染や病気の潜在的なリスクを大幅に上回ります。

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ユニセフプレスリリース:
新型コロナ感染拡大の最中に生まれる赤ちゃん1億1,600万人に支援を 2020年5月7日
UNICEF:Pregnant mothers and babies born during COVID-19 pandemic threatened by strained health systems and disruptions in services
https://www.unicef.org/press-releases/pregnant-mothers-and-babies-born-during-covid-19-pandemic-threatened-strained-health

日本ユニセフ協会サイトに日本語で公開されています。
https://www.unicef.or.jp/news/2020/0112.html

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ラ・レーチェ・リーグ・インターナショナル(LLLI)のメディア・リリース(米国ノースカロライナ州)2020年4月16日改訂
(LLLIのメディアリリース改訂版の日本語訳へのリンクあり)
https://llljapan.org/infections2020.html
LLLI: Breastfeeding, Childbirth, and COVID-19
https://www.llli.org/breastfeeding-childbirth-and-covid-19/

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国際助産師連盟 公式声明:
出産における女性の権利は、コロナウイルスパンデミック中も支持されなければなりません 2020年3月29日
ICM:Women’s Rights in Childbirth Must be Upheld During the Coronavirus Pandemic
https://www.internationalmidwives.org/icm-news/women’s-rights-in-childbirth-must-be-upheld-during-the-coronavirus-pandemic.html

(全訳)
国際助産師連盟(ICM:The International Confederation of Midwives)は、COVID-19パンデミックに際して、女性、赤ちゃん、助産師の人権が侵害されていることを懸念しています。パンデミックに対応して、多くの国で妊娠、出産、産後ケアの管理のための不適切なプロトコルが導入されています。これらのプロトコルは、最新で信頼のおけるエビデンスに基づいておらず、女性と赤ちゃんにとって有害です。
COVID-19パンデミックにおける妊娠中の女性と赤ちゃんのケアに関する、信頼できる情報源からの推奨と最新の研究によるエビデンスに基づいて、ICMは助産師のための助言を作成しました。出産の一連の過程で、女性と赤ちゃんのケアに携わる他の医療専門家や保健サービスのマネージャーのためのものでもあります。妊娠・出産期の女性に対するケアについてのエビデンスが続々と出て来る状況で、コロナウイルスパンデミック中の妊娠と出産のためのプロトコルが、エビデンスに基づいていて、すべての女性と新生児の人権を擁護するものであることが必須です

