母乳育児FAQ <<よく寄せられる質問とその答え>> 

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初めての妊娠です。母乳育ちの赤ちゃんは、病気になりにくいと聞き、産後はぜひ母乳で育てたいと思っています。妊娠中から、どんなことを準備すればいいのでしょうか。

これから産まれてくる赤ちゃんの健康を考えて、母乳で育てようと思われたのですね。今からどんな準備ができるのか、前向きに計画しようとされていて、すばらしいです。御存知のように、母乳は赤ちゃんにとって一番自然な栄養源であり、また母親にとっても、母乳育児は女性としての満足感を味わえる得がたい経験となります。あなたの母乳育児の扉がスムーズに開くために、妊娠中の準備をいくつか提案してみます。

<母乳育児をしているお母さんを知ること>
あなたがこれまで、お母さんが赤ちゃんに母乳をあげている様子をみたことがなければ、ぜひその機会を探してみましょう。母乳育児中の知人がいたら、連絡をとってみるのもいいかもしれません。地域にラ・レーチェ・リーグなどの母乳育児サポートグループがあるかどうか、地域の保健センターや、助産師会に聞いてみるといいかもしれません。そして、おっぱいを飲んでいる赤ちゃんとお母さんの様子を見てみましょう。あかちゃんの抱き方のコツや、どのような工夫をして楽しんでいるのか聞いてみるのもいいでしょう。

<家族と話し合うこと>
パートナー(夫など)やその他の家族と、母乳で育てることについて話し合うことも大切です。パートナー(夫など)は協力してくれそうですか。将来おじいちゃんとおばあちゃんになる方はどう考えているのでしょう。あなたが母乳で育てたいことを、パートナー(夫など)や、その他の家族に伝え、協力してもらえるように話してみましょう。

<赤ちゃんにやさしい病院のこと>
世界保健機構(WHO)と国連児童基金(ユニセフ)は、「母乳育児の保護、促進、そして支援―産科施設の特別な役割」と題する共同声明を発表し、世界のすべての産科施設に対して「母乳育児成功のための10か条」を守るように呼びかけました。

<<母乳育児成功のための10か条>>

産科医療や新生児ケアにかかわるすべての施設は以下の条項をまもらなければなりません。

  1. 母乳育児についての基本方針を文書にし、関係するすべての保健医療スタッフに周知徹底しましょう。
  2. この方針を実践するのに必要な技能を、すべての関係する保健医療スタッフに訓練しましょう。
  3. 妊娠した女性すべてに母乳育児の利点とその方法に関する情報を提供しましょう。
  4. 産後、30分以内に母乳育児が開始できるよう、母親を援助しましょう。
  5. 母親に母乳育児のやり方を教え、母と子が離れることが避けられない場合でも母乳分泌を維持できるような方法を教えましょう。
  6. 医学的に必要でないかぎり、新生児には母乳以外の栄養や水分を与えないようにしましょう。
  7. 母親と赤ちゃんがいっしょにいられるように、終日、母子同室を実施しましょう。
  8. 赤ちゃんが欲しがるときに欲しがるだけの授乳を勧めましょう。
  9. 母乳で育てられている赤ちゃんに人工乳首やおしゃぶりを与えないようにしましょう。
  10. 母乳育児を支援するグループづくりを後援し、産科施設の退院時に母親に紹介しましょう。


この10か条を完全に実施する産科施設が「赤ちゃんにやさしい病院」と認定されるのです。
あなたの近くに「赤ちゃんにやさしい病院」がなければ、
・ 出産後すぐから母乳育児が始められ、母子同室でいつでも赤ちゃんに母乳を飲ませることができるのか。
・ 不必要な糖水や人工乳は足さないようにしているか。
・ おしゃぶりや人工乳首を使っていないか。
などを参考ににして、産科施設を探してはいかがですか。そして、10か条を守ってほしい気持ちを話してみましょう。

<妊娠中の乳首の準備>
妊娠中の乳首の準備として、初乳を搾ったり、乳首をこすったり引っ張ったりして「きたえる」ことを勧められることがあるかもしれません。最近の研究によれば、これらのことは効果がはっきりと証明されているものはないと言われています。WHO/ユニセフによれば、役にたたない習慣のひとつにあげられています。一般的には、乳首を含む乳房の直接的な準備は必要がないといわれています。ほとんどの女性は特に何もしなくてもうまく母乳育児をすることができます。もし、乳首をつまんでみた時にオヘソのようにくぼむ時(陥没乳頭)には、かかりつけの施設にいる助産師に相談してみてはどうでしょう。

<出産後、家庭での生活>
あなたの出産後のことを少しイメージしてみてください。あなたの赤ちゃんが欲しがるだけの授乳ができるように、家事や買い物のお手伝いをしてくれる人がいるといいですね。また、家の環境を整えたり、急に食事の用意ができなくなった時でも慌てないように、宅配の手配や情報を整理しておくと役に立つかもしれません。
時間があれば、今のうちに本を読んでみてはどうでしょう。「だれでもできる母乳育児」、「おっぱいでらくらく、すくすく育児」、「私の赤ちゃんおっぱいノート」などを読んで役にたったというお母さんが多いようです。あとは赤ちゃんを待つばかりです。どんな母乳育児ができるか、今から楽しみですね。時間をたっぷりかけて、お互いを楽しみながら、新しいきずなを築きあっていきましょう。

参考文献

  1. 私の赤ちゃんおっぱいノート:宮崎文子(訳)、スー・コックス(著)メディカ出版 2002年
  2. だれでもできる母乳育児:ラ・レーチェ・リーグ・インターナショナル メディカ出版 2000年
  3. おっぱいでらくらく、すくすく育児:金森あかね(監修)、北野寿美代(著)メディカ出版 2002年
  4. 金森あかね:乳首のトラブル、助産婦雑誌、52 (10)、39-42 (2000)
  5. 涌谷桐子:母乳育児のための出産前教育、助産婦雑誌、52(10)、48-54 (2000)
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1ヶ月健診で体重の増えが悪いと言われました。母乳不足でしょうか。

1ヶ月健診で体重の増えが悪いと言われ、母乳が十分ではないように思えて不安なのですね。
母乳育ちの赤ちゃんは個人差が大きいものですが、一般に、赤ちゃんが元気でおっ ぱいをゴクゴク飲んでいる音が聞こえていれば、十分な量の母乳が飲めていることが多いのです。お母さんが自分で確かめるには、母乳だけを飲んでいる場合、1日に布なら6枚、紙なら5枚以上おむつがびっしょり濡れていて(オムツに30-60mlの水をかけてみるとおよその1回量がわかります)、色が薄く臭いも強くないことが目安になります。生後6週間までならうんちが24時間に少なくとも2−5回出ていることも確認しましょう)。 

生後1カ月までの体重の増え方は直線的なものではなく、生後2週間かかって出生体重に戻ったり、生後3週間くらいから急に体重が増えだしたりすることがあります。WHO/ユニセフの文献2)によれば、母乳が足りていれば、体重が増えだしてから1週間に125g以上、1ヵ月で500g以上増加すると述べられています。もし、体重の増え方がこれより少ない場合は、赤ちゃんの健康状態のチェックも必要ですので、母乳だけで育つ赤ちゃんの生理に十分な理解のある医師に相談してみましょう。

赤ちゃんの体重増加がおもわしくないというケースの中には、赤ちゃんが欲しがる度に飲ませないで授乳と授乳の間隔をあけたり、赤ちゃんが満足するまで長く飲ませていない場合があります。この時期の赤ちゃんは昼も夜も頻繁に(1日8回から12回以上)おっぱいを飲み、授乳時間も両方の乳房をそれぞれ10−15分くらいかけて飲むことが多いものです3)。もっと頻繁に飲む赤ちゃんもいますし、もっと長く飲む赤ちゃんもいます。また、抱き方に注意して深くおっぱいをふくませて飲ませることも大事です。効果的に吸われていないと、長く頻繁に吸わせていても十分母乳が飲めていないことがあります。もう一度抱き方とふくませ方をチェックし直してみるのもよいでしょう。

参照文献

  1. The breastfeeding answer book, LLLI
  2. Breastfeeding management and promotion in a baby-friendly hospital an 18-hour course for maternity staff UNICEF WHO 1993
  3. American Academy of Pediatrics. Work Group on Breastfeeding: Breastfeeding and the use of human milk. Pediatr 1997; 100: 1035-39.
    翻訳:母乳と母乳育児に関する方針宣言-アメリカ小児科学会の勧告 周産期医学2001;31:555-62.
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授乳間隔について
(出産後2週間です。よく育児書に授乳間隔は3時間ごとと書かれていて、出産した病院でもそう言われました。
でも家に帰ってくると1時間ぐらいで泣く時もあるし、飲んでも飲んでも欲しがってとても3時間もちません。)

