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新型インフルエンザ【インフルエンザA型(H1N1)】にかかってしまったら母乳はどうしたらいいのだろう?」と、母乳で育てているお母さんをはじめ、今後出産を控えている女性やご家族の方たちも、疑問や不安を感じていらっしゃるのではないでしょうか。 |
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【7つのQ&A】 | |||
Q1: 私(お母さん)が新型インフルエンザに感染した場合でも、赤ちゃんに母乳をあげていいのでしょうか? |
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A1: お母さんが新型インフルエンザに感染しても、母乳育児を続けましょう。母乳は様々な方法で赤ちゃんを感染から守ります。なぜなら、母乳にはたくさんの感染防御因子 (赤ちゃんを感染から守る細胞や免疫物質)が含まれているからです。 お母さんが新型インフルエンザにかかったときの免疫反応についてはまだ十分には解明されていませんが、一般的に、お母さんの体で作られた抗体(病原体とたたかうための免疫物質)が母乳を通して赤ちゃんに移行し、赤ちゃんを守る働きをします(6)。また、母乳には抗体以外の感染防御因子がたくさん含まれていて、赤ちゃんの鼻、のど、腸の粘膜などで細菌やウイルスの侵入をブロックしているので、ウイルスが赤ちゃんの体に入ることを防ぐ働きが期待できます。母乳 を中断してしまうと、赤ちゃんはこれらの大切なものを母乳から受け取ることができなくなります。(「母乳育児Q&A・季節性インフルエンザ」(2)を参照) このような理由から、お母さんが新型インフルエンザにかかってしまった場合でも、母乳を飲ませ続けたほうが赤ちゃんが感染しにくく、感染しても軽症ですむ可能性が十分あると考えられています。さらに、母乳には赤ちゃんの 「免疫システム(体を病原体などから守る機構)」を発達させる因子も含まれるため、母乳は赤ちゃん自身が病気と闘う力をつけていく助けになるでしょう。 また、新型インフルエンザが母乳を通じて赤ちゃんへ感染する可能性はまずないであろうと現段階では考えられています。そして、お母さんが抗インフルエンザ薬や解熱剤などを使用していても母乳をあげることができます(後述)。 |
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Q2: 現在妊娠中です。出産のときに新型インフルエンザにかかってしまったら、感染予防のために、出産後は赤ちゃんと離れて過ごす必要があると聞きました。赤ちゃんには母乳をあげたいのですが、どうしたらいいのでしょうか。 |
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A2: 現時点では、新型インフルエンザの症状があるお母さんが出産した場合には、出産後のお母さんと赤ちゃんが接触しないようにして、感染を予防する方針をとる施設が多いと考えられます。現在、米国疾病予防管理センター(CDC)は、「新型インフルエンザには母乳が一番奨められるが、新型インフルエンザが強く疑われる症状がみられるお母さんが、未治療または治療開始後間もない時期に出産する場合には、出産後のお母さんを隔離して赤ちゃんと密接な接触を避けた方がよいこと」を推奨しており、これを受けて日本産科婦人科学会や日本小児科学会も同様の方針を支持しているからです。新型インフルエンザは未知のウイルスであり情報が少ないため、現段階では慎重な対応が求められているためと考えられます。 お母さんと赤ちゃんが離れなければならない場合でも、赤ちゃんを感染から守るために、母乳を搾って赤ちゃんに与えることが大切です。出産直後から赤ちゃんとお母さんが離れなければならない場合には、できるだけ早期から搾乳をはじめると母乳の分泌を促すことができます。お母さんの病状が許す限り、できるだけ早期から、できれば3時間毎ぐらいの間隔で母乳を搾りはじめましょう。出産する施設のスタッフには、赤ちゃんに母乳をあげたいということや、必要な場合には手伝ってもらいたいことなど、ご自分の希望を伝えるようにしましょう。 お母さんが抗インフルエンザ薬(タミフルやリレンザ)による治療を開始して48時間が経過し、熱が下がり、咳(せき)もあまり出ないぐらいに回復してきたら、赤ちゃんに直接母乳を飲ませることができるようになるでしょう(1,3)。その場合は、4)にあげるような感染予防策をしっかり行いましょう。 |
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Q3: 私(お母さん)は現在、7か月の乳児に母乳をあげていますが、新型インフルエンザにかかってしまいました。医師に「母乳は搾って、他の人に頼んあげてもらいなさい」と言われましたが、頼む人がいません。どうしたらいいでしょうか? |
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A3: 前述のCDCは、出産前後の場合と同様に、退院して家庭で母乳をあげているお母さんと赤ちゃんに対しても、できればおむつ替えや授乳などの赤ちゃんの直接のお世話を症状のない人に頼み、母乳を搾って赤ちゃんに飲ませてもらうことを勧めています(6)。日本の厚生労働省は、お母さんが一時的に直接授乳できないときは、搾った母乳を症状のない家族などに頼んであげてもらうことが可能であること、やむをえず直接授乳する場合は、服を着替えたりマスクを着用するなどして、できるだけ感染の危険が低い状態で授乳するように提案しています(1)。その一方で、世界保健機関(WHO)や英国をはじめとする他の国は、搾乳して他の人があげることを第一選択とはしておらず、赤ちゃんとお母さんを離さずに、手洗いなどの感染予防策をとりながら、直接母乳をあげ続ける方針を推奨しています(7-12)。 