  1. 妊娠中の女性は、他のすべての成人と同じ予防措置を取る必要があります:定期的かつ徹底的な手洗い、肘への咳やくしゃみ、物理的距離、可能な限り自宅にいること。
  2. すべての女性と新生児は、思いやり、尊厳と敬意をもって扱われる権利を持っています。
  3. すべての女性は、情報を得、同意をし、同意を拒否し、選択と決定を尊重し、支持される権利を有します。これには、分娩と出産の間、一緒に選択する誰かを持つ権利が含まれます。
  4. 最低でも、無症状の出産付き添い人(妊娠している女性のパートナーや母、姉妹、友人など、その女性が出産に立ち会って欲しいと希望する人)が一人、分娩、出産、産後を通してその女性といっしょにいることを許可されるべきです。出産付き添い人による継続的な支援は、自然な経腟分娩を増加させ、分娩時間を短縮し、帝王切開および他の医療介入を減少させます。
  5. 産科適応のない分娩誘発、帝王切開、鉗子分娩などのルチンの医療介入は母親と新生児の合併症の可能性を高め、入院期間を延長させ、病院での人員配置の負担を増大させ、そのすべてがCOVID-19への暴露の可能性を高め、母親と家族にとっての出産に対する肯定的な経験を損ないます。
  6. 現在、疑わしいか確認されたCOVID-19の場合に、女性が経膣分娩できないことを示唆したり、帝王切開がより安全だと示唆したりするエビデンスはありません。女性の出産方法の選択は、本人の臨床的ニーズを考慮しながら、可能な限り希望に沿うようにし、尊重されるべきです。
  7. 保健医療システムが自宅出産を支援できる国では、正常な妊娠経過で、認定助産師の支援を受けられる女性は、適切な救急器具があれば、COVID-19を発症している多くの患者(産科以外の患者であっても)がいる病院よりも、自宅または一次産科ユニット/出産センターで出産する方が安全である可能性があります。
  8. COVID-19は、一部の人の便から検出されており、赤ちゃんへの感染を減らすために、COVID-19の陽性反応を示した妊婦では水中出産は推奨されません。
  9. COVID-19が乳児に経母乳感染するというエビデンスはありません。
  10. 母乳育児中の女性は、呼吸器ウイルスが母乳を介して伝染することを示すエビデンスがないので、母子分離されるべきではありません。母親は、以下の必要な予防措置が適用されている限り、母乳育児を続けることができます。
    1. 症状があっても、母乳育児が可能なほど体調のよい母親は、新生児の近く(授乳中を含む)にいるときはマスクを着用し、接触前後に手を洗い、汚染されたすべての表面を清潔にして消毒する必要があります。
    2. 母親の病気が重く直接授乳ができない場合、清潔なカップやスプーンを用いて新生児に与えられるように、搾乳を行うように勧められ、支援されるべきです。マスクの着用、厳密な手指衛生、搾乳した後の全ての搾乳器具や硬い表面の消毒が不可欠です。
    3. 搾母乳は、すぐに乳児に与えられなければ、後で使用するためにラベルを貼って、保存することができます。疾病予防管理センター(CDC)の推奨によれば、搾母乳をは室温で最大4時間、冷蔵で4日間(ドアポケットに入れない)、冷凍庫保管で6~12ヶ月間保存可能です。
    4. 早産または疾患を持つ新生児は、さらなる医療支援を必要とする場合があります。しかし、すべての新生児は、母親または親とともに居る権利があります。母親は、インフォームドコンセントなしに母子分離されるべきではありません。母親と赤ちゃんは、赤ちゃんが小さい、早産、またはさらなるケアを必要とする病状で生まれた場合でも、常に一緒にいる権利を有します。
  11. 産科サービスは、重要で中核的な保健サービスとして引き続き優先されるべきです。助産師によるケアのひな型の継続は、女性と出産付き添い人に接触する支援者の人数を減らし、院内にCOVID-19が広がる可能性を減らします。助産師によるケアの継続を奨励し、提供する必要があります。
  12. 助産師は、地域社会に拠点を置く場合でも病院に拠点を置く場合でも、妊娠・出産期の女性とその赤ちゃんに重要なサービスを提供する必要不可欠な医療従事者です。コロナウイルスパンデミック中に公衆衛生または一般診療の分野で働くために産科サービスから離れて助産師が働くことは、母親と新生児の合併症を増加させる可能性が高くなるでしょう。
  13. 助産師は、すべての個人防護具(PPE)の十分な入手、衛生的で安全で敬意のある労働環境に対する権利を有します。
  14. 家族計画、緊急避妊、中絶などの性生殖医療は、中核的な保健サービスとして引き続き利用可能であるべきです。
資料
この文書は国際助産師連盟(ICM)によるもので、日本ラクテーション・コンサルタント協会が許可を得て翻訳したものであり(2020年7月17日)、ICMは翻訳の正確さには責任を負いません。

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ILCAの声明:COVID-19 パンデミック中の母乳育児支援 2020年3月 18日
ILCA Statement on Breastfeeding and Lactation Support During the COVID-19 Pandemic
https://lactationmatters.org/2020/03/18/ilca-statement-on-breastfeeding-and-lactation-support-during-the-covid-19-pandemic/
日本語訳は下記
https://ilca.org/wp-content/uploads/2020/04/ILCA-Statement-for-COVID-19_Japanese.pdf
注:ILCA- International Lactation Consultant Association

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WHO暫定ガイダンス:
COVID-19感染症が疑われる重症急性呼吸器感染(SARI)の臨床管理;  2020年3月13日
Translated from “Clinical management of severe acute respiratory infection (SARI) when COVID-19 disease is suspected: interim guidance, 13 March 2020 “. Geneve:
World Health Organization; 2020. Licence: CC BY-NC-SA 3.0 IGO

https://apps.who.int/iris/bitstream/handle/10665/331446/WHO-2019-nCoV-clinical-2020.4-eng.pdf