育児書通り授乳時間が3時間もあくことがなくて大丈夫なのかしらと不安に思われているのですね。出産後数ヵ月間の授乳間隔は、大変個人差が大きいもので、多くの場合1日に1〜2回3時間以上あくことがあっても、ほとんどの赤ちゃんは頻繁に欲しがるのが普通です。 母乳は消化吸収に優れ、人工乳と比較すると消化時間が短いので早く空腹になります。ですからいくら頻繁にあげても大丈夫なのです。とくに産後しばらくは1日8〜12回またはそれ以上の授乳が必要です。 また、母乳は飲めば飲むほど湧いてくるといわれますがそれには理由があります。赤ちゃんが乳房を吸う(またはそれに似た刺激が乳頭から伝わる)ことによってプロラクチンとオキシトシンというホルモンが分泌されます。プロラクチンは母乳を作る働きがあり、オキシトシンは母乳を出す働きがあります。プロラクチンは授乳するたびに上昇し授乳が終わると基礎値に戻ります。ですからプロラクチンの濃度を高く保つには赤ちゃんにたくさん吸ってもらう必要があります。プロラクチンの分泌という意味からは授乳の回数が多い程良いといえるでしょう。一方、オキシトシンは、赤ちゃんが吸う刺激によって分泌され、乳汁を乳管まで押し出します。このホルモンはストレスによって抑えられることがわかっています。

また、1回の授乳時間も片方3分とか5分というようにあまり短時間になると、オキシトシンによ?て乳汁が押し出される前に授乳をやめてしまうことになってしまいます。ですから、あらかじめ乳房の中に蓄えられた前乳と呼ばれる母乳だけを飲むことになり赤ちゃんは十分満足することができません。授乳時間を長くとると出てくる母乳の量も増えるので、後の方に出てくる後乳と呼ばれる脂肪が多くカロリーの高い母乳を飲むことができます。ですから赤ちゃんが満足して乳房を離すまで授乳することが大切です。赤ちゃんがこの時期母乳を飲みたがるのは、空腹を満たしたいだけではなく口で吸っていたいという基本的欲求(ニーズ)もあるのです。
乳房を吸うことにより快いと感じて安心感を得ることができます。前回の授乳から10分もたたないうちに欲しがっても、また乳房を含ませてあげてもかまわないのです。それが母乳の量を増やすことにもなりますし、赤ちゃんの基本的な信頼感を育てる基礎にもなります。

また、生後2〜3週間、6週間目、3ヵ月目は赤ちゃんが急成長する時期といわれていて多くの赤ちゃんは今までよりも頻繁に母乳を欲しがります。その時は授乳間隔がもっと短くなり、回数が増えることがありますが、心配いりません。赤ちゃんが欲しがるだけ母乳を飲ませることが大切です。前の授乳時間から何時間または何分あいたかということは問題ではありません。
 どうぞ赤ちゃんの欲しがるときに欲しがるだけ授乳してください。

参考文献

  • だれでもできる母乳育児 ラ・レーチェ・リーグ・インターナショナル メディカ出版2000年
  • おっぱいでらくらくすくすく育児 北野寿美代 著 金森あかね 監修 メディカ出版 2002年
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上手な抱きかたと飲ませかたについて

どうしたらもっとスムースに授乳ができるのでしょうか。
(出産して二週間たちましたが、なんだかまだ授乳がうまくできないような気がしています。いつも授乳を始める時は、赤ちゃんが上手に飲めるようになるまでに時間がかかってまごついたり、長い時間かかってやっと授乳が終わっても、肩や背中が痛くなったりしてとても疲れてしまいます。どうしたらもっとスムースに授乳ができるのでしょうか。)

あなたはまだ自分で授乳がうまくできないような気がして、そのせいで疲れていると感じておられるのですね。赤ちゃんに授乳するということは簡単なように見えても実は結構難しいことも多いのです。出産後すぐから、誰でもスムースに授乳ができるというわけではありません。お母さんがちょっとした授乳のコツをつかむことも必要ですし、赤ちゃんも初めからみんな上手にお乳が飲めるというわけでもありません。つまり、お母さんも赤ちゃんも練習して、慣れながら、少しずつ上手になっていくことができるのです。まず、あなたが飲ませていらっしゃる様子を、ひとつずつチェックしてゆきましょう。

1) 楽な姿勢で授乳をしていますか?

 生後一ヵ月までの頃は、一日のうちに特に頻回に授乳をする赤ちゃんも多いので、毎回の授乳が楽な姿勢でおこなわれないと、その無理な姿勢が体を疲れさせる原因になります。
 授乳をする際は、家の中であなたが安楽だと感じる場所を見つけて、楽な姿勢で座ることから、授乳を始めるようにしましょう。 枕やクッションなどを利用して、自分の背中や腰にはさんで安楽な姿勢を見つけたり、肘や腕の下に置いて支えにしたりするともっと楽に授乳ができるでしょう。
 また、赤ちゃんに乳房を含ませるときに丁度よい高さになるように、あなたの膝と赤ちゃんの体の間にも枕などを入れて、高さの調節をすることもとても大切です。 赤ちゃんを自分の腕で抱いて、持ち上げるようにして授乳するのではなく、自分の膝の上に枕などを置いて高さを調整したところに赤ちゃんを置いて、あなたの乳頭の高さに赤ちゃんの口がくるようにして授乳を試みてみましょう。これだけでも授乳がずいぶん楽に感じるようになるでしょう。

2) 授乳のとき、あなたと赤ちゃんとの体が密着しているようにしっかり抱いていますか?

 授乳の際、あなたの体(お腹の部分)と赤ちゃんの体(胸の部分)がピッタリと密着したようにしっかりと抱いていることが大切です。この時にあなたの体と赤ちゃんの体にすき間がないように抱くと、赤ちゃんのほうも、あなたが安定した抱き方をしているので安心して母乳が飲めるでしょう。あなたの体と赤ちゃんの体が密着することによって、乳頭がより深く赤ちゃんの口に入りやすくなります。実はこの「乳頭を深く口に入れる」ということが、授乳の際にとても重要なポイントになるのです。

3) 赤ちゃんの顔が真直ぐに乳頭に向かっていますか?

 乳頭の向いている方向から赤ちゃんの口をもってくると、正しい方向で乳頭を含むことができます。また、赤ちゃんを抱いたとき、赤ちゃんの頭、首、体、(または耳、肩、腰)がまっすぐな線になっているかどうか、よく観察してみて
ください。
 赤ちゃんの体は天井を向き、顔だけがねじれてお乳に向いているという状態をよく見かけます。この状態では、赤ちゃんは上手に母乳を飲むことができません。このように真直ぐ赤ちゃんを抱くことで、お母さんの体と赤ちゃんの体が
ぴったりとフィットして赤ちゃんは集中して母乳を飲むことができるようになるでしょう。 赤ちゃんが無理なく抱かれ、乳房をうまく吸っている時は穏やかで落ち着いているように見えることが多いのです。

4) 乳房を支える時は手を乳輪から広く離したところで支えていますか?

  親指を乳輪(乳頭の外側の着色している部分)より上部にあて、ほかの四本の指は乳房の下部にあてます。この時、親指と人さし指はローマ字の『C』の形になるようにしましょう。

5) 赤ちゃんが「あーん」と大きな口を開けたときに、乳頭を十分に深くまで赤ちゃんの口に入れていますか?

