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非営利活動法人 日本ラクテーション・コンサルタント協会の公式ホームページです。母乳育児支援にかかわる専門家のための非営利団体です。

母乳育児Q&AQ AND A

4.上手な抱き方と飲ませ方について

どうしたらもっとスムースに授乳ができるのでしょうか。
(出産して二週間たちましたが、なんだかまだ授乳がうまくできないような気がしています。いつも授乳を始める時は、赤ちゃんが上手に飲めるようになるまでに時間がかかってまごついたり、長い時間かかってやっと授乳が終わっても、肩や背中が痛くなったりしてとても疲れてしまいます。どうしたらもっとスムースに授乳ができるのでしょうか。)
あなたはまだ自分で授乳がうまくできないような気がして、そのせいで疲れていると感じておられるのですね。赤ちゃんに授乳するということは簡単なように見えても実は結構難しいことも多いのです。出産後すぐから、誰でもスムースに授乳ができるというわけではありません。お母さんがちょっとした授乳のコツをつかむことも必要ですし、赤ちゃんも初めからみんな上手にお乳が飲めるというわけでもありません。つまり、お母さんも赤ちゃんも練習して、慣れながら、少しずつ上手になっていくことができるのです。まず、あなたが飲ませていらっしゃる様子を、ひとつずつチェックしてゆきましょう。

1) 楽な姿勢で授乳をしていますか?

 生後一ヵ月までの頃は、一日のうちに特に頻回に授乳をする赤ちゃんも多いので、毎回の授乳が楽な姿勢でおこなわれないと、その無理な姿勢が体を疲れさせる原因になります。
 授乳をする際は、家の中であなたが安楽だと感じる場所を見つけて、楽な姿勢で座ることから、授乳を始めるようにしましょう。 枕やクッションなどを利用して、自分の背中や腰にはさんで安楽な姿勢を見つけたり、肘や腕の下に置いて支えにしたりするともっと楽に授乳ができるでしょう。
 また、赤ちゃんに乳房を含ませるときに丁度よい高さになるように、あなたの膝と赤ちゃんの体の間にも枕などを入れて、高さの調節をすることもとても大切です。 赤ちゃんを自分の腕で抱いて、持ち上げるようにして授乳するのではなく、自分の膝の上に枕などを置いて高さを調整したところに赤ちゃんを置いて、あなたの乳頭の高さに赤ちゃんの口がくるようにして授乳を試みてみましょう。これだけでも授乳がずいぶん楽に感じるようになるでしょう。

2) 授乳のとき、あなたと赤ちゃんとの体が密着しているようにしっかり抱いていますか?

 授乳の際、あなたの体(お腹の部分)と赤ちゃんの体(胸の部分)がピッタリと密着したようにしっかりと抱いていることが大切です。この時にあなたの体と赤ちゃんの体にすき間がないように抱くと、赤ちゃんのほうも、あなたが安定した抱き方をしているので安心して母乳が飲めるでしょう。あなたの体と赤ちゃんの体が密着することによって、乳頭がより深く赤ちゃんの口に入りやすくなります。実はこの「乳頭を深く口に入れる」ということが、授乳の際にとても重要なポイントになるのです。

3) 赤ちゃんの顔が真直ぐに乳頭に向かっていますか?

 乳頭の向いている方向から赤ちゃんの口をもってくると、正しい方向で乳頭を含むことができます。また、赤ちゃんを抱いたとき、赤ちゃんの頭、首、体、(または耳、肩、腰)がまっすぐな線になっているかどうか、よく観察してみて
ください。
 赤ちゃんの体は天井を向き、顔だけがねじれてお乳に向いているという状態をよく見かけます。この状態では、赤ちゃんは上手に母乳を飲むことができません。このように真直ぐ赤ちゃんを抱くことで、お母さんの体と赤ちゃんの体が
ぴったりとフィットして赤ちゃんは集中して母乳を飲むことができるようになるでしょう。 赤ちゃんが無理なく抱かれ、乳房をうまく吸っている時は穏やかで落ち着いているように見えることが多いのです。

4) 乳房を支える時は手を乳輪から広く離したところで支えていますか?

  親指を乳輪(乳頭の外側の着色している部分)より上部にあて、ほかの四本の指は乳房の下部にあてます。この時、親指と人さし指はローマ字の『C』の形になるようにしましょう。

5) 赤ちゃんが「あーん」と大きな口を開けたときに、乳頭を十分に深くまで赤ちゃんの口に入れていますか?