訳注:この暫定ガイダンスの翻訳は日本ラクテーション・コンサルタント協会(JALC)により行われたもので、WHOの承認を得た正式な訳ではありません。また、この暫定ガイダンスは15の章から成り、様々な介入について「やるべきこと」「やるべきではないこと」「考慮すべきこと」などのシンボルマークがつけられています。JALCは13章のみを翻訳しましたが、13章に述べられた介入は、いずれも「やるべきこと」のマークがついています。
Do: やるべきこと:
この介入は有益である(強く推奨)。もしくは、この介入はベスト・プラクティス・ステートメント(介入が適切であることが予想されるが、利益と害のバランスが不明で、エビデンスの評価が困難なもの)である。
Don’t: やるべきでないこと
この介入は有害であることがわかっている。
Consider: 考慮すべきこと。
この介入は、ある患者には有益かもしれない。もしくは、この介入を考慮する場合には注意が必要かもしれない。

13. COVID-19に感染している母親と乳児のケア:IPC(感染予防と制御)と母乳育児

COVID-19感染が確定した乳児の報告は相対的に少ないが、報告例は軽症として経験されている。垂直感染は報告されていない。COVID-19陽性の6人の母親の羊水、および、帝王切開で出生した新生児の臍帯血と咽頭ぬぐい液は、RT-PCR検査ですべてCOVID-19ウイルス陰性であった。母親の初乳を検査したが、それもすべてCOVID-19ウイルス陰性であった。(68.69)
68. Zhu H, Wang L, Fang C, Peng S, Zhang L, Chang G et al. Clinical analysis of 10 neonates born to mothers with 2019-nCoV pneumonia. Transl Pediatr. 2020;9(1):51-60. Epub 2020/03/11. doi: 10.21037/tp.2020.02.06. PubMed PMID: 32154135; PMCID: PMC7036645.
69. Chen H, Guo J, Wang C, Luo F, Yu X, Zhang W et al. Clinical characteristics and intrauterine vertical transmission potential of COVID-19 infection in nine pregnant women: a retrospective review of medical records. Lancet. 2020;395(10226):809-15. Epub 2020/03/11. doi: 10.1016/S0140-6736(20)30360-3. PubMed PMID: 32151335.

母乳育児は、新生児期以降の乳児期、小児期の疾病罹患率や死亡率を減少させる。感染症についてはとりわけ防御効果が強い。これは、抗体やその他の抗感染因子が直接母乳を介して移行することと、免疫能や免疫記憶が長期にわたって移行することによる。WHOの「新生児の必須ケアと母乳育児」参照 ( https://apps.who.int/iris/bitstream/handle/10665/107481/e79227.pdf )。
よって、乳児栄養標準ガイドラインにIPC(感染予防と制御)のための適切な予防措置をつけ加えるべきである。

<やるべきこと>
COVID-19感染が疑われるか可能性が高い、もしくは確定した母親から生まれた新生児は、IPCに必要な予防措置を施行した上で乳児栄養標準ガイドラインに沿って栄養する。

<注>母乳育児は生後1時間以内に開始する。生後6か月間は母乳だけで育て、安全で十分な補完食を生後6か月から適切に食べさせながら、2歳かそれ以降まで母乳育児を続ける。量依存性効果があるため、また、より早い時期に母乳育児を始めることがより大きな効果を生むため、母乳育児を生後1時間以内に開始できなかった母親は、母親と児が可能になった時点でできるだけ早く母乳育児を支援されるべきである。これは、母親が帝王切開で出産したり、麻酔を受けたり、医学的に安定しなかったりして、出生後1時間以内に母乳育児が開始できなかった場合にあてはまる。この推奨は2002年の第54回世界保健総会WHA54.2決議としてすべての乳児に最適な栄養を推進するために承認された「乳幼児の栄養に関する世界的な運動戦略」と一致している。
(英語版: https://apps.who.int/iris/bitstream/handle/10665/42590/9241562218.pdf
日本語版: https://apps.who.int/iris/bitstream/handle/10665/42590/9241562218-jpn.pdf?sequence=49