 赤ちゃんに口を大きく開けてもらうために、乳頭の先で赤ちゃんの下唇をちょん、ちょんと刺激してみます。この時に、お母さんが赤ちゃんにお手本を見せてあげるように一緒に『あーん』と口を開けて見せてあげると、赤ちゃんも大きな
口を開けてくれることもあります。先程もふれましたが、赤ちゃんが乳頭を深く口に入れて母乳を飲むことはとても重要なことです。
 乳頭から乳輪まで十分に深く口に入れることで、効果的に母乳を飲むことができます。乳頭のみを吸わないように乳房を深くくわえさせると、乳頭が痛くなったり 傷ついたりすることを防ぎます。授乳の時間が極端に長くかかるときなど
は、深く乳房を含ませることによって、より効果的に飲めるかもしれません。乳頭が痛かったり、長く飲むわりに赤ちゃんの体重があまり増えなかったり、あるいは、おむつがあまり濡れなかったりするときなどは、もう一度深く乳房を含ま
せているかどうか確認してみましょう。またその時には、赤ちゃんの上下の唇が外側に開いたようになっているか見てください。ちょうど、おもちゃのラッパのような形に開いていれば赤ちゃんの口が適切に開いているといえます。

6) ここまでやってみて、うまくお乳を赤ちゃんの口にいれることができたら、一度深呼吸をして、肩の力を抜いて リ・ラ・ッ・ク・ス してみてください。

いかがですか? 赤ちゃんに吸われることでいい気持になりませんか。

7) 次は授乳の時間などについてです。

 赤ちゃんが欲しがるときに、欲しがるだけ母乳をあげていますか。あなたは決めた時間に授乳をしようと思っていたり、一定の時間を授乳の時間、と決めて飲ませようとしたりしてはいませんか?
母乳育ちの赤ちゃんは個人差が大きく、一気に早く飲み終えてしまう赤ちゃんもいれば、ゆっくり時間をかけて授乳をする子もいます。一日の中で1ー2回、3ー4時間ほど授乳の間隔が空くような赤ちゃんもいれば、1ー2時間とあけずに欲しがる子もいます。大切なことは、赤ちゃんが十分満足するまで、しっかりと母乳を飲ませてあげることです。赤ちゃんが小さいうちは、すぐにうとうとと眠りがちになる子も多いのですが、そんなときは、時々起こしながら母乳を飲ませてあげるとよいでしょう。
 片方の乳房から十分に飲ませてあげて、赤ちゃんが少しお休みしたような時に、一度離してもう片方の乳房に移ります。あなたの赤ちゃんが片方の乳房だけでいつも満足して眠ってしまうようなら、途中で起こして、もう片方の乳房に移るようにしてなるべく両方の乳房から飲ませるようにするとよいでしょう。

8)「添い寝」ができれば試してみましょう。

 添い寝ができるようになると、お母さんはとても楽に授乳ができるようになるでしょう。ただし、この時も、赤ちゃんには正しく乳房を吸ってもらう必要があります。添い寝で授乳するときも、枕やクッションなどを使ってお母さんが楽な姿勢で寝ながら飲ませられるように工夫してみましょう。

9) 他にも次のような抱き方があります。

「フットボール抱き」

 これは赤ちゃんの足をお母さんの脇の下を通して背中の方にくるようにし、赤ちゃんの頭を手で支える方法です。フットボールを抱えているような状態を想像してください。枕などを使って赤ちゃんの頭が乳頭の高さまでくるように調節します。
この抱き方だと赤ちゃんの口を観察しながら赤ちゃんの姿勢をコントロールすることができ、吸い付きがあまり上手でない場合に役立ちます。

さあ、これらの抱き方、飲ませ方を参考になさってもう一度ゆっくり落ち着いて授乳してみてください。楽なように…といろいろ工夫しながら授乳していくうちに、少しずつ慣れていき、だんだんスムースに授乳ができようになるでしょう。
そしてあなたも、もうすぐ母乳育児がもっと楽しめるようになることでしょう。

「抱きかた、飲ませ方」についてもっと詳しくお知りになりたい場合は以下の図書を参考にしてください。
参照文献

  • 改訂版 だれでもできる母乳育児:ラ・レーチェ・リーグ・インターナチョナル /メディカ出版、2000
  • おっぱいでらくらく、すくすく育児 :金森あかね(監修)北野寿美代(著)/ メディカ出版、2002
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母乳を飲ませるときにダイオキシンが心配です。大丈夫でしょうか。

母乳には有害なダイオキシンが入っているからあまり飲ませないほうがいいというような情報があるので、不安を感じていらっしゃるのですね。
 確かにここ数年「日本のダイオキシン汚染は世界最高」「母乳のほうがダイオキシンのせいでアトピーが多い」「甲状腺機能が低下する」「発育発達に悪影響がある」「赤ちゃんが大きくなって子宮内膜症にかかりやすくなる」などの情報が一部のマスコミに流れ、それを受けて「母乳は3ヵ月までにしておいたほうがいい」などというアドバイスがまことしやかに流されました。ちょっと情報を整理してみましょう。
 日本のダイオキシン汚染は諸外国と比べて特別に高いわけではありません。世界一という根拠に使われたのは、1970年代のはじめに出された母乳の脂肪1グラムあたり「51ピコグラム」というダイオキシンの値なのですが、これは、年代も古いこともさることながら、毒性のないダイオキシンを分離しないですべて毒性のあるものとして計算したもので、他の値と比較することができない特殊な値なのです。(注:1ピコグラムは1グラムの1兆分の1)横浜国立大学の中西準子教授の計算では、この「51ピコグラム」を除けばすべての測定値の平均は脂肪1グラムあたり「15.4ピコグラム」となっています。(1992/1993年のWHOが発表した値では、オランダ22.4、ベルギー24.8、イギリス16.6、ドイツ16.5、デンマーク15.2、カナダ14.5、ノルウエー10.8など)汚染されているのは母乳だけではありません。母乳を調べたのは、母乳が血液より脂肪が多いので、人体の汚染濃度を調べやすかったからだけなのです。国や企業が環境汚染をより少なくする努力をすることは大切ですが、まるで母乳育児自体が危険なものであるかのように誤って伝えられると、母乳育児をしているお母さんは不安になってしまいますね。日本ラクテーション・コンサルタント協会(JALC)は、断乳の是非を判断するための個人の母乳のダイオキシン汚染濃度の測定や母乳の安全基準の設定、早期断乳指導などの介入に反対しています。
「JALCのダイオキシン問題に関する声明」はこちら

 アカゲザルの実験からダイオキシンの入った母乳を飲むことで子宮内膜症になるリスクが高くなるのではという声もありました。母乳中のダイオキシン類の濃度は年々減り70年代と比べて半減しています。日本で汚染が最悪と言われた70年代に母乳で育てられた女性を調査した東京大学の堤治助教授によれば、今より汚染がひどかった頃の母乳であっても、同時期に人工乳で育てられた人より子宮内膜症になりにくかったそうです。母乳で育てると子どもが感染症やがんなどになりにくいことは今までわかっていましたが、子宮内膜症の予防効果もあるようなことが示唆されたのです。

母乳で育った子どもにアトピーが多いという情報もデータの読み違えです。母乳で育てられた子どものほうにアトピーが多いかのように見えるグラフを作成しているNPOの本を監修していた助教授も、新聞の取材でそのグラフの間違いを認めています(讀賣新聞大阪版1999年5月27日)。母乳だけで育てるとアレルギーになる確率が低くなることは数々の研究で明らかです。むしろ、母乳以外のもの(人工乳や果汁など)を早期に与えるとアレルギーの発症の危険を高めます。

 ダイオキシンのせいで甲状腺の機能が低下するというのも1つの研究によって誇張された情報です。イギリスの医学誌「ランセット」には、逆にダイオキシンの濃度が高いと刺激ホルモンがでて甲状腺ホルモン(thyroxin)の濃度が増えることもわかっています。人体にはホメオスタシスという、極端にならないように均衡を保とうという機構があるので、一部の研究結果だけですべてを語ることはできません。一部のマスコミは、thyroxinという成長に大切なホルモンが減るのは大変だと騒ぎました。しかし実は母乳の中にはこの大切なホルモンが含まれていますが、人工乳には含まれていないのです。このホルモンの適切な摂取という意味でも母乳育児はかけがえのないものであることがわかります。

 「発育」に関しては、確かにダイオキシン類の胎児への悪影響を表わす研究はあります。しかし、乳児に関しては、たとえダイオキシン類が母乳に含まれていたとしても母乳育児を続けたほうがかえって悪影響が相殺されるという研究もあります。アメリカのローガン博士という、長年母乳のPCB汚染とその影響について研究してきた人がいます。博士も研究を始めたころは、母乳を通した子どもへの影響を心配していたのですが、子どもを追って発達を見ていくうちに、むしろ母乳のほうが、しかも長く飲ませるほど脳が発達していたとわかりました。ユニセフでは、彼の言葉や論文を引用して母乳の安全宣言をしています。