高熱と倦怠感のあるお母さんが慣れない搾乳を行うことは大変かもしれませんし、赤ちゃんのお世話をする他の家族がいない場合もあると考えられますので、この医師の勧める方法を実行するのは実際には難しいかもしれません。 現段階では、お母さんと赤ちゃんを離すことによる感染予防効果についてははっきりわかっていません。また、お世話をしてもらう他の家族が既に感染している可能性も十分考えられます。4)にあげるような感染予防の対策に十分注意しながら、お母さんの病状や各家庭の状況によって、ご自分にあった方法をとるとよいでしょう。 現段階では、新型インフルエンザについての情報は限られていますが、「赤ちゃんへの感染を予防しながら、赤ちゃんが母乳による恩恵を最大限に受けることができる」ための最善の方法が各国で検討されています。10月13日付けで発表されたアメリカ小児科学会のニュースレター(14)では、「インフルエンザの感染を防止するという事だけを考えると、お母さんが抗インフルエンザ薬を内服するとともに赤ちゃんと母親を完全に隔離することが最も効果的かもしれません。しかし、このことによって母乳育児の成功や母と子のきずなの形成という観点からみると長期的に悪影響を及ぼすことになり、赤ちゃんへの感染を避けることで得られる利益よりも、そのマイナスの影響は大きなものとなるでしょう。」と述べられています。お母さんと赤ちゃんの相互関係や母乳育児がもたらす利益と、重症な感染症のリスクを考慮した上で、適正なバランスがとれるような方策を今後考えていく必要があるでしょう。 |
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Q4: 私(お母さん)が新型インフルエンザにかかった場合、授乳やおむつ替えなど、直接赤ちゃんの世話をする際はどのようなことに気をつけたらいいのでしょうか? |
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A4: 新型インフルエンザと診断されたお母さんが直接赤ちゃんのお世話をする際には、以下のようなことに気をつけましょう(6-8, 13,14)。
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Q5: 私(お母さん)が、治療や予防のために抗インフルエンザ薬を使用したら母乳をやめたほうがいいのでしょうか? |
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A5: お母さんが、治療または予防のために抗インフルエンザ薬を使用している場合でも、母乳をやめる必要はありません。 新型インフルエンザの治療には、タミフル(一般名:オセルタミビル)やリレンザ(一般名:ザナミビル)が使われます。お母さんがタミフルを内服したとしても、血液中の薬の濃度はとても低いうえに、赤ちゃんの腸管から吸収される量もわずかのため、母乳を通して赤ちゃんに影響する可能性はほとんどないと言われています。また、リレンザは吸入薬で、体内に吸収される量が少ないため、母乳中への移行はほとんどないと考えられています。詳しくは、前述の「母乳育児Q&A・季節性インフルエンザ」(2)を参照してください。 現在WHOやCDCをはじめとする多くの専門機関が「お母さんがインフルエンザに感染したり、抗インフルエンザ薬を使用したりする場合でも授乳を続けること」を推奨し、広く呼びかけています。母乳から与えられる利益と母乳を通じて移行する薬剤の影響を秤に掛けたとき、母乳の効果には計り知れないくらい大きなものがあると考えられているのです。 |
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Q6: 授乳中でも新型インフルエンザのワクチン接種はできますか? |
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A6: 授乳中のお母さんでも新型インフルエンザのワクチン接種を受けることができます。新型インフルエンザのワクチンは不活化ワクチンというタイプで、病原性をなくしたウイルスの成分を用いているためにウイルスが体内で増えることがありません。そのため、母乳を介して赤ちゃんに影響を与えることはなく、授乳中のお母さんでもワクチン接種を受けてもさしつかえありません(1) |
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Q7: 赤ちゃんの方が新型インフルエンザにかかって高熱が出たり、また具合が悪くなってあまり飲めなくなった場合にはどうすればいいでしょうか? |
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A7: 高熱が出ると水分を多くあげるように、と言われることがありますが、水、お茶、スポーツドリンクやイオン水などよりも母乳の方が適しています(6)。 小さい赤ちゃんの場合、具合が悪いようなら入院することになるかもしれません。その場合、可能ならお母さんが付き添いをして母乳をあげ続けることができるようにしてもらいましょう。付添いが許可されない場合でも、人工乳ではなく母乳をあげられるように取りはからってもらいましょう。赤ちゃんの状態が悪くて直接乳房から飲めない場合には、搾母乳をチューブであげることができます。赤ちゃんが回復するにしたがって直接飲むことができるようになりますので、母乳の分泌を維持する意味でも搾乳を続けるようにしましょう。 |
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【参考文献】
JALCはラ・レーチェ・リーグとタイアップし、 ラ・レーチェ・リーグの標語〜新型インフルエンザから赤ちゃんを守るために、母乳育児を続けましょう〜 を共同使用しています。 |
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