<やるべきこと>
COVID-19感染が確定していたり疑わしかったりするすべてのケースと同様に、症状のある母親は、母乳育児中であっても、肌と肌とのふれあいを行なっていても、カンガルー・マザー・ケアを行っていても、授乳中を含め、以下のことを行う。
呼吸器衛生(例えば、母親に呼吸器症状があれば、児の側にいるときはマスクをする)を行う、児に触れる前後に手指衛生を行う、症状のある母親が触れた表面を定期的にきれいにし消毒する、などである。

<やるべきこと>
COVID-19感染が確定されたり疑わしかったりする場合であろうとなかろうと、母乳育児のカウンセリング、基礎的な心理社会的支援、実践的な栄養支援をすべての妊娠中の女性と乳幼児のいる母親に行う。

<注1>すべての母親が、母乳育児を開始し、確立し、よくある母乳育児上の困難に対応することができるようになるための、実践的な支援を受けられるようにする。それにIPC手技を含める。この支援は、母乳育児について適切にトレーニングされた保健医療従事者や地域に根差したレイ・カウンセラー(研修を受けた一般人)やピア・カウンセラー(研修を受けた同じ立場の人)が提供する。「ガイドライン:母乳育児の実践を改善するための女性へのカウンセリング」 ( https://apps.who.int/iris/bitstream/handle/10665/280133/9789241550468-eng.pdf )と「WHOガイドライン:母親と新生児へのサービスを提供している施設における母乳育児の推進、保護、支援」( https://apps.who.int/iris/bitstream/handle/10665/259386/9789241550086-eng.pdf )を参照のこと。

<やるべきこと>
COVID-19に感染している母親が重篤であったり他の合併症があったりして、児の世話ができなかったり直接授乳ができなかったりする場合は、搾乳を推奨して支援し、適切なIPC手技を適応しつつ児に安全に搾母乳を与える。

<注>母親があまりに重篤で直接授乳や搾乳ができない場合、母乳復帰、乳母、母乳バンク、適切な母乳代用品の実行可能性を、文化的背景、母親の受容、サービスの利用のしやすさなどを考慮し、検討する。母親と新生児へのサービスを提供している施設のどの部署においてもどのスタッフによっても、母乳代用品や哺乳びんと人工乳首、おしゃぶりのプロモーションはなされるべきではない。保健医療施設とスタッフは、哺乳びんと人工乳首ほか「母乳代用品のマーケティングに関する国際規準」(訳注:日本語版 https://www.jalc-net.jp/dl/International_code.pdf )とその後の世界保健総会の関連決議の適用範囲となっている製品を母乳育児中の児に与えてはならない。この推奨は「WHOガイダンス:母乳代用品の使用が許容できる医学的理由」 ( https://apps.who.int/iris/bitstream/handle/10665/69938/WHO_FCH_CAH_09.01_eng.pdf;jsessionid
=709AE28402D49263C8DF6D50048A0E58?sequence=1
) と矛盾しない。

<やるべきこと>
COVID-19感染が疑わしかったり、可能性が高かったり確認されたりした場合であっても、母親と児が一緒にいられるようにするべきであり、特に出産直後の母乳育児を確立する間、肌と肌との触れ合いを実施し、カンガルー・マザー・ケアを行い、夜も昼も母児同室を行う。

<注>母親と児にサービスを提供する施設にいる間、母乳育児の妨げを最小限にするためには、母親が希望するだけ十分に、頻繁に、長く授乳できるようにするという施設での実践を必要とする。
「WHOガイドライン:母親と新生児にサービスを提供する施設の母乳育児の保護、推進、支援」 ( https://apps.who.int/iris/bitstream/handle/10665/259386/9789241550086-eng.pdf ) を参照のこと。