  「3ヵ月で母乳をやめたほうがいい」というアドバイスは、まったく科学的な根拠がありません。母乳の中のダイオキシン類の濃度は、出産後が一番高く徐々に減るのですから、減っているのに母乳をやめなければいけないというのは論理的にもおかしいのです。その根拠として「ドイツでは4ヵ月で断乳指導をしていた」という情報が流れたこともありました。確かに、汚染のレベルに関わらず(当時、離乳食を始めてもよいとされていた)4ヵ月までは完全母乳を奨め、それ以上母乳育児をする場合は汚染量によっては授乳を減らしていくという奨励が過去にありました。しかし、汚染濃度の高い早期に母乳検査をしたり早くに母乳をやめてしまったりという混乱が生じました。結局ダイオキシン類の量がここ数年で半減している(日本と同じレベルまで減っている)ことから、1995年以降、ドイツ政府は個人の母乳検査を中止し、全体の汚染を調べることのみを続けることにしました。そして、国をあげて母乳育児を推進しています。WHOも厚生労働省も数々の研究を元に母乳育児が赤ちゃんに最良のものであると勧めています。「3ヵ月まで母乳にしてあとは混合に」という奇妙なアドバイスは、もともと当時の厚生省が1975年のスローガンで「3ヵ月までは、できるだけ母乳のみでがんばろう」と言っていたからにすぎません。現在の厚生労働省では「3ヵ月」という限定的な言い方をやめて、母乳育児を推奨しています。

 母乳育児は、乳児の健康や発達に理想的で、病気の予防になり、母と子のきずなを深めます。一方、人工乳は、栄養的にも完全に母乳と同じものとは言えず、免疫物質も入っていません。あなたの赤ちゃんにとってあなたの母乳にまさるものはありません。
 私たちの子どもたちを守るため、環境から汚染を最小限にするためはどうしたらいいでしょうか。消費者としては燃やすと有害なダイオキシンを発生させるプラスチック類を「燃えるごみ」に出したり、自分で燃やしたりしない。なるべくごみを出さずにガラスのびんのように使えるものはリターナブルにして繰りかえし使うことも大切でしょう。家庭用の殺虫剤も含め、農薬の摂取を減らすことも必要です。
 人工乳を作る材料は母乳が汚染された同じ環境にあるだけではなく、その製品加工の過程における汚染事故や調乳の水の汚染の可能性も否めません。母乳は、直接乳児に飲ませる限り汚染の可能性は最小限になります。母乳育児をすると哺乳びんや粉ミルク缶の廃棄処理の必要がないため、大地、大気、水を汚染しません。 地球の環境のためにあなたにできる最大のこと、それは母乳で育てることなのです。

参考文献

  • 本郷寛子:母乳とダイオキシン、岩波ブックレット、1999
  • ナオミ・ボームスラグ&ダイア・L・ミッチェルズ(著)橋本武夫(監訳):母乳育児の文化と真実、メディカ出版、1999
  • ラ・レーチェ・リーグ・インターナショナル(訳:ラ・レーチェ・リーグ日本、1998年)ニュース・リリース:汚染された世界においても母乳育児は最善の選択 <www.llljapan.com>
    International Lactation Consultant Association: Position on Breastfeeding,
    Breast Milk, and Environmental Contaminants. 2001
  • 日本ラクテーション・コンサルタント協会「JALCのダイオキシン問題に関する声明」1999
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出産後5ヵ月で母乳育児をしています。まだ生理が始まりませんが,知らないうち に妊娠するのではないかと心配です。確実に避妊するにはどうすればよいでしょうか。

まだ赤ちゃんも小さく,次の月経を見ないうちに妊娠することがあるのをご存じな ので心配なのですね。妊娠を心配しながらセックスするとリラックスできず,十分楽 しめないかもしれません。 避妊を考えることはあなたの健康を守り,また家族の生活も安定させます。このことを真剣に考えていらっしゃるのは素晴らしいことですね。
 授乳中の避妊法については LAM(ラム)という方法があります。これは授乳中排卵 が抑制されることを利用して避妊する方法です。

LAM(Lactation Amenorrhea Method) (授乳性の無月経を利用する方法)

赤ちゃんが母乳だけを飲んでいる場合は(時として1年以上)お母さんが無月経だっ たり月経不順になることはよく見られます。特に出産後 6ヵ月間はお母さんの排卵が 始まる確率は非常に低いと言われています。(これを授乳性の無月経と言います)そのため授乳しているだけで自然の避妊ができると言われています。ただしこれを確実 な避妊法として使うには次の条件をすべて満たすことが必要です。
1. 出産後6ヵ月以内であること
2. 赤ちゃんは母乳だけを飲んでおり,他のもの(人工乳,果汁,おしゃぶりなど) を与えられていないこと。
 昼間は4時間,夜間は6時間以上空けないで,赤ちゃんの欲しがるときに欲しがるだけ授乳していること。一日最低6回以上は授乳していること。
3. 無月経であること(出産後56日以降,性器出血がまったくない)
 30ヵ国以上の実施報告で避妊効果は98.8〜100%と言われています。
 出産後6ヵ月をすぎた場合やLAMの条件に当てはまらない場合,他の避妊法を使用することが必要です。

LAM以外の主な避妊法として下記のものがあります。詳しくは下記の表をご覧下さい。

リズム法 1. カレンダー法
     2. 排卵予測法
     3. 症候体温法

バリア法 1.コンドーム(男性用,女性用)
     2.ペッサリー
     3.殺精子剤

IUD   1.なにも付加しないもの
     2.銅付加したもの

経口避妊薬
ミニピル
卵管結紮
精管切除

*避妊の失敗について:避妊しても妊娠してしまうことはありますが,複数の避妊法を 併用することによって効果がさらに確実になります。
*性感染症について:性感染症を予防する唯一の方法はコンドームです。特に カップルのどちらかに性感染症の可能性があるときはそのことについて話し合 い,診断がつくまでは(他の避妊法を使用していても)コンドームを併用することが大切です。

*母乳をあげているときのセックス
母乳をあげているときにもセックスに積極的になれる女性とおっくうになる女性がい ます。女性によっては、セックスをすることも授乳することも、同じように自然な生 活の一部で、楽しいことだと捉えている人もあります。一方,パートナーに愛情を感じてはいるのですが,愛情を他の形で確かめたい人もいます。このように両極端に分 かれてしまうことは自然なことです。女性がセックスに気持ちが向かないときは,女 性はパートナーに自分の気持ちを伝え,またパートナーの気持ちにも耳を傾け,二人で納得の方法を見つけることで更に愛情を深めることができるでしょう。

*避妊の有効性
性交をする以上,100%有効な避妊法はありません。また各種避妊法にはメリットとデメリットがあります。
それぞれのカップルで,どのくらいの期間避妊したいのか,どのくらいの確率で避妊したいのか,実際何なら実行可能なのかはそれぞれ違います。セックスや避妊について話し合うことを照れる人もありますが,話し合ってお互いに満足できる方法を見つけられるとよいですね。