 赤ちゃんに口を大きく開けてもらうために、乳頭の先で赤ちゃんの下唇をちょん、ちょんと刺激してみます。この時に、お母さんが赤ちゃんにお手本を見せてあげるように一緒に『あーん』と口を開けて見せてあげると、赤ちゃんも大きな
口を開けてくれることもあります。先程もふれましたが、赤ちゃんが乳頭を深く口に入れて母乳を飲むことはとても重要なことです。
 乳頭から乳輪まで十分に深く口に入れることで、効果的に母乳を飲むことができます。乳頭のみを吸わないように乳房を深くくわえさせると、乳頭が痛くなったり 傷ついたりすることを防ぎます。授乳の時間が極端に長くかかるときなど
は、深く乳房を含ませることによって、より効果的に飲めるかもしれません。乳頭が痛かったり、長く飲むわりに赤ちゃんの体重があまり増えなかったり、あるいは、おむつがあまり濡れなかったりするときなどは、もう一度深く乳房を含ま
せているかどうか確認してみましょう。またその時には、赤ちゃんの上下の唇が外側に開いたようになっているか見てください。ちょうど、おもちゃのラッパのような形に開いていれば赤ちゃんの口が適切に開いているといえます。

6) ここまでやってみて、うまくお乳を赤ちゃんの口にいれることができたら、一度深呼吸をして、肩の力を抜いて リ・ラ・ッ・ク・ス してみてください。

いかがですか? 赤ちゃんに吸われることでいい気持になりませんか。

7) 次は授乳の時間などについてです。

 赤ちゃんが欲しがるときに、欲しがるだけ母乳をあげていますか。あなたは決めた時間に授乳をしようと思っていたり、一定の時間を授乳の時間、と決めて飲ませようとしたりしてはいませんか?
母乳育ちの赤ちゃんは個人差が大きく、一気に早く飲み終えてしまう赤ちゃんもいれば、ゆっくり時間をかけて授乳をする子もいます。一日の中で1ー2回、3ー4時間ほど授乳の間隔が空くような赤ちゃんもいれば、1ー2時間とあけずに欲しがる子もいます。大切なことは、赤ちゃんが十分満足するまで、しっかりと母乳を飲ませてあげることです。赤ちゃんが小さいうちは、すぐにうとうとと眠りがちになる子も多いのですが、そんなときは、時々起こしながら母乳を飲ませてあげるとよいでしょう。
 片方の乳房から十分に飲ませてあげて、赤ちゃんが少しお休みしたような時に、一度離してもう片方の乳房に移ります。あなたの赤ちゃんが片方の乳房だけでいつも満足して眠ってしまうようなら、途中で起こして、もう片方の乳房に移るようにしてなるべく両方の乳房から飲ませるようにするとよいでしょう。

8)「添い寝」ができれば試してみましょう。

 添い寝ができるようになると、お母さんはとても楽に授乳ができるようになるでしょう。ただし、この時も、赤ちゃんには正しく乳房を吸ってもらう必要があります。添い寝で授乳するときも、枕やクッションなどを使ってお母さんが楽な姿勢で寝ながら飲ませられるように工夫してみましょう。

9) 他にも次のような抱き方があります。

「フットボール抱き」

 これは赤ちゃんの足をお母さんの脇の下を通して背中の方にくるようにし、赤ちゃんの頭を手で支える方法です。フットボールを抱えているような状態を想像してください。枕などを使って赤ちゃんの頭が乳頭の高さまでくるように調節します。
この抱き方だと赤ちゃんの口を観察しながら赤ちゃんの姿勢をコントロールすることができ、吸い付きがあまり上手でない場合に役立ちます。

さあ、これらの抱き方、飲ませ方を参考になさってもう一度ゆっくり落ち着いて授乳してみてください。楽なように…といろいろ工夫しながら授乳していくうちに、少しずつ慣れていき、だんだんスムースに授乳ができようになるでしょう。
そしてあなたも、もうすぐ母乳育児がもっと楽しめるようになることでしょう。

「抱きかた、飲ませ方」についてもっと詳しくお知りになりたい場合は以下の図書を参考にしてください。

【参照文献】
  1. 改訂版 だれでもできる母乳育児:ラ・レーチェ・リーグ・インターナチョナル /メディカ出版、2000
  2. おっぱいでらくらく、すくすく育児 :金森あかね(監修)北野寿美代(著)/ メディカ出版、2002
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