<やるべきこと>
親や養育者は、児と分離される必要があるかもしれず、児も主養育者と分離される必要があるかもしれないが、適切に訓練された医療従事者や非医療従事者からの精神衛生や心理社会的支援につながるべきである。

<注>産前産後の女性の一般的な精神疾患の有病率の高さと、対象としたプログラムへの受容性を考慮すると、その人たちへの介入はもっと広範囲に実施される必要がある。メンタルヘルスの問題を治療するサービスに加えて、予防するサービスも利用できるようにする。この推奨は「2020緊急事態における精神衛生と心理社会的支援IASC参考団体―COVID-19アウトブレイクの精神衛生と社会心理的側面に対応する短報 version1.1」( https://interagencystandingcommittee.org/system/files/2020-03/
MHPSS%20COVID19%20Briefing%20Note%202%20March%202020-English.pdf
)と「WHOガイドライン:小児期初期の発達の改良」 ( https://www.who.int/publications-detail/improving-early-childhood-development-who-guideline ) と矛盾しない。

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新型コロナウイルス(COVID-19)に対するABMの声明 2020年3月10日
ABM STATEMENT ON CORONAVIRUS 2019 (COVID-19)
ABM: The Academy of Breastfeeding Medicine
https://www.bfmed.org/abm-statement-coronavirus

ご注意ください。
COVID-19感染についての情報は日々更新されています。ABMの勧告は現時点(この声明の発表日)における報告の情報に基づいています。最新のガイダンスはCDCやWHOのような情報源をご参照ください。
https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/specific-groups/pregnancy-guidance-breastfeeding.html
https://www.who.int/emergencies/diseases/novel-coronavirus-2019

COVID-19の経母乳感染
COVID-19がどのようにひろがるかについては、不明なことが多い。
https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/about/transmission.html
人から人への広がりは、インフルエンザや他の呼吸器の病原体が広がるように、主に感染者が咳やくしゃみをした時の呼吸器飛沫によって生じると考えられている。COVID-19 や、こちらもコロナウイルスであるSARSコロナウイルスに感染した女性の限られた報告では、このウイルスは母乳中には検出されていない。しかしながら、COVID-19が経母乳感染するかどうかは不明である。

母乳は多くの疾患に対する防御作用を持つ。母乳育児や搾母乳を与えることが例外的に推奨されない場合は稀である。
https://www.cdc.gov/breastfeeding/breastfeeding-special-circumstances/contraindications-to-breastfeeding.html
CDCは、類似のコロナウイルスであるSARSやMARSについては、感染中の母乳育児について特化したガイダンスを発表していない。COVID-19と同様な状況である、母親がインフルエンザに感染している場合について、CDCは、児へのウイルス感染予防策を取りながらの直接授乳や搾母乳を与えることを勧告している。
https://www.cdc.gov/breastfeeding/breastfeeding-special-circumstances/maternal-or-infant-illnesses/influenza.html
呼吸器ウイルスの経母乳感染の率が低いことを考慮し、WHOはCOVID-19 に感染した母親も母乳育児ができると宣言している。
https://www.who.int/publications-detail/
home-care-for-patients-with-suspected-novel-coronavirus-(ncov)-infection-presenting-
with-mild-symptoms-and-management-of-contacts

COVID-19 と母乳育児に関する現在のCDCのガイダンスはこちらから。
https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/specific-groups/pregnancy-guidance-breastfeeding.html

自宅で
COVID-19の感染が確認された、もしくは、COVID-19の検査中で症状のある母親は、児にウイルスを感染させないために、すべての可能な予防措置を講じるようにする。それは、児に触る前には手を洗う、可能ならば授乳中はマスクを着用するなどである。
https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/hcp/guidance-prevent-spread.html
手動や電動の搾乳機で搾乳する場合、母親は搾乳機やボトルの部品を触る前に手を洗い、使用後は推奨に従い適切に搾乳機を洗浄する。
https://www.cdc.gov/healthywater/hygiene/healthychildcare/infantfeeding/breastpump.html
可能であれば、健康な人に児の世話をしたり搾母乳を与えてもらったりすることを考慮する。