避妊法の種類 方法 1年間の
失敗率(%)
メリット デメリット
理想的使用 一般的使用
使用せず 避妊法を何も使わないとき 85 85    
LAM 上記参照 0-1.2    避妊具,薬剤を使用する必要がない   LAMの条件に合わないときは使用できない
リズム法 基礎体温,子宮頸部粘液から受胎可能期間を判断し,禁欲する 1-9 25 避妊具,薬剤を使用する必要がない   性行動が予測できないときは不適
 1.カレンダー法  月経6周期の長さを記録し,最短月経周期の期間から18日を引いて受胎可能期間の始まりとし,最長月経周期の期間から11日を引いて受胎可能期間の終わりとする     同上 月経不順,月経周期を記録していないときは判断できない授乳中で排卵周期が一定していないときは使用できない
 2.排卵期予測法 頸管粘液の状態を触ったり見たりして知る          同上 膣炎,子宮頸管炎のときは判断を誤る可能性がある
 3.症候体温法 頸管粘液と基礎体温を併用する      同上 同上
膣外射精法 膣外で射精する 4.0 18.0   射精前から精液が少量でている可能性がある
失敗が多い
男性用コンドーム 陰茎の勃起後,装着する 3 14 使用が容易感染症の予防として唯一の方法 適切に装着しないと効果が下がる性交の度に装着する必要有破れると妊娠する可能性有り
女性用コンドーム ポリウレタン性のパウチ(小袋)で膣の内側を覆う     女性が装着を決定できる男性の勃起と関係なく装着できるゴムアレルギーでも使える出産後や更年期でも膣の違和感が少ない 装着に慣れが必要
ペッサリー 医師の診察によりサイズを決定する            性交前6時間以内に膣内に装着する             挿入前に殺精子剤をペッサリーのくぼみに塗布する      性交後6時間は装着したままにしておく 6 20 安価で耐久性がある副作用が非常に少ない 経口避妊薬使用者と比べて尿路感染の割合が高い
24時間以上装着したとき膣粘膜を刺激する可能性がある
単独使用では妊娠する確率が比較的高い
殺精子剤 精子の細胞膜を損傷する物質をふくむ 6.0 26 安価で処方箋なしで購入できる簡単に使用可 射精の10?30分以内に使う必要有り 単独使用では妊娠率が高い
コンドームと併用すると失敗が少ない
IUD(リッピスループなど) 付加なし   3.0 出産後の避妊に適する わずかに挿入時の骨盤内感染のリスクがある
他のIUDに比べてやや妊娠率が高い
IUD(銅付加) 銅の付加により避妊効果が高い 0.8 <1.0 出産後の避妊に適する       避妊効果高い 最初数ヶ月の出血,月経痛増強の可能性がある      
経口避妊薬 エストロゲンとプロゲスチンの合剤 0.1 5.0 避妊効果高い           副効用として月経困難症や過多月経にも有効 エストロゲンにより母乳分泌量が減少し,母乳育児期間が短縮する傾向にあるため,授乳中は勧められない
WHOでは産後6週間以内で授乳中の女性には使用禁忌となっている
ミニピル プロゲスチン単独のピル 0.5 5.0 授乳中にも使われる場合がある   現在までの研究では児への長期的な影響はないとされている 乳汁に移行する        授乳への影響はほとんどないとされているが,母乳分泌の確立や赤ちゃんのステロイド代謝への影響を考慮して出産後6週間まで見合わせた方がよいとの報告もある
卵管結紮 入院,麻酔下で手術 0.5 0.5 避妊効果は100%ではないが,高い   通常出産後数日以内に行われる
入院,麻酔が必要なため,一時母子分離を余儀なくされる可能性がある
もし再び妊娠を希望するときは体外受精が必要になる
精管切除 局所麻酔により外来で手術可能    0.1 0.15 避妊効果は100%ではないが,高い  精液検査により手術の効果を確認できる     局所感染をおこす可能性有り
効果がでるまで3ヶ月以上かかりやすい          その後の失敗が稀にある その後の妊娠を希望するときは精巣内精子を使う方法をとることがある

参考文献

  • 金森あかね: 母乳育児と妊娠 助産婦雑誌 vol 56(6) p454-459,2002
  • Miriam H. Labbok,: Effects of Breastfeeding on the Mother. Pediatric Clinics of North America 48: 143-158, 2001
  • ピル博士のピルブック ジョン・ギルボー著,早乙女智子監訳,メデイカルトリビューン,2001
  • 綾部琢哉 経口避妊薬 産科と婦人科 VOL 68.Suppl p 243-249,2001
  • 改訂版だれでもできる母乳育児 ラ・レーチェ・リーグ・インターナショナル,メデイカ出版,2000
  • Breastfeeding and Human Lactation : Ruth A.Lawrence,Mosby ,1999
  • 避妊ガイドブック Leon Speroff, Philip D.Darney 我妻堯監訳,早乙女智子編訳 文光堂,1999
  • 母体保護統計報告1999年 厚生統計協会
  • The Breastfeeding Answer Book, revised edition: La Leche League International, 1997
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今、授乳中なのですが、私がインフルエンザに罹ってしまっても、 母乳をあげて大丈夫でしょうか?
また、内科でインフルエンザの薬が出た場合、母乳を飲ませ続けてもいいのでしょうか?
これからインフルエンザの予防接種を受けようかと思っていますが、授乳中でも受けられるでしょうか?

(2009/12/29改訂)

A.ご自分がインフルエンザにかかってしまった時の授乳や、インフルエンザの薬を飲んでいるときの授乳、また授乳中の予防接種についてどうしたらよいのか、不安に思っていらっしゃるのですね。どうすればよいか事前に知識を得ようとされている姿勢がすばらしいですね。では、順番に考えていきましょう。

(1) お母さんがインフルエンザに罹っても授乳をやめる必要はありません。

インフルエンザはインフルエンザウイルスが感染することによって起こります。感染経路は飛沫感染で、咳やくしゃみのときに空気中に飛び散った粒子の中のウイルスを吸い込むことによって感染が起こります。インフルエンザウイルスは気道粘膜で増殖するので、血液の中に大量のウイルスが出現することはなく、母乳中にたくさんのウイルスが出ることは考えられません。また搾った母乳を飲ませて、そこから赤ちゃんにインフルエンザが感染したという報告もないようです。
母乳を飲ませるときはお母さんが赤ちゃんと濃厚に接触することになりますが、これは人工乳を哺乳びんで飲ませるときも同じことです。
オムツを換えたり、何か赤ちゃんの世話をすれば、やはり感染の可能性はあります。またお母さんだけでなく家族のだれでもインフルエンザに感染していれば、赤ちゃんにうつる程度の接触はあると考えられます。授乳するときは次のことに気をつけましょう。手は石鹸を使ってしっかりと洗いましょう。赤ちゃんの顔に向かってせきやくしゃみなどをしないように気をつけ、ガーゼマ スクではない不織布性マスクを勧められている方法でつけて授乳しましょう。

(2) 赤ちゃんにうつっても,母乳を飲ませ続けるほうが軽くてすむと言われています。

母乳の中には多種類の感染防御因子(赤ちゃんを感染から守る細胞や物質)が含まれており、母乳を中断する ことによって、赤ちゃんはこれらの受動免疫(自分のではなく、他人からもらった免疫)を受けられなくなります。お母さんがインフルエンザの症状を出す前にすでにもう赤ちゃんは感染している可能性もあり、引き続き母乳を飲ませるほうが、隔離して母乳を中断するよりもむしろ安全と言われています。母乳中の免疫のおかげで、赤ちゃんが感染しても軽症ですむと言われています。

(3) 抗インフルエンザ薬が母乳に移行するとしても、ごくわずかです。

現在日本で使用されている抗インフルエンザ薬には、タミフル(一般名:オセルタミビル)とリレンザ(一般名:ザナミビル)があります。
そのうちリレンザは吸入薬で、体内に吸収される量は少なく、母乳中への移行はほとんどないと考えられますので、授乳中のお母さんに使用するのに適しているとされています。
また、タミフルも、内服した場合の血中の薬の濃度は低く、母乳中に移行したとしても、赤ちゃんへの影響はほとんどないとされています(注)。

(4) 母乳を中断することになった場合、お母さんはどうなるでしょうか?

お母さん自身が重症で、とても母乳を飲ませられない状況のときは、だれかに頼んで一時的に人工乳を飲ませたいと思うかもしれません。一時的に授乳を中断すると乳房が張って困るので、その場合は搾乳しなければならないかもしれません。高熱があってつらいのに搾乳するのはたいへんでしょう。乳腺炎になる可能性もあるかもしれません。
母乳はお母さんが寝たままでも添い乳で飲ませることができます。授乳が終わればそのまま眠ってしまうこともできます。
中断を選択したら、今まで母乳だけだった場合、哺乳びんや人工乳の缶を買いに行かなければなりません。手伝ってくれる人がいなければ、お母さんが自分で起き出して作らなければなりません。
ですから、たいていの場合、寝たまま授乳する方がずっと簡単に感じられるでしょう。お母さんが高熱を出している場合は、脱水にならないように、お母さん自身が水分を十分摂るようにしましょう。

(5) 授乳中でもインフルエンザの予防接種を受けることができます。

家庭の中にインフルエンザを持ち込む可能性のある、赤ちゃんのお父さんや上の子どもたちなどの家族皆で、インフルエンザの流行シーズンになる前に、予防接種を受けおくことが望ましいでしょう。授乳しているお母さんもインフルエンザの予防接種を受けることができます。
家族のだれが罹っても赤ちゃんにインフルエンザがうつる可能性があるのですから、皆で予防することが大切です。

(6) タミフルを使用しないという選択もあります。

抗インフルエンザ薬であるタミフルは2004年1月から1歳未満には投与禁止となりました。これは動物実験の結果、安全でない可能性があるという理由で、乳児に使用して有害な副作用が出たという報告はありません。また10~19 歳までの年齢には、異常行動が増加することが懸念されたため2007年3月から使用しないようになりました。
一方、もともとインフルエンザは健康な成人が罹患しても自然治癒する疾患です。タミフルの効果は有熱期間を約1日短縮させるだけと言われています。ですから授乳中の成人女性は、「抗インフルエンザ薬は内服せず、解熱剤などの一般的な薬剤だけを必要に応じて使用する」という選択もできます。

以上のようなことから、感染を心配して授乳を止める必要はないこと、母乳中の薬剤の影響も心配ないとされていること、母乳育児を続けることによって得られる水分・栄養・免疫その他のメリットを考え、お母さん自身の体調と相談して決めていけばよいと言えます。
そして、できれば、インフルエンザに罹りにくくするために、家族皆で予防接種を受けておくといいでしょう。

【参考文献】

  1. Laurence RA. Breastfeeding :A Guide for Medical Profession. 6th ed. St. Louis, Mosby, 2005
  2. American Academy of Pediatrics : Red Book: Report of the committee on infectious diseases, 28th
    ed. Elk Grove Village, 2009
  3. Hale T: Medications and Mothers'Milk, 13th ed. Texas. Pharmasoft Publishing, 2008
    日本語訳は水野克己ほか監訳:薬剤と母乳.13版

2009.12 一部改訂

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花粉症がひどく、毎年薬を飲んでいました。現在3か月の赤ちゃんに授乳中です。授乳中のため薬は飲まないで我慢したらよいのか、また薬を飲んだとしたら授乳はやめた方がよいのか迷っています。

2005/3/16作成、2010/2/10一部改訂)

A.毎年、花粉症でつらい思いをされていらっしゃるのですね。今年は赤ちゃんに授乳中なので、いつもの年のように薬を飲んでよいものか、また飲んだとして、母乳の中の薬が赤ちゃんに影響を及ぼすのではないかと心配されているのですね。ご自分の花粉症の症状が毎年ひどいにもかかわらず、薬が赤ちゃんに与える影響を心配されていて、赤ちゃんを大切に思っていらっしゃることがよく伝わってきます。
 
 現在、花粉症の症状を抑える薬としてたくさんの種類が使われています。これまでの薬の使用経験や実際に母乳育児中のお母さんに使用した場合の報告などから、花粉症の治療として使われる薬と授乳について考えてみましょう。 一般的に、局所に作用する薬(吸入薬・点鼻薬・点眼薬など)は、内服薬に比較して体内に吸収される量も少なく、母乳中への移行も極微量で問題にならないことが多いと考えられています(参考文献 2、4)。 したがって、まずそういう薬剤の使用が可能かどうか、かかりつけの医師に相談してみるといいでしょう。

 広く内服薬として使われているものには、抗ヒスタミン作用と抗アレルギー作用を持つ第2世代の抗ヒスタミン剤と呼ばれる薬があります。 ロラタジン(L1. 商品名クラリチン,)やセチリジン(L2.商品名ジルテック、セチリジン塩酸塩)は第2世代の抗ヒスタミン剤と呼ばれていますが、眠気などの鎮静作用が少なく、母乳中に移行する薬の量が少ないために、お母さんがこれらの薬を飲んだとしても授乳を継続することにはまず問題がないと考えられています(参考文献 1,2)。フェキソフェナジン(L2. 商品名アレグラ)とアゼラスチン(L3. 商品名は下記参照*)は、ヒスタミンT受容体拮抗作用を持つ第2世代抗ヒスタミン剤と呼ばれていますが、これも母乳中に移行する量が少ないために授乳への影響は少ないと考えられています(参考文献 1,2)。 これらの薬は内服薬としても用いられますが、点眼薬・点鼻薬・吸入薬として用いられることもあります。内服に比べてほとんど血中濃度が上昇しないので、より安全と言えるでしょう。

 *アゼラスチン(商品名アゼプチン、アゼピット、アドメッセン、ビフェルチン、アゼン、アストプチン、塩酸
アゼラスチ、ラスプジン)

 その他のアレルギーを抑える薬としては、クロモグリク酸ナトリウム(L1、商品名インタール等)が広く使われています。この薬は消化管からほとんど吸収されないので、花粉症の治療薬としては点眼・点鼻・吸入で用います。母乳中への移行はほとんどなく、あっても赤ちゃんの消化管から吸収されることがないので、お母さんがこの薬を使用したとしても授乳を継続することにはまず問題がないと考えられています。
 同様に、レボカバスチン(L2.、商品名リボスチン等,)も点鼻薬や点眼薬として用いられています。この薬も点鼻や点眼ではお母さんの血中にはほとんど見られることがないために授乳中の使用にまず問題はないと考えられています(参考文献 1)
 
 また、花粉症の症状が強い場合には、ステロイドの点眼薬・点鼻薬・吸入薬が用いられることもあります。よほどの場合でない限り内服はまれでしょうが、ステロイドは授乳禁忌の薬とは考えられていません(参考文献1-3)。特に、局所に作用する薬(吸入薬・点鼻薬・点眼薬など)を用いる場合には授乳への影響がより少なくてすむでしょう(前述)。 ベクロメサゾン(L2. 商品名アルデシンAQネーザル等)、フルニソリド(L3. 商品名シナクリン) 、フルチカゾン(L3商品名フルナーゼ等)などのステロイド点鼻薬が使われていますが、どれも体内に吸収される薬の量は少なく、授乳への影響は少ないと考えられています(参考文献 1)。 点眼薬としては、プレドニゾン(L2)やヒドロコルチゾン(L2.)などが用いられますが、これらも同様に授乳への影響は少ないと考えられています(参考文献 1)

 以上のようなことを参考に主治医と相談されてはいかがでしょうか。このQ&Aの最後に参考となる文献を載せています。その他にも母乳育児と薬剤について参考になる文献やインターネットのサイトについての情報をJALCのHP上に掲載しておりますのでぜひご覧になって下さい。

 母乳育児学習のためのリソース、母乳育児と薬剤: http://www.jalc-net.jp/resource.html

 このような情報を医師に知らせて情報を共有することもできるでしょう。そして、医師に授乳を中断したくないという自分の気持ちを伝え、赤ちゃんに影響の少ないものを処方してもらうといいでしょう。医師に自分の気持ちを伝えることは、お母さんにとっては時として大変勇気がいることかもしれません。以下に、医師に授乳を継続しながら治療を受けたいという気持ちを話す場合の例を示します。

<医師と薬についての相談をするときの例>

お母さん 「花粉症の症状がひどいので、お薬を出してもらいたいのですが。でも、今3か月になる子どもに授乳中なのです。」
医 師 「そうですか。ではお薬を出しましょう。お薬を飲んでいる間は念のため授乳を中止しておきましょうね。」
お母さん 「子どもはおっぱいが大好きで母乳しか飲んだことがありませんし、私もできるだけたくさん母乳をあげたいと思っているので、授乳しながらでも使用できるお薬を出してもらえないでしょうか。」
医 師 「そうですか。でも、ほとんどの薬の注意書きには授乳中はだめ、と書いてありますがねえ。」
お母さん 「これは母乳育児を支援する専門家が書いた花粉症の薬と授乳に関する情報です(このQ&Aを見せる)。ここに書いてあるようなお薬でしたら授乳中でも使用できるようなのですが、どうでしょうか。」

 このような感じで、医師との会話をはじめてみてはいかがでしょうか。もし今診察を受けている医師から理
解が得られない場合は、別の医師に意見を求める「セカンドオピニオン」を得てみましょう。赤ちゃんと薬の
影響に関しては小児科医の方が詳しい場合がありますから、赤ちゃんがかかっている小児科医に相談して
みてもよいかもしれません。 花粉症の季節も、これまでと同じように母乳育児を楽しめるといいですね。 

注1) お薬には一般名と商品名があります。内服薬は商品名すべて、それ以外は代表的なもののみを示してあります。一般名はお母さんには聞きなじみがないかもしれませんが、医師や薬剤師に相談すればわかるでしょう。
注2) TW Haleという母乳育児と薬剤についての専門家は、授乳に際しての薬のリスクを以下のように5段階に分類しています。上記にあげた薬にはそれぞれのリスクの程度を付け加えています。こうした情報を医師に相談するときに提示してもよいでしょう。