手指衛生は、アルコール含有60%から90%の手指消毒剤の費用を含み、以下の場合に行う:
感染した母親や感染の可能性のある用具の使用の前後、手袋を含む個人防護具(PPE)の着衣前と脱衣後。手指衛生は20秒以上の石鹸と水での洗浄でもよい。手指が目に見えて汚染された場合、石鹸と水による洗浄を行ってからアルコール含有手指消毒剤を用いる。

COVID-19が確認された場合は、他の家族や友人、隣人から隔離(家庭内隔離)されるべきで、乳児も含むが、授乳は例外である。(訳注:家庭内隔離の一例 https://publications.msss.gouv.qc.ca/msss/fichiers/2019/19-210-08A.pdf) 母親が搾乳をして母乳分泌維持をしている場合、理想的には、感染していない大人が児のニーズにあったケアを行い、搾母乳を児に与えることが望ましい。咳や気道分泌物が劇的に改善するまで少なくとも5-7日間は、母親は上に書かれたような厳重な手洗いとマスクの着用を実施する。家庭内隔離をいつ中止するかの決断には、医療保健専門家や医療施設に相談するのが有用かもしれない。

病院で
母乳育児を行うかどうかの選択権は母親と家族にある。
母親が元気で、ウイルスに暴露されただけであったり、軽い症状で検査中だったりした場合、母乳育児は合理的な選択で、母の気道分泌物が児に暴露するのを軽減するのにマスクやガウンを使用することや厳重な手洗いをすることは比較的容易である。

母親がCOV-19に感染している場合は、もっと心配かもしれないが、直接授乳や児に搾母乳を与えることは、依然として合理的である。母親の病状によるが、児の気道分泌物への暴露を制限するためには、さらに注意深く推奨を守るようにする必要があるかもしれない。

母乳育児中の母親と児の同室/異室に関して、病院には選択肢がいくつかある。
  1. 母子同室(母親と児が同じ部屋にいて、部屋に他の患者がいない)
    母親と児のコットは6フィート(訳注:約1.8メートル)以上離す。児に触る前には手を洗い、児に触ったり直接授乳したりする間はマスクを着用するといったウイルス感染予防策を講じる。理想的には、健康な別の大人が児の世話をするために部屋にいることが望ましい。
  2. 一時的な分離
    母親がCOVID-19 感染で状態が悪く、病院での医学的ケアを必要とする場合に行う。母親が母乳育児を予定している場合や、継続を希望する場合は、乳汁分泌の確立や維持のために搾乳を勧める。可能なら、専用の搾乳器を与える。搾乳前には、母親は手指衛生をおこなう。搾乳ごとに母乳に触れるすべての部品は入念に洗浄し、搾乳器全体をマニュアルに従い適切に消毒する。搾乳は健康な養育者が児に新生児に与える。
母親と家族は母乳育児を続けるために、また、母親のCOVID-19による病気の間の搾母乳の使用方法、母乳分泌維持の方法、後から使うための搾母乳の保存方法などについて、追加のガイダンスや支援を必要とするかもしれない。

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UNFPA(国連人口基金)
新型コロナウイルスと妊娠についての声明 2020年3月5日
UNFPA statement on novel coronavirus (COVID-19) and pregnancy
https://www.unfpa.org/press/unfpa-statement-novel-coronavirus-covid-19-and-pregnancy

母乳育児に関する記述の部分の抜粋
母乳育児中の女性は新生児と分離すべきではない。
ユニセフによると、呼吸器のウイルスが経母乳感染することを示すエビデンスはないからである。
下記の必要な予防措置を実施すれば、母親が母乳育児を続けることは可能である。
症状を呈しているが母乳育児を行えるほど状態のよい母親は、児の側にいるとき(授乳中を含む)はマスクを着用し、児と接触する前後(授乳を含む)は手を洗い、汚染された表面はきれいにし、消毒する。
母親が母乳育児ができないほど病状が重い場合は搾乳が推奨され、搾乳された乳汁は、マスクを着用して清潔なカップやスプーンで児に与えることができる。児と接触する前後(授乳を含む)は手を洗い、汚染された表面はきれいにし、消毒する。