<授乳におけるリスク分類(参考文献 1, 7)>

L1: 最も安全: 乳児への有害な影響が観察されないで、多くの母親が使用している薬物。授乳婦への投与についてのコントロール・スタディにおいても、児へのリスクが示されることなく、さらに、授乳中の児へ害を及ぼす可能性がほとんどないもの。もしくは、児が経口的に摂取しても、吸収されないもの。
L2: より安全 :限定された授乳婦における研究において、児に対する有害な影響の増加は示されていない薬物。さらにもしくはあるいは、授乳婦がこの薬物を使用したとしても、そのリスクが示されることがほとんど考えられないもの。
L3: 中等度の安全 :授乳されている児に対して、不都合な影響を与える可能性があるが、授乳婦においての、コントロール・スタディのないもの。もしくは、コントロール・スタディにおいて、極軽微で命を脅かすことのない程度の影響が示されているもの。このような薬は、児に対する潜在的な有益性が潜在的なリスクを正当化するような場合においてのみ、投与されるべきである。
L4: 悪影響を与える可能性あり :母乳育児中の乳児もしくは母乳の産生にリスクがあるという、明らかなエビデンスがあるものではあるが、授乳中の母親がこの薬物を使用することによって得られる有益性は、児に対するリスクにもかかわらず、許容される範囲内である様な薬物。(たとえば、命を脅かすような状況に必要な薬物や、より安全な薬が使えなかったり、他の薬剤では効果がなかったりするような重篤な疾患の時など。)
L5: 禁忌:授乳婦における研究により、ヒトにおいて重大で証明されたリスクがあることがすでに明らかにされているもの。すなわち、乳児に重大な障害を引き起こすリスクが高い薬物。授乳婦がこのような薬物を使うリスクは、母乳育児のどのような有益性も明らかに上まわっている。母乳育児をしている母親においては、禁忌となる薬物。

参考文献

  1. Hale TW, Medications and Mothers'Milk, 13th ed, Hale publishing, 2008
    日本語訳は水野克己ほか監訳:薬剤と母乳.13版. Hale publishing, 2009
  2. Hale TW and Ilett KF, Drug Therapy and Breastfeeding: From Theory to Clinical Practice, 2002
  3. American Academy of Pediatrics Committee on Drugs, The Transfer of Drugs and Other Chemicals into Human Milk, Pediatrics, 108(3): 776-789, 2001
    ( http://aappolicy.aappublications.org/cgi/content/full/pediatrics%3b108/3/776 ):アメリカ小児科学会が薬が母乳に与える影響について示したガイドライン。様々な薬と授乳への影響が示してある。
  4. La Leche League International, The Breastfeeding Answer Book, 3rd ed, 2003
  5. 岡藤みはる、山内芳忠. 母乳とくすり-母親の使用薬剤と母乳栄養. 小児内科, 36(5): 747-752, 2004
  6. 瀬尾智子. 母乳と薬剤, 第14回母乳育児学習会資料: 22-36, 2003
  7. 涌谷桐子. 分娩・産褥期に異常がある場合の母乳育児とその援助ー身体的異常を中心に, 第14回
    母乳育児学習会資料: 37-57, 2003
  8. Breastfeeding and maternal medication: Recommendations for drugs in the eleventh WHO model list of essential drugs (2003)
    (http://www.who.int/child-adlescent-health/publications/NUTRITION/BF_MM.htm )
    WHOが様々な疾患に使用する様々な薬について、授乳の適・不適を示したガイドライン。
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私は「はしか」にかかった覚えがありません。
授乳中なのですが、予防接種を受けていいものでしょうか?

(2010/01/07追加)

A.周囲で感染症が流行しているのを見聞きして、赤ちゃんがかかってしまうのではないかと心配されるお母さんもいらっしゃることでしょう。とくに、お母さんにかかった記憶もなく、予防接種を受けたかどうかも不明のときには、「自分がかかったら困るし、さらにそれが赤ちゃんにうつると心配だわ。予防接種を受けたほうがいいと聞いたけど、授乳を続けても大丈夫なのかしら」と悩んでしまうかもしれませんね。
では、順番に考えていきましょう。
 
(1) 原則

 現在行なわれている予防接種の中で、授乳中のお母さんが接種したときに授乳を避けなければならないものはないとされています(Red Book 2006 pp124)。
お母さんの血液を調べれば、その病気に対する免疫があるかどうかを確認することができますし、感染を防ぐだけの十分な免疫がないときは、予防接種を受けることで、お母さん自身への感染を防ぐことができます(麻疹や水痘に対する免疫があるかどうかは、たいていの医療機関で受けることができます)。しかし、免疫があるかどうかを確認せずに予防接種をしても、とくに問題はありません。
 生ワクチン《病原性の低い生きたウィルスを接種することで、免疫を作る予防接種です。例:麻疹(はしか)、 風疹(三日ばしか)、水痘(みずぼうそう)、ムンプス(おたふくかぜ)》の予防接種を受ける時は妊娠していないかどうかを確認し、受けたあとは2ヵ月間避妊するようにしましょう。受けた後で妊娠していたことがわかっても、赤ちゃんへの悪影響は報告されていませんが、妊娠していることがわかっているときに予防接種を受けるのであれば、できるだけ妊娠後期にするほうが好ましいといわれています(Red Book 2006 pp69)。

(2) はしか(麻疹)・みずぼうそう(水痘)・風疹

 赤ちゃんが麻疹にかかると重症になります。予防接種を受けたことがあっても、接種後10年程度で免疫が低下することがあるといわれていますので、お母さんを含めご家族で麻疹にかかった事のない方がおられるときには、まわりが予防接種を受けることで赤ちゃんを感染から守ることができます。小児科関連の学会は、お子さんには1歳になったらすぐに麻疹・風疹混合ワクチン(MRワクチン)を受けるように推奨しています。

 水痘は分娩前後にお母さんや赤ちゃんがかかると非常に重症となります。妊娠可能年齢になったら、自分が水痘に対して免疫があるのかどうか、確認するといいでしょう。
 また、妊娠中の検査で風疹に対する免疫がないことがわかった場合には、出産後、産科入院中に風疹の予防接種を受けることが勧められています(平成16年厚生労働省研究班「風疹流行および先天性風疹症候群の発生抑制に関する緊急提言」より)。

(3) 百日咳、インフルエンザ

 成人の百日咳の流行もニュースで流れています。百日咳に対する免疫が十分でない場合、百日咳が含まれている3種混合ワクチンを接種するといいかもしれません。百日咳は新生児がかかると非常に重症になり、 死亡することもあります。3種混合ワクチンは生ワクチンではないので、授乳中だけでなく妊娠中も接種可能です((Red Book 2006 pp503)。
 インフルエンザの予防接種は、授乳中はもちろん妊娠中も可能です。アメリカ小児科学会は、妊娠中のどの時期であれ、秋にインフルエンザの予防接種をうけるよう勧めています(Red Book2006 pp408)。
 お母さん自身の予防接種をどうしたらよいか迷う場合には、小児科医に相談してみるのもよい
でしょう。

【参考文献】
Committee on Infectious Disease, American Academy of Pediatrics. Red Book、Report of the
Committee on Infectious Disease, 26th ed. Elk Grove Village,Ill, American Academy of Pediatrics. 2006

2006.6.20 作成、2009.12.29 一部改訂

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仕事と保育園−母乳育児の継続について
職場復帰するので、子どもを保育園に預かってもらうことになりました。母乳育児は続けられるのでしょうか?
(2010/02/16追加,2011/03/28再追加)

A.職場復帰に際して、母乳を続けられるか、続けるにはどうしたらよいのかとご心配なのですね。前向きに情報を集めようとされていて、 素晴らしいです。
子どもを預けるにあたって、多くのお母さんは様々な心配を抱くようです。
保育園で子どもをみてもらっている間、母乳はどうやって与えるの? 仕事中、私の乳房はどうなるのだろう? 子どもは母乳なしで大丈夫?ご心配の内容も 人それぞれ様々ですが、以下によくあるご質問に対するお返事をまとめてみました。参考にしていただければ幸いです。

1、仕事を始めても、母乳育児を続けると様々なメリットがあるといわれています。まず、あなたがなぜ母乳育児を続けていきたいのか、母乳育児の良い点について、 など幾つかの理由をあげて伝えてみましょう。

1)お子さんにとっては?

   保育施設にいる子どものうち母乳を飲んでいる子どもの方が風邪や中耳炎などの感染症にかかりにくく、かかっても重症化しにくく、早くよくなると報告されています。 (文献1)
 喘息やアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患の予防のためには、日本においても世界においても、母乳で育てることが推奨されています。(文献2)
また、ウイルス性呼吸疾患は喘息の増悪因子ですので、母乳の免疫力により感染が減れば、喘息発作の発症頻度も少なくなるでしょう。
 母乳育児を長期に継続することにより、小児がんの罹患率の低下、認知能力の向上、成長してからの生活習慣病、膠原病などのリスクが低下することが知られています。 (文献3)
 母乳で育てられた子どもはより健康に育つということですね。

2)あなたにとっては?

 母乳育児期間が長いほど乳がん、卵巣がん、骨粗鬆症、糖尿病などの病気にかかりにくい傾向がありますし、妊娠中に蓄えた余分な体重が落ちやすく、肥満を防ぎます。 (文献4、5)

3)あなたとお子さんの関係は?

 仕事で離れていても、お子さんと再会して授乳をすると、子どもとの結びつきを強く感じ、精神的なきずなが持続します。(文献6、7)

4)あなたの仕事への利点もあります!

 お子さんの病気が理由での欠勤が減少し、ひいては勤務調整のための手配などの問題が減ります、そして仕事の能率があがります。(文献8)
 あなたのワーク・ライフ・バランスがとりやすくなる。ということにもなりますね。

5)職場が母乳育児を支援すると雇用主にとっても利点があります。

 育児支援の充実は、離職率が低下しコスト削減ができます。雇用主の社会的信頼がアップし、従業員やその家族の健康上の問題が減少することから、 健康保険の支出が減少します。(文献8)

2、次に、母乳育児を続けるための具体的な方法を探してみましょう。
 働きながら子育てをする両親を支援する法律的保障があります。法律の記載をもとに職場や保育施設と話すことは、あなたの役に立つかもしれません。
 さて、どんな法律があるでしょう。

1)あなたが仕事中に搾乳をする時、育児時間を搾乳の時間に利用できます。

労働基準法67条:育児時間の保障

  • 生後1年未満の子どもを育てる女性は1日2回、少なくとも30分ずつ育児時間を請求することができる。時間短縮の形で1時間にしてまとめてとることもできる。(文献9)

2)あなたやパートナーが育児休業を取り、短時間の勤務を請求することで、長期にわたる母乳育児がしやすくなるかもしれません。

育児介護休業法(2009年7月改正)

  • 父母がともに育児休業を取得する場合、1才2ヵ月までの間に1年間育児休業を取得可能とする(パパ・ママ育休プラス)
  • 3才までの子を養育する労働者について、短時間勤務制度(1日6時間)をもうけることを事業主の義務とし、労働者から請求があったときの所定外労働の免除を制度化する。(文献10)

3)あなたの職場の、育児支援の環境を確認することができます。そしてその環境を利用するためには下記の法案が参考になります。

次世代支援育成対策推進法

  • 従業員101人以上の企業は、仕事と家庭を両立するための雇用環境の整備についての行動計画の公表、従業員への周知が義務化(平成20年11月改正)(文献11)

4)保育施設に冷凍母乳の受け入れのお願いをするためには以下があります。

保育所保育指針(児童福祉法)

  • 乳幼児期の食事は生涯の健康にも関係し(中略)一人一人の子どもの状態に応じて摂取法や摂取量などが考慮される必要がある。
  • 母乳育児を希望する保護者のために、冷凍母乳による栄養法などの配慮をおこなう。冷凍母乳による授乳を行うときには、十分に清潔で衛生的な処置が必要である。  (文献12)

保育所食育に関する指針(食育推進基本法)

  • 冷凍母乳の受け入れ体制も整え、母乳育児の継続を支援できるように配慮する。 (文献13)

母乳の保存方法と期間については 資料1:母乳にやさしい保育園 を参照ください。

3、搾乳について知っておきましょう。具体的な方法は Q&A:搾乳 をご覧ください。
 搾乳は、保育施設へ搾母乳を届けるためだけが目的でなく、定期的に搾乳をすることで、母乳分泌を維持させることもできます。
 仕事を始める2週間位前から搾乳の練習をし、搾乳した母乳をストックしておくと安心です。
 職場で搾乳をすると、おっぱいの張り過ぎを防いで、母乳の分泌を保つことができます。プライバシーの保たれる場所で搾乳できるように、職場と話し合っておきましょう。

搾乳の回数の目安です。(文献14)
子どもと離れる時間が
・ 4時間未満:搾乳は不要
・ 4〜6時間:最低1回搾乳(最後に授乳した2〜3時間後)
・ 8時間以上:3時間ごとの搾乳

搾乳時間が取りにくい場合は?
 出勤直前と帰宅直後の直接授乳にプラスして昼休みや他の時間に1回搾乳、午前中と午後に乳房の緊満を取るために約5分搾乳、昼休みに10-20分かけて搾乳し保存という方法 もあります(文献15)。ただ、働き始めてしばらくすると、お子さんと一緒にいる時はたくさん母乳が出て、仕事中はそんなに乳房は張らなくなってきますので、 その都度搾乳をしなくても分泌が維持されるようになります。

4、哺乳びんをいやがる場合の、対処法があります。(文献14)

  • 保育者や保育場所に慣れ信頼関係を作ることが大切です。安心すると飲めることが多いです。
  • 慣らし保育で2〜3時間預け、送迎時に直接授乳するといった段階を踏むとよいでしょう。
  • 子どもの空腹のタイミングをみます。
  • お母さん以外の方が哺乳びんを使います。
  • 哺乳びん以外の方法 (コップ、スプーン、スポイトなど)があります。

5、働き始めてから授乳のペースが変わることがあります。

  • 夜間、母乳を飲みたがる場合は昼間母親と離れているとき、子どもの睡眠パターンが変わることがあります(文献15)。 楽にできる添い寝、添え乳の方法を工夫して みましょう。
  • 忙しい帰宅時と朝に何度も飲みたがる場合はお母さんが家事よりもお子さんのニーズを優先できるように、家庭内での家事の分担を再調整しましょう。予定より20分早く 起床してまず授乳 。朝の支度をして出かける前にまた授乳。保育園でお迎え時にその場で授乳。(文献6)

 「ラ・レーチェ・リーグ日本」から「働くお母さんの母乳育児」「母乳の搾り方 手を使って」の冊子が出版されています。 こちらから

 保育施設への要望の手紙と、職場への母乳育児継続支援依頼の手紙を作成しました。利用してみてはいかがでしょう。

 下記の資料がダウンロードできます。
  資料1:母乳に優しい保育園
  資料2:保育園への手紙.
  資料3:雇用主への意見書

  仕事を始めた後も、楽しく母乳育児が続けられるといいですね。

参考文献・資料

  1. Dubois L,Girard M, Breast-feeding, day-care attendance and the frequency of antibiotic treatments from 1.5 to 5 years :a population- based longitudinal study in Canada. Soc Sci Med.2005;60(9):p2035-44.
  2. 日本アレルギー学会. アレルギー疾患診断治療ガイドライン2010、協和企画、2010、p35-39
  3. American Academy of Pediatrics, Section on Breastfeeding、Breastfeeding and the use of human milk. Pediatrics. 2005;115(2):496-506.
    日本語訳は「母乳と母乳育児に関する方針宣言」2005年改訂版. アメリカ小児科学会、母乳育児部会.
    http://jalc-net.jp/dl/AAP2009-2.pdf (2011年2月20日検索)
  4. 所恭子:母親にとっての母乳育児の利点.母乳育児支援スタンタート, NPO 法人日本ラクテーション・コンサルタント協会編、2007.p81-88
  5. BFHI2009翻訳委員会. UNICEF/WHO母乳育児支援ガイド ベーシック・コース.医学書院、2009、p302-305
  6. ラ・レーチェ・リーク・インターナショナル. 働くお母さんの母乳育児(実用的なヒント)、ラ・レーチェ・リーク日本,2006.  http://www.llljapan.org/ (2011 年2月20日検索)
  7. Neifert M. Dr. Mom's Guide to Breastfeeding. New York:Penguin Putnam.1998
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  9. 労働基準法
    http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S22/S22HO049.html (2011年2月20日検索)
  10. 育児・介護休業法の改正について
    http://www.mhlw.go.jp/topics/2009/07/tp0701-1.html (2011 年2月20日検索)
  11. 次世代支援育成対策推進法
    http://www.mhlw.go.jp/general/seido/koyou/jisedai/kaisei/jisedaihou.html (2011 年2月20日検索)
  12. 児童福祉法,保育所保育指針, 第12章健康安全に関する留意事項, 日常の保育における保健活動,授乳,食事, 2004
    http://ba.boo.jp/hoikushishin/hoikuen/vol_12.html(2011年2月20日検索)
  13. 食育レポート
    「楽しくおいしく食べる子どもに〜保育所における食育に関する指針〜」報告書について
    http://www.wam.go.jp/wamappl/bb16GS70.nsf/
    vAdmPBigcategory60/49256FE9001ADF9249256E6A002B2318?OpenDocument

    (2011年2月20日検索)
  14. Mohrbacher N and Stock J, The Breastfeeding Answer Book, 3rd ed. Illinois, La Leche League International, 2003, p237-256
  15. Wambach K and Rojjanasrirat W, Maternal employment and breast-feeding. In Riordan J, 3rd ed. Breastfeeding and Human Lactation. Boston. Jones and Bartlett Publishers, 2005, p487-508

2011/2/27作成

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